二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 心霊探偵 八雲 〝Another FILE〟 ( No.223 )
- 日時: 2011/07/10 09:39
- 名前: 凪 (ID: ObYAgmLo)
第一章 悲劇
十話(前編)
「後藤さん、携帯はマナーモードにしておいてくださいね。邪魔される
のは嫌ですから」
八雲が後藤に向かって言った。
「ああ…そうだな」
後藤は目の前の信号が赤になったところを見計らい、スーツのポケット
から携帯電話を取り出し、八雲の言う通りマナーモードにした。
後ろの後部座席では、晴香も携帯電話を取り出し、マナーモードにす
る。後藤が携帯電話をスーツのポケットに入れ終えるとタイミングよく
信号が青に変わった。
すぐ向こうには長野警視庁が見える。
***
後藤達を乗せた車は長野警視庁に着いた。入口のドアの前では、もうす
でに若林が待っており、会議室に案内され「資料を持ってくる」と言い
残して行ってしまった。あいかわらず若林の様子は変わらないようだ。
会議室はいくつかのテーブルが横にいくつか並べられ、六列あった。
後藤は会議室の入り口すぐそばにあった席に座り、晴香がその右横に座
った。
「八雲は?」
さっきまで一緒にいたのにいねえぞ。
「ここです」
八雲の声がしたかと思うと、ドアの閉まる音がした。後藤と晴香は後を
向いた。
八雲は入口のドアのすぐそばの壁にもたれるような感じで腕組みをして
いた。どうやら座って話を聞く気はないようだ。いつもの事。
そして、またドアが開く音がした。若林だ。手に茶色い封筒をもってい
る。あれがおそらく資料だろう。それにしても、ドアのすぐそばにいる
八雲に気付かないなんてあるのだろうか。見ているこっちが笑ってしま
う。
「待たせたな」
若林は、柄にあわない笑顔で言うと、後藤と晴香が座っているテーブル
の前に立った。すると、後藤と晴香を見ながら若林が言った。
「彼は?」
「入口の壁」
後藤が苦笑いしながら言った。若林は後藤の言う通り入口の壁に目を向
けた。「そこにいたのか」などと言い、若林は驚いている。そりゃあそ
うだな。俺でも気付かねえよ。
若林は資料をテーブルに放った。それを後藤があわてて手にとる。
「会議室が借りられるのは一時間。この後俺は別件で動くことになるか
ら、まずはこの時間だけだな」
「十分だ…よな?」
後藤は後ろにいる八雲に聞く。八雲は頷いた。
続く