二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: ボカロ曲を好き勝手に解釈してみた ( No.386 )
- 日時: 2012/04/19 20:42
- 名前: 蟻 ◆v9jt8.IUtE (ID: hTgX0rwQ)
- 参照: オドロシライダー3 やっとこさ一番終了。
僕の中に居る君の事を守りたくって。
#03 殺していく 死んだ人
僕は、庭の倉庫にある自転車を引っ張り出した。あんまり乗ってない自転車だが、昨年福引で当たったので、それなりに新しい。自転車のサドルに乗り、家の前をうじゃうじゃ通っていくゾンビを一目見る。
僕は全力でペダルを漕いで、ゾンビの中に自ら入っていった。そして飲み込まれたところで、気付く。どうしてこんなに無計画だったのか。もう少し考えて突っ込めばよかったか、と。自分もう喰われるんだろうな、と半ば諦めつつも死体の波に逆らって、ギターをめちゃくちゃに振り回す。
すると、ボロボロの肉が崩れ落ちた。腐った肉だけが、そこに残った。おどろおどろしい。僕も、皆も。倒れた自転車を引っ張って、ゾンビに壊されない所に置いておく。そしてまた僕は、そこらのゾンビを、オンボロのギターで形を崩す。崩して壊して、ぐちゃぐちゃにさせる。頬に死体の肉が付いたって、おかまいなしに。
気付けば、辺りは静かになっていた。一面残骸。ああ、僕はイキモノを殺してしまった。心は生きていない、気味の悪いイキモノを。
見ているだけで吐きそうになるから、僕は倒れた自転車をたたせ、サドルにまたがった。そして、前に進む。正義のライダー、ライダー。風に揺られて勢いよく、駆け抜けていく。
何があったのか、妙に静かだ。さきほどまで居たゾンビはなんだったのか。思い出すだけで、あの光景とあの腐臭、そしてあの死体がよみがえってきたので、思考するのを止めた。
一旦止まって、空を見た。昨日と変わらずいい天気。空は何も変わらないんだ。夜の静寂を切り裂いて、オンボロのギターを少し鳴らしてみる。じゃんがじゃんがとやかましい、からからの音が鳴る。なんだか馬鹿らしくなって、馬鹿になってみる。二輪に全ての想いを乗せて。想いを馳せて。そしてこの世からゾンビが居なくなった時に。逆に僕が居なくなった時に。その想いを、しっかりきっかり伝えられるように。
そして言わなくても伝わっていますように。
「大好きだあああああああああ」
ギターよりも馬鹿でかいがらがら声で、その静寂を切り裂く。それだけを終えて、自転車に乗って闇に消えるライダー。