二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 心霊探偵 八雲 【冬の温泉旅行記】  ( No.206 )
日時: 2011/06/11 17:16
名前: 凪 (ID: ObYAgmLo)

 第一章 悲劇

  九


後藤達を乗せた車は、無事、山を下って山のふもとまで来ていた。

積もった雪が左右の道路の脇に寄せてあった。

先には交差点があり、信号がある。青だった信号は黄に変わり、赤に

変わった。

後藤は安心したのか、ふぅ、とため息をついた。あの山を下るだけで

寿命が縮むような気がする。後藤は窓の外をちらっと見た。

反対車線の歩道の方に小さなバス停があった。あのバスも山を下ったり

するのだろうか。

あと三十分程度で長野の警視庁に着く。信号が青に変わり、後藤は車を

右折させた。旅館のスタッフに聞いたのだから、間違いないだろう。

「あぁ、そうだ——八雲?」

「八雲君なら寝ていますよ」

「は?」

後藤の呼びかけに答えたのは八雲ではなく、晴香だった。ちらり、と助

手席に座っている八雲を横目で見た。本当だ。ドアに寄りかかりながら

気持ち良さそうに寝ている。

「こいつ、いつから寝てた?」

「そうですね…山を下ってる途中だったと思います」

晴香が、う〜んと首をか傾げながら答えた。

山を下っている時って、俺が必死になって車を運転してた時じゃねえ

か。

こいつ、俺に車出せとか頼んでおいて一人でかってに寝てやがる。

「おい!起きろ!八雲!」

後藤は運転しながらも大きな声で八雲に向かって叫ぶ。だが、びくとも

しなかった。いつもなら近所迷惑とかどうこう言って起きるのに今日は

どんだけ爆睡してるんだ。

「起きて!八雲君!」

続いて晴香が名前を呼びながら八雲の肩をゆする。さすがに寝れなくな

ったのか八雲は両目を開いた。

「どうしたんですか?…僕は眠いんです。要約して説明してください」

八雲は右手で頭をかき回した。

よっぽど起こされたのが嫌だったのか、不機嫌な様子。だが、そんなの

俺の知ったこっちゃない。寝られてたまるか。

「どうしたもこうしたもねぇ。もう済んだのか?」

「要約しすぎて分かりません」

八雲が、ため息をついて言った。

——お前が要約しろっていたんだろ!

後藤は口から出るのを抑えた。

「…たく、若林とはもう連絡済んだのかって聞いたんだよ」

「それなら、最初からそう言って下さい」

あぁ、もう!疲れる野郎だな!

「で?どうなんだよ」

苛立ちまじりに後藤は言った。

「あたりまえです。後藤さんが、ちんたらと準備している時に連絡しま

したよ。僕の名前を言ったらすぐに内容を聞き出して向こうから電話

を切りましたけどね」

八雲が苦笑いしながら言った。

連絡してあるんならいいや。だが、一言多いぞ。

「何がちんたらだ。俺は、わざわざ浴衣からスーツに着替えてたんだ」

「そのままでもよかったんじゃないんですか」

八雲が二ヤリ、と笑う。嫌な予感。今までの事もあり、大抵言う事は

分かっているが…。

「何で」

「クマは何来ても変わりはしないってことですよ」

八雲は鼻で笑って、そっぽを向いた。

——やっぱ、分かっててもイラつく!!

あぁ、こいつを殴りたい。しまいにゃ、減らず口をたたけなくしてやろ

うか。

「後藤さん」

さっきの話を聞いていた晴香が身を乗り出して後藤を呼ぶ。

「な、何だ?」

まさか、晴香ちゃんまで言うんじゃないんだろうな。最近、八雲に似て

きた気がするし。

少し、びくびくしながら返事をした。

「何で敦子さんと奈緒ちゃんとの旅行だったのにスーツなんか持ってき

てたんですか?ここ長野ですし、事件があっても入り込めないですよ

ね?」

——痛い。それを言われると痛い。確かに俺も思ったが、何で持ってき

てたんだろう?

後藤は、自分の大きいカバンにスーツを入れた記憶さえなかった。

助手席では、声を押し殺して笑う八雲の姿があった。





         ◆続◆



あとがき———*

あぁ、最近、向井理に興味があるw
かっこいいよなぁ♪
八雲君の方がかっこいいか。