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二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- いち:ささいな ( No.5 )
- 日時: 2011/04/26 23:04
- 名前: あいな ◆vMllyNSxcs (ID: mNBn7X7Y)
始まりは、些細なことだった。
誰も気づかないような、教室の喧騒の中で、君に声をかける。
「ゆーちゃん、もう帰るの?」
佐々木優太。
同じクラスの男の子。
女子校に通う、男の子だ。
「あ、耶麻音ちゃん。ごめんね、今日は先生に早く来るように言われてて」
「え、先生?」
「あれ、言ってなかったっけ?」
彼は不思議そうな顔で言う。
先生って、学校の先生だろうか。
「じゃあ、一緒に来る?」
「…、え?」
「予定、ないよね?」
「う、うん」
そういうと、彼は私の手を引いて、教室から出て行った。
「先生は、元警察犬で、今は探偵事務所をやっているんだよ」
「そうなんだ…すごいね」
笑いながら話す彼に、曖昧な返事をする。
彼とは結構仲がいいつもりだったのに、私が知らないことなんてたくさんあるんだ。
そう思うと少し、悲しくなった。
「…耶麻音ちゃん?」
「え、ああ、ごめん、何?」
「ここだよ、先生の探偵事務所は」
彼が私の手を離す。
顔を上げると目の前には、狸の置物や、よくわからない張り紙があった。
「……」
地毛以外立ち入り禁止。
張り紙にはこう書かれていた。
「あ、先生は毛フェチだから、気をつけてね」
「毛フェチ…?」
「耶麻音ちゃんの髪きれいだし」
「———え?」
彼はそういって、ドアを開ける。
一方私は、急にほめられて、忠告はすぐに頭の中から消えてしまった。
この単純さを、数瞬後に後悔することになるとも知らずに。
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