二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: ボカロ曲を好き勝手に解釈してみた ( No.320 )
- 日時: 2012/01/15 19:32
- 名前: 蟻 ◆v9jt8.IUtE (ID: hTgX0rwQ)
- 参照: 正夢デエト 明晰夢=夢とわかる夢のこと
この場所で、君に想いを。
#02 気付けば、夢の外
握られた手は、触れることはなかった。今日はもうお別れだから、夢の中の私の実態が、無くなっている。
君は悲しそうな表情を浮かべた。私は君に微笑む。
「——さよなら、夢で逢う君」
今日もまた、目覚めた。ベッドの上で。明晰夢を見ると、嫌悪感でいっぱいになる。現実の私と感情が混ざり合って、現実を思い出してしまうから。この世界では、未だ君と私は、すれ違っている状態だから。本当のことを思い返すと、嫌になる。君と私が、結ばれていない、夢とは違う関係ということが。
ふと、窓の外の風景に目をやる。晴れ晴れと朝だというのに、爽快感など一つもなかった。私の部屋という、現実的なその景色が、一層私を不快にさせる。
ゆっくりとベッドから起き上がり、洗面所へと移動する。顔を洗って鏡の中の自分と目が合った。
——夢の中の自分は、頬を抓っても痛くないのね。それを思うと、なんだか私がとても可哀想な気がした。
なんだ夢かって、笑って君と手を繋いだら、君からも笑みが返ってきて、ひとときの幸せを感じる。本当にひとときの、つくりあげた幸せ。
「あーあ、正夢って本当にないのかなあ」
あるわけもないと冗談交じりに呟いた。
その日もまた夢を見た。勿論主役は、君と私で。
昨日の夢とは違って、随分現実味を帯びていた。私の知っている、私の住んでいる、そして君も住んでいる馴染み深いこの町で、君と私が手を繋いで歩いている夢。これはデエトだ。そういうシチュエイションの明晰夢だと、分かった。
ファミリーレストランでご飯を食べながら、また他愛もない話。いつもなら、毎日の出来事を話して笑っているだけだが、今回はいつもと違った。
「お前が好きって言ってくれて、嬉しかった」
え? 自分の耳を疑った。けれど、彼は話を続ける。
「人に好きって言われたの、初めてでさ。お前の必死な姿見て、俺は本当にお前に好かれてると思って、嬉しかったよ」
顔を赤らめて、彼は言う。これは、本当に夢なの? こんなの夢で良いわけないよ。
「私だって、うれし————」
ああ、また合図の光だ。自分の気持ちを、自分で伝えてたのに。夢って分かって、また嫌になる。