二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

World in melt*. episode28 ( No.398 )
日時: 2012/03/27 14:20
名前: さくら (ID: te9LMWl4)

ジリジリと地面を焦がす太陽が、今日も雲一つ無い空で見事に地球を焼いてくれている。
今日は遂にジュリアとの決戦の日だ。対ユニコーン戦と言った方が、適切では無いか。

控え室に入り、ジャージの下に着込んでいた青色のユニフォームに着替えた。私の腕には、薔薇と桜のあのブレスレットが一つ、填められていた。もう一つは、今頃ジュリアの手の中にあるのだと思う。


「それ、綺麗ですね。」

「冬花ちゃん、」


隣に居た冬花ちゃんが、ブレスレットを指差した。


「うん。試合の時、壊れない様にしないと。」



 ×



ミーティングが終わり、それぞれのベンチでアップをする。
マネージャーは、ドリンクやタオルを人数分合っているか確認したり、怪我様のテーピングなどの確認を再度していた。


「あれ、秋ちゃん、は…?」

「そういえば…。何処へ行っちゃったんでしょうか。もうすぐ試合が始まるのに…、」

「私、ちょっと探して来るね」

「あ、私が行きます!もう直ぐ試合が始まっちゃいますから!」

「大丈夫、直ぐ戻って来るから!」


私のドリンクを用意してくれていた春奈ちゃんの言葉を無視して、私は走った。
だって、居ないのは秋ちゃんだけじゃない。一哉と土門、そしてジュリアまでもが不在だった。ジュリアから聞いていた一哉の怪我の事。それが妙に引っ掛かって離れない。
もしかすると、4人は一緒に居るのかもしれない。

其れを考えると、黙っては居られなかった。
一言だけ一哉に言っておきたかったのだ。


「あ、一哉待って!」


幾等か走っていると、話を終えた一哉と土門がユニコーンの控え室に入って行くのが見えた。
私の呼び掛けが聞こえたのか、土門に「先に行っててくれ」と頼み、足を止めてくれた。


「一哉、私は別に一哉の足の怪我の事なんて聞いてないし気にしてないんだからね」

「聞いたんだ。そして気にしてくれてるんだね」


何でこんな馬鹿っぽい話しか出来ないのだろう、私は。つくづく私の頭が嫌になった。
でも、今言わなければいけない。今言わないと何時言うんだ。


「一哉の足の事、ジュリアから聞いた。ジュリアも秋ちゃんも、多分皆一哉が試合に出る事に反対していると思う。でも、私は違うよ?」

「サクラ、」

「今回が最後のFFIになる事、分かっているからこそ、今回の試合を最高の試合にしなければいけないんだと思う。私がもし同じ立ち場だとしても、同じ様に考えてると思う。でももし私だったら、力ずくでも出場してやるけどね。」

「…、」

「だけど、壊れかけてる足を完全に壊しちゃったら元の子も無いから。無理し無い様に、いざとなったらジュリアも、土門もマークもディランも、勿論私も居るからね」

「ははっ、サクラはイナズマジャパンだろ」

「そう、その笑顔を保って!笑顔が消えたら最高じゃないよ!大好きなサッカーなんでしょ!?楽しめっ。」

「…あぁ」

「まず言いたかったのは一つだけ。後から後悔しない様な、最高のゲームにしよう。…これだけだから」


その時、一哉が“ああっ!”と笑って、思い切りハグして来たのは、秋ちゃんには内緒にして置こう。一哉の笑顔、とても綺麗だと思った。
こんな下手な会話だったけど、少しでも一哉の中に溜った蟠りを無くしてあげられていたら、本望だ。


「サクラ、ありがとう。でも、負けないから」



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