二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: .それでも地球は廻る 魂魂×SPEC ( No.2 )
日時: 2011/03/07 05:10
名前: 葵 ◆iYEpEVPG4g (ID: 4uYyw8Dk)

       
 









2つの世界が交わって歪んでから、それぞれの世界に戻るまで、取り残された物が在った。異質な同士は水と油。高温では、跳ね除けあって、やがて消える。
    
染まり始めた黒は赤と青のグラデーションを塗り潰そうとしていた。陽は落ち掛けていた。夕と夜の境目は、いつも神妙な気持ちを思い立たせる。繰り返す騒音は人の声。餃子を掴んだ箸が、白い砂の地面にぽつりと穴を開けている。砂埃が足元をすり抜けて行った。
    
 
「・・・・・・一体、何が起こったんでしょう。」

「大変結構。またその手のスペックか?」

 
瀬文は空を見つめていた。それは長い夜の始まりを告げるように。
当麻と居て、いや、未詳に居るようになってから、大抵の超能力やら摩訶不思議な出来事やら、動じなくなって来たのかもしれない—そう思った。
対して紗綾は冷静さを欠けさせていた。予想だにしない景色に目を見張る。木造の古臭い屋根が立ち並ぶ裏側、地球上の何処かではあるだろうが、そんな思考を働かせながら、新たなスペックの保持者の可能性を脳に焼き付ける。そして一言。
 
「スペックとは今回は考え難いですよ。此処が日本で無いならば、話は別ですが。」
 
口元を上げて笑ってみせる。そうだ、何処かに転送されたと考えるのが一般的だが、まず此処が何処なのか知る必要がある。ボールペンと手帳と胸ポケットから取り出し、幾つかの重要なワードを書いて行く。目に映る風景、時刻、まだ足りない。


「その線の可能性が高い、と。」
「そうです。野々村係長、大丈夫ですかね。今日はUFO会議の日だってのに。」
      
さもそうであると言った顔付きでは無い。紗綾は心なしか期待と好奇心が高まっていくのを感じていた。
苺パフェを食べ終えて、そそくさと帰る銀時がこの2人に出くわしたのは、幸か不幸か影も消えかける時だった。









***




           
「坂田さん、私この苺と季節限定の栗のやつ食べたいです。出来ればこの抹茶アイスとバタークリームサンドとキャラメルチーズケーキ。あ、この杏仁豆腐もはちみつとかジャム掛けたら以外とカオスで美味しいかも・・・」
 
「駄目だ。諸事情により1個に決めてくれ。」
 
「奢ってくれるってのは嘘ですか。私の内でスイーツ1個なんてものは奢ってくれるうちに入りませんよ。…何すか、睨まないでくださいよ文句有りますかてか犯罪ですか高カロリー高タンパク摂取罪ですか。」
  
     
全く辛い世の中だ、と紗綾。
全ては異端だった。紗綾の人生の中で、これ程にも感激と興奮を覚えたことは無かった。表面上で理解できるそれは、なんとも素晴らしい事ではないか。此処はそう、一般的に言う超常現象なんてのを遥かに凌駕していた。
 
日本中の何処でも無い。
地球上の何処でも無い。
今在る現実を宇宙まで探しに出たとしても、きっとこの世界は見つからない。そう、此処は異世界なのだ。もしくはパラレルの世界。創造された世界か次元の違いかはあるだろうが、根拠も何も無い。
目の前に居る男は坂田銀時だと名乗った。異世界の住人としてはいかにもといった風だが、無論まだ何も聞いていないし道で迷った通行人という事で済ませていた。
   
「店員さん。これとこれと…あとこっちのアイス全種お願いします。」
 
「人の話はちゃんと聞きましょーねー。」
 
両手で広げたメニューを閉じる。瀬文が腕時計を持っているのを思い出し、「そう言えば。」と言葉を切り出した。
 
「今何時ですか。」
 
「7時12分。」
 
「随分遅くなっちゃいましたね。すみません坂田さん、単刀直入に聞きますが此処は何処ですか?」
   
「だからぁ、最初から何回も言ってるって。此処は江戸!天下のお江戸!」
 
やれやれ、といった様子で首を傾げる紗綾に指を指す。
                 
「駄目ですねこれは。私、超能力は根拠があるなら信じますけど。さっきから同じ単語を言いっぱなしでもなーんにも分かりゃしないんで少しは頭のいい回答してください。ちょっと頭冷やしましょうか。」
「お前と意見が合うとは驚きだ。どうだ、宇宙人にでも攫われたと考えるか?」
「それは良いですね。もしくはもう一つの世界の人格だとか実は宇宙のワープゾーンの神秘だとかならマジ嬉しいです。」