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二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: アリスと兎の逃避行 (inzm/長篇小説) ( No.408 )
- 日時: 2012/05/03 10:02
- 名前: 水野ミミ (ID: cWF1aDDB)
- 参照: 誕生日おめでとう!50分クオリティだけどごめんね!
「……誕生日、おめでとう」
君はもう俺のこと、忘れたかもしれないけど、俺は君の事、忘れられないから。
今年もまた、この言葉を送るよ。
……一体俺たちは何年間顔を合わせてないんだろう。
最後に会ったのは、そう、あの時。俺の11歳の誕生日だったかな。
今日みたいに外は晴れてて、太陽が眩しかったかな。
「誕生日くらい私の所に来なくてもいいのに……お父さんとかと一緒にいたほうがいいんじゃないの?」
「いや、そうじゃなくて。俺の誕生日だから、一緒に居たかったんだ」
何の病気かは知らなかったけど、ずっと入院してる彼女の病室に行くことが、その頃の俺の日課だった。
「あ、そうそう。きっと来る、って思って、プレゼント買っておいたんだ。……ハッピーバースデイ!」
小さいわりに重いその箱を開けたとき、俺は驚いた。
「……これって……」
「いつも色々してくれてるから。そのお礼だよ」
俺は、そのとき彼女がどんな顔をしていたか、よく覚えてないけど。
埃を被ったあの箱を、そっと開けてみた。
オルゴールの音色と共に、彼女の歌声が聞こえてくる気がする。
耳を澄ませばそんなこと無いのだが。
その時、部屋のドアを誰かが叩いた気がした。
「……電話だってさ、天馬君から」
……誰かと思えば、ヒロトさんか。
いい感じに、この空気を壊してくれたな、と思いながら、俺はオルゴールの蓋を閉めた。
「…………またね、桜」
俺がそう言ったら、君はまたね、と言ってくれるかな?
—誕生日に、君に捧げる物は
俺からの君にしか言わないこの言葉で。—
————愛してるよ。ずっと、ずっと。
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