二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: ポケットの中の楽園にはモンスターと旅烏 ( No.50 )
日時: 2012/12/16 19:13
名前: 雷燕 ◆bizc.dLEtA (ID: rh5Dd4le)

 駆け出して裏口から外に出たマサキに、レイアとルイも続く。するとそこでは、ホウエンで見られるはずの無限ポケモンが、明らかに苦しそうな表情で二人の人間そして二匹のポケモンと対峙していた。近くには、三匹のポケモンが倒れている。サンダース、ブースター、シャワーズ。
 レイアには、その人間の顔に覚えがあった。今日のうちに見たことがあるような。
 さらに言えば、服にも覚えがあった。というか、一度見れば忘れはしない服だ。

「ロケット団、もう情報をつかんだんか……!」

 マサキが困惑の表情で言った。

「ロケット団の情報網を舐めんじゃないわよっ。ラティオスは頂いていくわね!」

 ロケット団の女の一方が言って、何かを投げた。空中で網を広げてラティオスへ向かっていく。モンスターボールではないもっと他の、より強制的にポケモンを捕獲するものだろう。

「ヒトカゲ、ひのこだ!」

 レイアが言うと、その何かは炎に焼かれて地面に落ちた。ヒトカゲがレイア達の前に出てくる。

「何してくれんのよ。タダじゃないんだからねそれ!」
「船の中で見た。こいつらロケット団だ」

 金髪の女が言うのは無視して、マサキ以上にどうしていいかわからない様子のルイに、レイアが言う。
 まず間違いなくこいつらは、ここにいるラティオスを捕獲しに来たのだろう。

「か、隠しててすまん。誰が訪ねてくるか分からんけん、三人に番してもらっとたんやけど……」

 マサキが説明をした。ロケット団がやってきて倒されてしまった、というわけだ。
 「R」を強調した服に身を包んでいる女性たちの前には、アリアドスとエーフィ。ラティオスを守っていた三匹はタイプ的にバランスが取れているから、それに頼らない強さを持っているポケモンだろう。戦って、撃退できるか? できない可能性のほうが高い。
 ……って私は、どうして真っ先にラティオスを、マサキを助ける方法で打開策を模索しているのだろう。

「ルイ。タイプ的にアリアドスには両方分がある。いけるぞ」
「わ、分かった。ミツハニー、出てきて!」

 ルイがミツハニーをボールから出す。うん、むしタイプのミツハニーならエーフィに相性がいい。

「き、君ら戦うつもりかいな!? 無茶や、さっき話したレッドでもないんやし」

 マサキが言った。勝てるわけがないと思っている。概ね正しい。

「とりあえず時間は稼ごうと思いますから、ラティオスを中に入れて助けを呼ぶなり……」

「なーに勝手に話を進めてんの。アリアドス、いとをはく」
「させるな!」

 ロケット団の女、そのうちの背の高い方がポケモンに指示を出したが、ヒトカゲがアリアドスに体当たりをして糸はあらぬ方向へ飛んでいった。

「あくまで邪魔をしようってわけ? エーフィ、サイコキネシス!」

 サイコキネシスなんて避けようがない……そう思ったが、聞こえてきたのはヒトカゲのではなく、人の苦しそうな声だった。

「うあっ……!」

 反射的に声の聞こえてきた後ろを振り返ると、マサキがラティオスの横でうずくまっていた。手を頭に当てて苦しそうに顔をゆがませている。そう、ちょうどひどい頭痛をしたときと同じ。
 即座に状況を理解したレイアはロケット団を睨みつけた。

「お前まさか……!」
「されて厄介なほうを防ぐのは当然でしょう?」

 彼女が睨みつけたところで相手の防御力が下がるなんてことはもちろんなく、金髪の女は言葉の通り当然のごとく言った。
 かと言って、こうも当たり前に人に向けてポケモンの技をかけるって言うのか?

「周りの人間の迷惑とか、そういう次元はとうに越してるんだろうな……ギャングだから当たり前か。ヒトカゲ、エーフィにひのこをしながら接近してひっかけ! ルイ、とにかく連続攻撃だ。その隙にマサキさんは小屋の中に!」
「わ、分かった!」

 マサキは頭痛も治まったようで、立ち上がってラティオスと共に小屋の中へ入った。その間レイアとルイは敵がマサキ達に攻撃する余裕の無いよう、攻撃を仕掛け続ける。
 ヒトカゲが接近すると、エーフィはでんこうせっかでミツハニーを攻撃にかかることでつぎのひっかくを回避した。ミツハニーは攻撃があたったことで一瞬ひるんだがすぐにかぜおこしをして、敵に攻撃の隙を与えない。

「くそっ。こんなガキに邪魔されてる場合じゃ……!」

 そう言った背の高いほうの女は、次にこんな指示をした。

「アリアドス、あいつにサイコキネシス! エーフィもよ!」
「分かった、エーフィ、サイコキネシス!」

 あいつら、両方サイコキネシスが使えるのか!
 そう思った瞬間にはもう、これまでに経験したことのない苦痛に襲われていた。全身を強く打ったような痛みがして先ほどのマサキと同じ様にうずくまった後は、頭の中身をかき回されているかのような感覚が続く。目眩もして、状況をはっきりと認識することが出来ない。
 えっと、早くどうにかしないと。何とか戦わないと。
 焦って考えるほどに頭は痛んだ。ルイが何かを言っている気がするが、何と言っているのか分からない。

 しかしそんな中でも、オレンジの小動物がこちらへ駆け寄ってくるのだけは分かった。
 だからレイアはそいつへ言った。

「戦え!」

 私の心配などしている暇はないんだ、攻撃を続けろ!

 そんな意思がちゃんと伝わったのだろう。一瞬戸惑ったように見えたヒトカゲはすぐに顔を引き締め、敵の方へ向き直った。しかしすぐに高速で移動する敵がぶつかってくる。エーフィのでんこうせっかだ。
 スピードは向こうの方が高い。ヒトカゲは敵の動きを掴むこともできないようで、きょろきょろしながら向いた方向とは全然違う方向から攻撃を受けている。

 ど、どうにかしないと。私の方が俯瞰的に見れているのだから、私が方向を支持して……。

 そうは思うが、自身の視界もはっきりとしない。行動パターンを読もうにも、エーフィの速い動きを追いながら思考する余裕がない。頭をかき回されている感覚こそほとんどなくなったが、まだ頭痛は収まらない。一番苦しんでいるのはヒトカゲだというのに、この程度の痛みで何もできない自分がどうしようもなく情けなかったが、まともに立つことすらままならないのだ。

「そろそろ終わりかしら? 随分と時間を食ってくれたものね! エーフィ、サイコキネシス!」

 駄目だ、もうサイコキネシスなんてくらったら!

 レイアがそう思ったときだ。
 ヒトカゲの体が光に包まれた。