二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: ボカロ曲を好き勝手に解釈してみた ( No.305 )
- 日時: 2011/12/18 18:42
- 名前: 蟻 ◆v9jt8.IUtE (ID: hTgX0rwQ)
お前との、思い出だから忘れねえよ。
#04 おひめさま、いちばん
俺は、すぐにリンを追いかけた。
全く運動しない俺の体はすぐに疲労して遅くなるが、それと相反してリンは運動神経が良い。なんていうか、活発だからな……。
とかそんな事を思ってるうちにも、リンと俺の距離は離れる。俺は、疲れたから立ち止まった。ぜえぜえ。息を整えてから、思い切り叫んだ。
「リン! 待てよ!」
人が居ないのが幸いだった。俺が名前を呼んだら、リンは立ち止まり、怒鳴ってきた。
「……何よー! レンは私の事嫌いなんでしょ! 適当に機嫌とりしてるだけで、全然、今までやった事忘れてるんでしょ!」
「最近カラオケ行ってないけど、カラオケ行った時、最初に歌う曲はいつも『おk、緑は敵』だったよな! クワガタ採りに行って、帰ってきたら母さんに二人で怒られたし! 二人でケーキ焼いたらお前は毎回焦がしてたし! いつも冬には、二人で買い物行った時に、よく肉まん買ったし! あと、いつもくだらない事で喧嘩してるだろ!」
忘れてるもんか、俺の記憶力なめんな。忘れていたと思われていた事に、かなり少しだけど傷がついた。喉と胸にじわじわと痛みが広がる。
大声を出しすぎたせいか、先程走った時よりも疲労感が大きくなる。はあ、と一旦息を吸ってから、吐き出す。
「全部、全部、忘れるわけねーだろ! おひめさまとの、思い出だしさ!」
リンを安心させる様に、精一杯笑ってみせて。冬だって言うのに、走って大声出して、汗だくだよ。
リンは、驚いた様な顔をしていた。少し目が潤んでいる。
「わ……っすれて、ないの?」
「そんな事言うなよ! お前だって、全部覚えてんじゃん!」
そこで、辺りは静寂に包まれる。俺ははあはあと、情けないぐらいに息切れしているので、膝に手をついて、息を整える。……これからはちゃんと運動しようと思う。
暑さで顔が火照っている。多分俺、体温急上昇中だろうなーとか思ってみる。微熱だとか余裕な気がする。
ふと、顔を上げてみると、リンが小走りでこちらに着ていた。
「レン、大丈夫?」
「大丈夫なわけ……あるか……」
「レン運動しなよー? じゃあ一緒に帰ろう」
ジャージのポケットに手を入れたままで、にへら、とリンは笑った。俺は何とか笑顔を作って、頷いた。運動、本当にしないとなー。
「あ。ホットケーキ、作ってよね?」
「——当然だろ?」
だってお前は、俺の見てきた世界の中で、一番のおひめさまなんだからな。
ちゃんと見てるから、いつも見てるから、お前は気まぐれでわがままなお前のままでいいよ。お前の好きな様にしたらいいよ。あ、でもたまには優しくしてほしい、かも。
リンの手がポケットから出ていた。ふいに右手を伸ばして、急にぎゅっと、さ!
リンが驚いた様な顔をしてこちらを見てきたから、俺は今やった過ちを後悔し、羞恥心に耐えられず顔を逸らす。
「ただ握ってみたかっただけ、だよ。いつも握ってるから」
ただそう言ってみたら、握り返された。
……やっぱ、おひめさまが一番だな。
end / ワールドイズマイン レンver