二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 心霊探偵 八雲 【冬の温泉旅行記】  ( No.194 )
日時: 2011/06/05 13:51
名前: 凪 (ID: 8ru7RWNK)

 第一章 悲劇

  八

真っ白な霧が、辺りを包みこむ。

そんななか、一台の車が山を下っていた。

——まったく、タイヤを冬用に変えたとはいえ、運転しにくい。

敦子と奈緒を連れて旅館に向かう時も、山はこんな調子だった。

白い霧が辺りを包みこみ、その先がなかなか見えない。一歩間違えたら

崖から落ちてあの世行きだ。なかなかスムーズに行けないのがイライラ

する。

「後藤さん、もうちょっと早く運転出来ないんですか」

そら来た。この減らず口野郎。後藤は運転しながら助手席に座っている

八雲を横目で見た。

眠たそうに外を見てやがる。

「じゃあ、お前が運転しろ!」

後藤は苛立ちながらも必死にハンドルを握って前へ車を進めようとす

る。

「嫌です」

薄々、予想はしていたが、予想していた通りの答えが返ってくるとます

ますイライラする。

後藤は苛立ちを抱えながら抑えようと心をしずめた。

「これは後藤さんの車なんですから、後藤さんが運転してください」

よく言う。自分の携帯を使わないで俺の携帯を使うくせに。そして都合

が悪くなると携帯を投げ捨て、真っ二つにする。それで何回携帯を買い

直したんだか。

——まぁ、どうせ言い返しても無駄か。言ったら言ったで「それと

これは違います」なんて言うのだろう。

後藤は苦笑いをした。

「何笑っているんですか気持ち悪い」

すかさず八雲の軽蔑するような目が後藤に向けられる。

あぁ、もう。八雲の野郎。

「うるせぇ!!」

後藤は怒りと勢いでブレーキを踏む。その瞬間、車内が大きく揺れ、

八雲はとっさの判断で腕を伸ばし手すりに掴まっていた。だが急だった

のかむせている。後藤本人も驚いていた。

ここでブレーキを踏んでよかったのだ。車の先は崖。もし、踏んでいな

かったら。そう思うとゾクゾクする。

——無事だった。

「あぶないじゃないですか!」

安心したところで、後部座席の方から声がした。

後藤は、はっと唾を飲む。

——そうだ。晴香ちゃんも乗せていたんだ。

後藤は、あせって後部座席の方を見た。そこには座席からすべり落ちて

いる晴香の姿があった。

「ご、ごめん…」

——前にもこんなことがあったような。

後藤は一瞬そう思ったが、気のせいにしておいた。

「君の準備が悪いんだ。前にもこんなことがあっただろ」

いつ復活したのか。八雲が外を見ながら言う。

——あったんだな。

後藤は苦笑いをした。でも八雲…その言葉は俺をかばっているのか

晴香ちゃんのかばっているのか、どっちなんだ。——なんて聞けるはず

がない。

「何で、そうなるのよ」

晴香は不機嫌そうに頬をぷくぅと膨らまし、ぶつぶつと言いながら座席

に座りなおした。

——今日もこんな感じでやっていくのか?

そう思うと肩にどっしりと重りを置かれたような気がしてならなかっ

た。

「後藤さん、早く車を出して下さい」

八雲が腕組みをしながら目をつぶって言う。

「お前…」

後藤は八雲をギロリと睨んだ。しかし八雲は微動だにしない。

——いつか徹底的に潰してやる!


      続



*あとがき*

今回は二回続けて更新いたしました。
やっぱおもしろいですね〜八雲と後藤のコンビは(睨 by八雲&後藤
次回もこんな感じでよろしくね…後藤さん♪(嫌だ by後藤