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二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 【リク曲】ボカロ曲を好き勝手に【募集】 ( No.443 )
- 日時: 2012/10/08 16:34
- 名前: 蟻 ◆v9jt8.IUtE (ID: yWjGmkI2)
- 参照: グロリアス・ワールド │ 突っ走れ!
ただひたすらに上を見上げる様を見た。
#04 たった一人の「私」
家に帰る途中、道端で弾き語りをしている女性を見つけた。案の定、周りは人だかりだ。誰かが目立った行為をすると、人はすぐに集まる。いつもなら興味がないからすぐ帰るのに、今日だけはなぜか、足が止まっていた。
曲調はゆったりとしたロックバラード。だけど歌っている人の声は、凛としていて、それでもどこか悲しげで、私には叫んでいるように聞こえた。
辛いことを乗り越えて、それを必死に誰かに叫んでいるような、そんなうただ。それはとても美しくて、とても羨ましくて、とても。とても、泣きたくなるほど優しい。
今まであったことが頭の中に浮かんで、それが、すっと消えるような感覚。忘れられないのに、今まで思ってたことが、一気に消えていく。
群集心理で植えつけられた、溢れんばかりの枯れた思想も。
明るすぎて、幸せすぎて、呆れるほどの馬鹿げた理想も。
きっと私が欲しいんだ。最悪なんて最低なんて言ってても、ずっとずっと、手を伸ばしてた。自分しか幸せになれなくても。
いつの間にか曲が終わり、拍手を貰っていた女性が、泣いてる私に目を向けた。優しく微笑むと、またギターを持って、次の曲に移る。
私はその場から走り出していた。曲の途中とかそんなの関係なく。全力で、彼女のもとへ。ずっと一緒に居たかった彼女の前へ。
会えるとか会えないとかじゃなく、ただ「会いたい」だけなのだ。会えるまで、ずっと走る。それだけ。
小さい頃や勉強会の時、よく二人で遊んだ、見慣れた彼女の家の前に立っていた。濡れた顔をハンカチで拭って、インターホンを押す。
「あら、晴生ちゃんじゃない? 久しぶりね」
「どうも、縁、居ますか?」
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