二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re:   アリスと兎の逃避行 (inzm/長篇小説) ( No.412 )
日時: 2012/05/03 14:31
名前: 海穹 (ID: fQORg6cj)
参照: さくらは写真部って言う設定ですよ。勝手ですみません……





「その一瞬を」





「狩屋!」

名を呼ばれて振り返れば、満面の笑みを浮かべた君がいて。それが嬉しいのか自然と顔が綻ぶ。心底ほれ込んでいるんだなと思うその自然な動作。まあ、それだけ魅力的な人だから仕方が無いんだけど。


「何?どうした?」

そう言って彼女に近づいていけばパシャッとあまり聞かない音と光。
あまりの眩しさに反射的に目を閉じてしまった。すぐにあははと楽しそうな声が聞こえ、まだ眩しさの名残がある目を何とか開け、彼女を見てみる。

「か、めら?」

そう言葉を紡げばそうだよ、とまた楽しそうな声が聞こえる。

「狩屋がくれたカメラ!」

そう言って掲げられたのはさっき狩屋に光を浴びせたカメラだった。
彼女が所属している写真部は運動部の様子を写真に撮り、コンクールに出したりしている。前々からカメラが欲しいと呟いていたのを思い出し、中古しか買えなかったがプレゼントしたのだ。

誇らしげにカメラを覗くその姿は楽しそうで、眩しい。

「嬉しくってさ!いっぱい撮っちゃうよ!」

そう言って君は空にカメラを向けた。つられる様に空を見ればその空は真っ蒼で、雲はほんの少ししか浮かんでいなくて、ひどく綺麗で。
気がつけば食い入るように見ていた。


「なんか、狩屋の髪みたいだね!!」

そう言ったとき、またパシャッと音が聞こえた。どうやら空を撮ったらしい。

「そう?」

「うん。蒼くて、綺麗で!なんかそんな感じ」

そう言ってまた、パシャリと音。そして今度はこちらを向いてパシャリ。



パシャリ  パシャリ  パシャリ



引っ切り無しに写真を撮っていく君。カメラの先にいるのは俺のはずだ。

「俺撮って楽しいの?」

「うん。楽しい」


パシャリ


また聞こえたその音。
そのカメラの向こうにいる君の顔が見たくなって、引っ手繰る様にカメラを奪った。

あっ、と驚いた顔をしながらこちらを見る彼女にレンズを向けて、こちらも


パシャリ


とシャッターを切った。
驚きを隠さない顔の君が可愛くて、もう一度シャッターを切る。

「こら!勝手に撮るな!」

そう言ってカメラを奪おうとする君。その手がカメラに届く前に空高く持ち上げてそれをかわす。ちょっと、と必死に手を伸ばすのが可愛い。
好きな人にはいじめたくなる性質だから、どうしてもこんなことしてしまう。



「狩屋!返せぇ!」

そう言って君が高くジャンプした反動で後ろに派手に尻餅をついてしまった。彼女もバランスを崩したらしく、うわぁ、と声を上げながら倒れてくる。

反射的に閉じた目を開ければ、目の前に君の顔があって。吃驚して目を丸くしていると君が目を開けてこちらも驚いた様子でこちらを見てきた。

短い沈黙が流れていると、ハッとしたらしい君が俺の手からカメラを奪い、すぐさま立ち上がり、口のあたりを手で覆いながら後ずさる。

「じゃ、じゃあ私行くから!」

そう言って振り返りざまに見えた耳は真っ赤だった。



パタパタと遠ざかっていく足音。その音が聞こえなくなった頃にやっと立ち上がることができた。

やばかった。今のはやばかった、と心の中で思っていると、何気なしに見た時計が休憩時間の終わり三分前を指していた。







その後、グラウンドに戻って、松風に不思議そうな顔で顔を見られた上に、顔が真っ赤だよ、と聞かれたのはまた別の話。







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べた甘な上、駄文でごめんなさい。


さくら!誕生日おめでとう!!