二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re:   アリスと兎の逃避行 (inzm/長篇小説) ( No.378 )
日時: 2012/03/01 15:01
名前: さくら (ID: te9LMWl4)
参照: 桜蘭高校ホスト部。ハニー先輩お誕生日企画。一日過ぎちゃったけど。


「サークラちゃーん!」

「光邦、」


4年に一度、巡り来る今日は2月29日。オリンピックが開催される年、閏年として知られている今日は、朝起きてから雨の雫が冷たかった。
昨夜、降り続いたのだろう。明け方になって止んではいたが、やはり雨の香りもするし地面もぬかるんでいる。花や葉に付いた雫がポツリ———今、地面に落下した。

単刀直入に言うと、景色は絶景。とても綺麗。昨夜の雨が嘘の様に晴天へと変わった青空には、綺麗な虹のアーチが何個も連なっている。
とても、清々しい気持ちだった。

だが私には、この今日の日が勝負に思えて堪らないのだ。先程も言った様に、今日は4年に一度しか来ない珍しい日。
こんな日が誕生日や何かの記念日な人は、とっても辛いだろう。———そう、光邦もその一人だ。

光邦の誕生日は2月29日。つまり今日だ。閏年では無い年は光邦の誕生日は無いので、2月28日か3月1日にしていた。


「ねぇねぇ、サクラちゃん」

「何?光邦、」


だが先程からずっとこの状態なのだ。

光邦が私の袖を引っ張るなり肩を叩くなりさり気無くボディタッチをしながら私に問いかけ、それを私が聞き返す。
だが彼は私が幾等「何?」と聞き返してもまた直ぐに「ねぇねぇ、」と戻ってしまうのだ。流石に私も疲れてきた。誰か、こやつを如何にかしてくれ。


「如何したの、光邦?さっきから呼んでばかり」


好い加減この状況を脱出すべく、今度は光邦が口を開く前に私が話を切り出す。
すると光邦はニッコリと笑顔を貼り付けて言う。


「あー。もう、やっぱ良いよー」

「え?何それ、教えてよ」


「良いってばぁー」そう言いながらその小柄な身体を自由自在に操り、巧みな動きで光邦を捕まえようとする私を翻弄。
でもそんな所も可愛いな。蝶々さんみたい。…なら私は差し詰め、その光邦蝶を捕って喰おうとする蜘蛛だな、蜘蛛。

あ、もしかして今日誕生日だから祝えと?でも今先程ホスト部の皆で誕生パーティーしたしな。その時に「お誕生日おめでとう!」何て100回も言ったし。否、それ以上かもしれない。


「だってさ、僕がサクラちゃんに言っても、全部伝わらないんだもん」

「伝わらない、って?如何いう事?」

「だーかーらあ、伝わらないの!」

「……?」


伝わる?行き成り何を言い出すかと思えば私には伝わらないだの如何のこうの。私にはその言動自体が伝わっていないみたい。ごめんね。
私には伝わらないなんて、若干失礼な気もするが。ちょっと頭悪いだけで、伝わらないなんて事は実際やってみないとわからないし。


「サクラちゃん、僕の事好き?」

「うん、好きだよ?大好き!」

「じゃあ、どれ位好き?」

「どれ位、かあ。うーん、分かんないなあ、言葉に表せ無い程大好き!自分の身より光邦の身を優先する位、光邦は大事だよ!もう、言葉に表せないけどね、」


えへへ、なんて照れ笑いを浮かべる光邦の笑顔は、どんな高級五つ星スイーツよりも甘くて蕩けてると思う。
どうしてそんなに可愛いのか。どうしてそんな笑い方をする事が出来るのか。光邦と付き合っていて私の女としてのプライドがズタズタになった時、一度彼に聞いてみた事がある。
そると彼は「うーん、毎日甘—いお菓子を食べてる所為かなあ」と可愛く首を傾げて来たからもうプライドなんて物捨ててやった。最初から、この人と付き合うには、プライドなんて幾等でも捨てる覚悟はして置かなければいけなかった。


「愛してる?」

「えへへ、勿論!愛してるよ!」


何故か何の恥じらいも無く言えた言葉に今になって驚く。
普段はこんな事恥ずかし過ぎて絶対に言えないのに。今日が光邦の誕生日だから?誕生日パワーって最強なんだね。


「何か、今日サクラちゃん素直だね」

「だって光邦バースデーなんだもん。私だって、毎日恥ずかしくて俯いているだけじゃつまんないし」

「可愛いなあー」

「光邦がね」


「でも急に如何したの?少し心配しちゃったよ」そう言葉を紡げばまた照れ笑いを浮かべる光邦。本当、女の子の私より可愛いからとても困る。

ぐいっ、すると行き成り光邦が腕を引いた。細いのに何時も鍛え上げられて筋肉質なその腕は、たったの腕一本で私を倒させた。
辿り着いたのは、光邦のふわふわしたカーディガンから覗く春色のVネック。頬を光邦の胸版に押し付けられ、私は抱きしめられた。

ドク、ドク、ドク、心臓の脈打つ音が次第に速くなる。
光邦の、心臓の音だ。


「分かる?僕ね、サクラちゃんと二人で居るといっつもこうなっちゃうんだ。とってもドキドキして、たまに言おうと思ってる事が言えなかったりする時もあるんだよ」


光邦の、私を求めて抱き締める腕の力がもっと強くなった。

私は、頭の中が真っ白になる。純白で、汚れ無き真っ白。先程まで見えていた色が、全て失われた。きょとん、そんな表現が一番相応しい位に。
だけど、私は光邦の今は大きく感じる身体の上から、光邦を丸ごと私の腕で包み込んだ。私も光邦に、此の速く脈打つ心臓の鼓動を知って貰いたかったからなのか。

光邦は一瞬驚いた表情をしたがまた直ぐに、ふふっ、と笑って蕩ける甘い表情に戻っていった。


「光邦、…私も同じだよ?」


光邦より速く脈打つ心臓の音。ドクンドクンドクン、それはやがて次第に速くなっていく。、
もう私の顔は真っ赤だ。先程の光邦の言動でもう既に真っ赤になっていたのに、まさか勝手に自分の身体が動いて、抱き締め直させるとは。
私の心臓は、タコさんもびっくりのオーバーヒート状態である。


「…本当、だ」

「でしょ?」


えへへ、とまた照れ笑いしながら私を抱き締め返す光邦。私も負けたくなくて、つい勢い余ってぎゅううううっと抱きついてしまった。
でも、良いと思ってる。今日は光邦の誕生日だし、お互いに気持ち全部をぶつけ合おう。


「私、二人で居ると光邦がこんなになっちゃってたなんて、全然知らなかったよ。だって、光邦何時も自然に甘い言葉囁いて来るし。アレだけで私の心臓持たないのに、」


私はそう言って光邦の首筋に顔を埋めた。
別に疚しい気持ちが働いたからでは無くて、只純粋に光邦に今の私の顔を見られたく無かったからだ。
今、絶対にこれ以上無い程、顔が紅潮してる。恥ずかしい。


「僕もだよ。サクラちゃんがこんなにドキドキしてるなんて思わなかったなー。サクラちゃんだって、何時も僕に平気で抱きついたり“大好き”なんて言葉使ったりしたたからねぇ」


光邦は本当に可愛い。そして、たまにどんな男の子よりも格好良いと思えてしまう時がある。
それは、計算なのか天然なのかは分からないけれど。
でもやっぱり、ドキドキしてしまうのだ。病気では無い。


「サクラちゃん、顔真っ赤だねえー」


あれ程見られたくないと隠しておいた顔は、今、明らかに光邦にバレていた。
なので自分だけ恥ずかしい思いはさせまいと、私も負けず言い返す。


「光邦の顔も真っ赤だよ?」


馬鹿みたいに照れ笑いを浮かべる私達は、傍から見れば地球上のどんなバカップルよりも馬鹿らしいだろう。
私達二人が醸し出す、ケーキよりも甘い雰囲気は、空気の中に酸素と一緒に融けていく。


「僕、サクラちゃんを愛してるー!サクラちゃんの全部を愛してるー!!」

「なら私も光邦の全部を愛してる。今日生まれて来てくれた事全てに感謝してるよ」


4年に一度、巡り来る今日は2月29日。オリンピックが開催される年、閏年として知られている今日は、朝起きてから雨の雫が冷たかった。
今日から丁度18年前、今みたいな雨上がりの綺麗な午前中に光邦は生まれたという。

光邦と出会い、お互い愛し合えること。私にとっては、どんな高価なドレスよりも最高な神様からの贈り物だった。
光邦が生まれてきてくれて、本当に良かった。
私が光邦をどれだけ愛してるなんて、本当は言葉に収まり切れない位なんだ。
宇宙より広いなんて、私の気持ちのこれっぽっちも無い位だ。

でも此れだけは言える。


「光邦、お誕生日おめでとう。そして、




 (( こんな素敵な男の子を生んでくれた光邦のママ、本当にありがとう ))
(貴方をどれ位好きかなんて、本当は分からない位なんだけど)
(でも、貴方が此処に生まれて来てくれた事に感謝しているのは、良く分かる)




240301
二月二十九日はハニー先輩の誕生日でした。
おめでとう御座います!


補足
うわああああああ、間違えたああああ!!
コッチイナズマだったあ!