二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 氷と杏(BLEACH小説) ( No.2 )
- 日時: 2011/04/06 20:27
- 名前: まろんけーき (ID: ez4qQ6a7)
第一章
第一節
『出会い』(1)
時は隊長格三名の反逆から三十年前・・・。
現在護廷十三隊十番隊隊長、日番谷冬獅郎の隊長就任前の事項である。
ここは、尸魂界。
現世で死んだ者の魂が肉体から離れて辿り着く、いわば魂の故郷である。
尸魂界へと送られた魂は、流魂街という街へと自動的に転送され、現世への転生許可が出る六十年程後まで、そこで暮らすこととなる。
その中からも、微量ながら死神は選出されるらしいが、それは霊力を持つごく僅かな者のみである。
これは、その流魂街に住まう、死神となるものの物語…。
風が、静かに流れていった。
草の匂いが、鼻を擽った。
横たわった土の冷たさが、静かに身に染みた。
「……い。」
擦れた誰かの声が聞こえる。
地べたに仰向けに倒れていた少女がそれに気づき、薄目を開く。
…と、彼女の目の前に顔を近づけている、少年の姿が目に入った。
「…おいっ!」
さっきよりも、揺さぶりが強くなった。声も鮮明に聞こえてくる。
それとともに冷たさを増していく風に、わずかに身震いする。
少女は、いきなり目を開いた。
「ふぇあっっくしょいっっ!!」
くしゃみの反動で起き上がる。
ガスッッッ!!と音がして、額が痛んだ。
「痛ったぁ〜!!」
額を押さえる。
(あっちゃぁ〜。ぶっかっちゃったのかなぁ…?)
口をへの字に曲げ、空を仰ぐ。
その頬に、ふわり、と白い粒が舞い落ちる。
どうやら、雪が降っているようだった。
座り込んだまま辺りを見回すと、辺り一面は雪に覆われ、近くを流れる川は、浅く凍り付いていた。
360度見回していると、雪が降り積もり、氷原と化した場所にその少年が仰向けに倒れているのが見えた。
「大丈夫〜…?」
恐る恐る声をかけてみる。
少年は、ゆっくりと起き上がった。
「っ痛ぅ…。」
彼も同じように額を押さえていた。
寒風にさわさわと揺れる、雪のような白銀の髪。
顔にかぶせた手の隙間から少し覗いている、翡翠のように輝くエメラルドグリーンの瞳。
遠い異国を思わせるその姿に、少女は遺憾の念を抱いた。
「おい…。」
彼女の視線が自分にきていることに気づき、少年が少し、物憂げに睨んだ。
まるで、自分の容姿を嫌うかのように…。
「あ…。ごめんね。ぶっかっちゃったみたいで…。」
「いや、別にいいんだ…。」
ぶつかってしまったことを怒っていると思われていると気づき、言葉を濁す。
「お前、こんなとこで寝てて、死ぬ気か?」
「あ、いやー…。ちょっと…ね。」
「…?立てるか?」
逆に言葉を濁され、不信感を抱きながらも、立ち上がり、少女に手を差し伸べる。
「あ、ありがと…」
照れながらもその手を握り、立ち上がる。
照れくささに少年は、彼女が立ち上がったのを見届けてから手を離し、後ろを向いた。
「お前、どこに住んで…」
再び、後ろを向く。
と、その目の前に少女の姿は無く、また地面に倒れているのが目に入った。
「お、おいっ!」
驚き、揺さぶるが、今度こそ本当に反応が無い。
揺さぶってるうちに、近くに黒い鞘の刀が落ちているのに気がつく。
「何だ、これ?こいつの持ち物…?」
不思議そうにしばらく見つめていたが、そんなことしている暇はないと我に返る。
家に連れて行こうと、自分より体躯の大きな彼女を背負った。
刀は一応、持って帰った。