二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: アリスと兎の逃避行 (inzm/長篇小説) バトン発行!! ( No.305 )
- 日時: 2011/09/01 19:35
- 名前: さくら (ID: Rn9Xbmu5)
- 参照: 運命論
——05——
今だにドキドキと高鳴る心臓が五月蝿い。
高鳴る鼓動を止め様と、必死に胸部分を押さえ付ける。
『———止まれッ!!!、止まっ、』
抱きつかれる様な体制になるなんて、イタリアでは日常茶判事。もうすっかり慣れっこなはずなのに。
彼に同じような事をさせられると、こんなにも違うなんて。
『こんなの、私らしく無いわっ!———早く、忘れないと、』
本当に、らしく無い。
学校に近づいてきたら、走る為に使っていた足のスピードをゆっくりと落としていき、気持ちを落ち着かせる為に深呼吸をした。
*
遅咲きの桜が辺りを取り囲んでいる。此処、雷門中学校は今年、新入生を迎える。今日はそのおめでたい入学式だ。
周りの制服と少し違う制服を着た私は、当然目立つが、今はそれどころじゃないらしい。
ドキドキしながら真新しい制服に身を包む新入生。こんなに早く来て。入学式もまだ早いのに。新入生よりかは落ち着いた雰囲気の在校生。このどちらかが私の周りを取り囲む。
因みに私は、どちらとも言えない中間の部分。性別的に言えば、女と男の間、御釜的な部分だろうか。あ、だがこれだけは言える。
ニューハーフでも無ければ、決して男の娘でも無い。
そんな事を脳裏で浮かべていると、桜の樹に体重を掛け腕を組んでいる一人の少女が眼に入る。
『・・・・・不良、とか?』
癖のある、紫色の髪をリボンで一つに束ね、瞼を閉じている。制服は所々鎖やチェーンがジャラジャラ付いており、他の人達が着ている制服とはかなり違うが、あれは改造した雷門の制服。何かを聴いているのか、耳にはイヤホンを付け、音楽プレイヤーを手に持っていた。彼女が鞄を持って来ていない事に気が付いたのは、初っ端から授業を受ける気が無いからだろうか。・・・忘れよう。
だが、
—————面白いもの見つけた。
そんな思想が頭の中を制圧し、気が付くと私は彼女の前に来ていた。
私に気がついたのか、ゆっくりと開かれる、瞳。
その瞳は、燃え滾る様な紅色だった。
「・・・・・・何」
『貴女、此処の生徒?』
「だったら?聞いて何かする?」
『別に。興味よ、只の。』
本当に、面白い。コノコ。
表では冷たくあしらっているが、その瞳を開いた瞬間。その瞳の裏に何かがあるのを私は瞬間的に感じ取った。
本当に、面白いわ。
『まさか、新入生?』
「いいや、2年。今年で2年目」
『・・・そう。私、転入生なの。2年よ。だから、まだ時間もあるし・・・、案内して欲しいのだけれど』
「アンタ、どんだけ上から目線なんだよっ・・・、」
『へぇ?貴女に言われたくないわ』
「・・・チッ、」
これが、私と、アズ・・・。基“咲夜梓美”との出会いである。
***