二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: ボカロ曲を好き勝手に解釈してみた ( No.298 )
- 日時: 2011/12/16 20:43
- 名前: 蟻 ◆v9jt8.IUtE (ID: hTgX0rwQ)
意地っ張りだから、しょうがない。
#03 おひめさま、ごめんね
その後リンが出て行き、完全に静かになった状態で、俺は今日の勉強を全て終わらせた。
——リンは今頃、どうしているだろうか。アイツは意地っ張りだから、コンビニでお菓子でも買って、公園のブランコに一人乗って、ぼりぼりと貪り食ってるんだろうなー……ヤケ食いかよ。怒らせたのは申し訳ないけど、そんなリンの姿が本当にありそうで、少しだけ笑ってしまった。勉強とかは覚えないくせに、こういうのは根に持ってるんだよなあ、アイツ。
世界で俺だけの、俺一人だけのおひめさま。誰よりも近くて誰よりも大事だよ。だけど俺にも、ちゃんと時間っていうのも生活っていうのもあるから、大変なんだよ……なんて。
言葉にしない俺は、アイツの言いなりになる俺は、やっぱりシスコンと言われても仕方なかった。
————リンは俺の想像通り、落ち込んだ様な顔をして、ポテトチップスをむしゃむしゃと食っていた。片手にはオレンジジュース。辺りにはゴミ袋が散乱していた。
「……はははっ! 堂々とした環境破壊だよなあ!」
「はうっ!?」
がしゃん、と音がした。
今ここで、何が起こったのかと言うと、かなりの地球滅亡させる気かというくらい、お菓子のゴミがびゅんびゅんと風に舞っている中心に、このゴミの風の原因のリンがむしゃむしゃと、まだ環境破壊を行っていたもんだから、俺は堪えきれず笑ってしまった。いやー、予想通りっつーか予想以上っつーか。
そして、いきなり聞こえてきた俺の声にリンはビックリして、ブランコから落ちた。俺はすかさずリンの元へ走るが、全然間に合わなかった。
でもリンは無事の様だ。——いや、無事というよりは、驚きすぎて痛みがないのかもしれない。
「れ、レン……? なんでここに居るのよ……」
きょとんとした顔で、俺に訊くリン。いやあなんとなくだよ、とか言ってもなんかカッコつかないから、俺は転んだおひめさまに手を差し出して、笑いかける。
「おひめさま、だろ?」
リンは、俺の手を掴んでその場を立った。俺は、リンの砂で汚れてしまった服を落としてあげて、ゴミを拾う。そんな俺の姿を見ていたリンは、どうしてだかは知らないが、珍しくボランティア活動に勤しんでいた。いやまあ、至ってどこにでもあるような普通の公園を、こんな短時間でゴミ公園にしたのはリンなのだが。と思うとやって当たり前だな。
きっと罪悪感があるのだろう。うむ、それでいいや。
……ふう。やっと公園らしくなってきた。気付けば時刻は六時半で、肌寒くなってきた。
「もう帰るか」と俺が手を差し出したら、リンはいつもより大人しく「うん」と笑って手を繋いだ。珍しいなー大人しい。
アイスは買わないけど、ホットケーキだけでも作ってあげようと、心の中で思った。ゴミ拾いも頑張ったしな。
そういえば、コイツはいつも俺にべたべただけど、好きな人とか居ないのかなー。居なくても、リンは普通に可愛い部類に入るから、結構男子から人気だとは思うんだが。
「……お前さあ、その手ェ握るの、まだ俺一人なの?」
…………やっべ、言い方間違えたっ! うわあああどうしよう!
頭の中で焦る俺。でも出る言葉は、「あ」とか「う」とかひらがなしか出ない。気付けば俺の手からリンの手は離れていて、代わりに、俺の頬にビンタがクリティカルヒットした。
本日二回目の涙目のリンの顔。いや、もう泣いている。それは、怒りもあるけど、何より——悲しそうだった。
「なんて、そんなのウソだよ! 冗談だってば、マジで!」
今更言い訳みたいな言葉しか出ない。謝る言葉すら出てこない。リンはまた話を聞かずに、家の方向へ走っていった。
……絶対お前は、俺の事を分かってない! だなんて、じょう、だん、だ……。分かってないのは、俺だってのに。