二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: .それでも地球は廻る 魂魂×SPEC ( No.1 )
- 日時: 2011/02/25 07:39
- 名前: 葵 ◆iYEpEVPG4g (ID: 4uYyw8Dk)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel3/index.cgi?mode
実は財布を忘れた、なんて言える訳が無い。これで今月に入って3回目のタダ食いだ。いや、タダ食いと言った表現は少しばかり可笑しいか。やはり今度も偶然居合わせた誰かに払ってもらえてしまうのだ。店主もそろそろ堪忍袋の緒が切れ掛かって来た、という所だろう。私はどうにも彼の胃の調子が心配だ。
瀬文さんはチャーハンと天津飯を頼んだ。時間によれば、平均4分32秒で注文の品が出てくる筈だ。現在3分50秒経過。あと42秒、一体どうして財布の件を言い出せるだろうか。
餃子に箸を着ける。心地よいにんにくの風味と味噌と濃く味付けされた豚肉が絡み合い、それは絶品の美味しさだった。
この美味さを味わえるなら、どうでも良い—当麻紗綾にとって目の前の餃子と財布の関係は、言わずも知れがな餃子の方が天秤にかける以前に大切なのだ。
とん、と目の前に差し出される料理。
紗綾は箸を止め一瞬目を輝かせてそれを見つめたが、山盛りの餃子を今一度見るなり、口に餃子を詰め込んだ。
「瀬文さん。私一つ言い忘れていたことがあります。落ち着いて聞いてくださいね。あと何があっても暴力反対、です。」
「何だそれは。落ち着かないような話か。」
決心を固めて言い出した私に感謝して貰いたい物だ。
「財布を忘れました。」
「……どうりで。1度に関わらず2回目か。学習しない典型的な馬鹿だな。」
呆れ半分と言ったところで頭を叩かれる。私だって、忘れたくて忘れた訳じゃない。これはれっきとした事故である。
「だから言ったじゃないですか。暴力反対ですって。」
瀬文は包みから顔に似合わないポップな赤い金魚の絵が描かれた布が巻いてある何かを取り出す。ああ痛いと嘆き顔をテーブルに伏せてから、「それ、何ですか」と紗綾が疑問を投げかける。
その言葉を露骨に無視してから、瀬文は溜め息を付いた。
「人の趣味をとやかく言う気はありませんが、その。」
「言いたいことがあるならはっきり言え。そしてこれはマイ箸だ。適当な想像するんじゃねえ。エコだろ。」
「結論から言うとあまりエコでは無いです。ただチャーハンと天津飯食べるのに箸って凄く使いづらいよねって思っただけです。」
***
坂田銀時は悩んでいた。この季節限定モンブランスイートパフェを頼むか、日々好んで食べているデラックス苺パフェにするかである。気分的にはこんな晴れの日は苺にしたい。が、いかんせん栗の方は季節限定、これを逃すと来週には食べれなくなってしまう事が明白なのだ。
悶々としながらテーブルのメニューを睨む。刻一刻と時間は迫るばかりか、かれこれ1時間水だけを頼み続けている。そろそろきっぱりと決めたい。
(いや、よく考えろ限定だぞ?この前食った限定さつまいもパフェは絶妙なハーモニーで不協和音をかもし出していて最悪だった。しかし定番の苺は中に入ってる苺とクリームが最近はコーンフレークで水増しされていて・・・・・・・・・そうだ苺だ、苺にしよう。)
そう決意したものの、容易く一瞬でそれは崩れ落ちることとなる。目を休めようと遠くの景色を見つめたところ、なんと席の1番向こう側の客がモンブランスイートパフェを実に美味しそうにほおばっていた。目を疑うとそれは甘党の銀時にとって魅力的なパフェだった。言葉では、言い表せないくらいに。
「・・・一度に両方ってのは、糖分多量摂取で医者に何言われるか分かんないもんな。」
そう呟くと、途端に目の前のスイーツを思う存分食べている客らが憎らしくなった。てめぇらも糖尿病とか高カロリー摂取による生活習慣病にでもかかってスイーツなんぞ2度と食べれなくなれと、毎度のこと思う。
結局決めることなんて出来ないのだ。そもそもパフェに順位をつけることこそが間違っている。もってのほかだ。
甘味類は人類で愛すべき宝なのだ。人間の舌が甘みを感じられるよう出来ているのは、スイーツを食す為だ。
茜色がちらつき始めた空を見て、「おばさん、デラックス苺パフェお願いします。」と、口にした。
***
あとがき
なんだか餃子とパフェの美味しさを語る回みたいになってしまった。