二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: .それでも地球は廻る 魂魂×SPEC ( No.10 )
- 日時: 2011/03/07 05:05
- 名前: 如月葵 ◆iYEpEVPG4g (ID: 4uYyw8Dk)
「で、拾ってきちゃったんですか?!今時そんな迷子を連れ帰るみたいな真似しないで下さいよ。交番か地図書けば良かったのに。」
「まあぶっちゃけそうですよね。つーかあの人馬鹿なんじゃないですか。」
「銀ちゃんがバカなのは元々アル!酢昆布くれたら道教えてあげるアルよー。」
大変な言い掛かりである。その場を押さえようと弁解にかかるが、三連続のクレームは収まることを知らず、銀時は頭を抱えた。
あんなのが店の主人とは聞いて呆れます。
——煩い。此処は俺の店なの。
人格の安逸さがありありと出てますよ。
——余計なお世話だ。
業務中の無断外出多々で告訴してリストラするとかどうですかね。社長の座から引き摺り下ろせますよ。
——おいおい、怖い事言うなよ神楽とかが実行したらどーすんだ。
テーブルの上にお茶は8つ。銀時と紗綾が一気飲みして、1つ、また1つと湯のみが増えていた。全く同じ物を使えばいいものをと気付いたのは、ついさっきだった。あながち馬鹿だというのも間違ってはいない。
3度目に注ぎ入れたお茶を啜っていると、瀬文と呼ばれる男が声を挟んだ。
「御歓迎感謝します、が。」
「が?」紗綾が聞き返す。
「詳しくお聞かせ願いたいことがあります。」
どすこい時間だよ!と携帯が鳴った。紗綾の物だ。何を好き好んであのアラーム音にしたのだろうか。疑問である。空気を読めと言いたい。携帯じゃなくて、そんな設定にした当麻に。ぱたりと開いてユーフォー会議始まる時間だ、と呟きアラームを切ると、紗綾はまた足を組んでソファに腰を沈ませた。
「こちとら何回も質問に答えてるんだけどよー。俺からもひとつ。一体あんたたち何処の者だ?」
「しまった。私とした事が。」
ぽかんと口を開けた紗綾。
虫が入るぞという瀬文の言葉をだまらっしゃいと一括して、得意げに口元を上げた。
「……申し遅れてましたね。警視庁公安部公安第五課、 未詳事件特別対策係の当麻紗綾と、ハゲこと瀬文焚流さんです。」
新八と神楽が目を合わせてぱちくりさせる。
「警察?!」
「何アルか、銀ちゃんまたやらかしたアルか?!自棄になって犯罪に手を染めたアルかぁー!!」
やたらと演技調子で言う神楽。その表情たるや、雷に打たれたかの如しある。
「いやいやいや銀さん犯罪犯してないって思い当たる節はたくさんあるけどちょっと、ええ?ホラ、公安警察てのは平和主義のヒト達じゃなかったっけ?!」
しまった何したんだ。どう謝れば免れよう。弁解の一言が見つからないと頭を振り回す。
「いえ別に仕事上の意図は有りませんので。それともあれですか、警察に見つかるとヤバい事でもしたんですかねえ。」
紗綾が白々しく笑った。
そこまで言われると、こちらにも言い分があると言う物だ。見てろよ当麻紗綾。
今日はお世話になろうかと。そんな紗綾の言葉を皮切りに、物騒な口論が始まった。
***
コンセントにコードを差し込む。パソコンの電源を入れると、平面からぴかぴかと光の輪が映って、それから機械的な音を鳴らして機能し始めた。
「…あ。」
そういえば此処、インターネット使えないじゃん、と我に返る。幾ら本体が優秀な物だとしても、それでは意味が無いのだ。ワープロや用意しておいた特殊な機能やらは使えるだろうが、これじゃ中身の無いお味噌汁と一緒。
インターネットを開こうとするとやはり接続エラーという警告が示された。何とかしてみるか、と紗綾は意気込んだが、過去の検索内容や劣化したデータを復元して動かしたとしても、その情報量は知れているし、何より時間がかかる。
この世界にもそんなネットワークがあると信じて接続設定を変えて、細かい事をやってのけると、あっけらかんとページは繋がった。
実のところ紗綾は感づいていた事が在った。キーワードから考えるに、刀、着物、建物の外観——そして回線の違うネットワークと、「警察」という単語に反応したと言う事。
導いた結論は、一つでは無かった。
人を創造の世界へ移動させるスペック。2つの世界を繋ぐスペック。そもそもこれが幻想なのかもしれないし、疑い出せばすぐにぽろぽろと壁は崩れ落ちてゆく。キリが無い、と一旦思考を止めた。
「瀬文さん、起きてますか?」
無音の返事に腹を立て、くるりと後ろを振り返る。座ったまま寝た体があった。
(瀬文のばかやろー。)
本音を言いたいが今日の私は大人なのだ。だからわざわざ怒鳴りたてるような真似はしない。ごくりと唾を飲み込んでからパソコンの電源を落とす。今日はもう遅い。重い瞼が閉じるのを何度も堪えた。
照明の消えた部屋の床を手探りで這って、紗綾は布団に潜り込んだ。