二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Ⅰ remember her,because… ( No.964 )
日時: 2011/10/07 17:28
名前: 伊莉寿 (ID: r4kEfg7B)

—波紋。


*久しぶりです、ちょっとネタを思いついたのでやってみようと思います。今回は、瑠璃花を想う鬼道さんの1日です…*

___*♪*___



幼い頃、父親と休日に出かけた事がある。

遠出で、車に乗るのが楽しかった。春奈と父親と一緒に、野原や海と言った自然が綺麗な所へ行った。

最後の方に、家があまりない寂しい場所へ向かうと父親の顔が険しくなって、寄り道するからという言葉が聞こえた。


着いた所は墓地、友人が眠っているのだとぼそりと彼は呟いた。


車で待ってていいぞと言われたが、春奈が行くと言ったから俺も付いて行った。はっきり言うと怖かったから。


『後悔してるんだ。』

墓の前で父親が言った。

『…大切な人と言うのは、ある時大切だと思っても、気がつくと忘れてる物だ。俺も、失くして再び気付かされた。』

見上げる俺を捕えた寂しげな瞳。受け止めきれずに視線をそらす。

灰色の墓が目に入った。人が亡くなるってどんな気持ちになるんだろう、後悔する物なのだろうか。…その時は分からなかった。

『お前は、後悔しないように一緒に居る時間を大事に生きろよ。』

線香を持つ手が震えた。言葉に滲み出る父親の想いに唇をかみしめる。



その時も、両親の墓参りに行った時も、俺は誓った。

…絶対に後悔をしたくないと。傍に居る大事な人と過ごす時は、自分が出来ることを精いっぱいやって行こうと。


なのに……








————今、後悔している自分がいる。————









実るラズベリーをそっと収穫する。

「後悔」が花言葉のこの植物は、瑠璃花がいなくなった頃、俺を出迎えた。

今、2年経っても目を覚ましそうに無い魁渡の見舞いに行く前に、何とかして全部収穫しようと手を動かしている。

ライオコット島で瑠璃花がいなくなった事件から2年が経ったが、魁渡の件も瑠璃花の件も解決の糸口が全く掴めていない。

魁渡を槍で昏睡状態に陥れた犯人も、瑠璃花がそこまで思いつめていた理由、そして行方。現場には何も残されていなかった。


俺は何も出来ない、何も出来なかった、何も……分かってやれなかった。


思いつめていたのに、死の危機が近付いていたのに、それなのに…、こんなにも後悔するのに。

手に力が入り、右手にあったラズベリーが潰れた。溢れるラズベリーの果汁にハッとする。

赤い…

赤かった。赤くなかった。


魁渡が倒れた瞬間と、瑠璃花が落ちて行った瞬間が蘇る。前者のユニホームは赤かった。後者の現場は何も無かった。

消えた瑠璃花は何処に行ったのか分からない、生きているのかさえも…知る術は無いのだから。

ドロドロと胸に渦巻く感情は何なのか…後悔、それと…寂しさ?


掴めなかった。右手は彼女の指に触れて、するりと離れて行った。——もっと、もっと強く掴めていたなら。

一度は克服したはずの悲しみも、時が来ればふと蘇る物。卒様式の日は割り切れていたのに、気付けばまた彼女を思い出して悲しくなる。

…一緒にいたかった。

春の様に穏やかな笑みを思い出せば、いつもそう思う。

伝えられなかった想いは、何時か星屑の様に消えてしまうのだろうか。蒼い空に吸い込まれて行くのだろうか。


ふと名前を呼ばれた気がして門の方を振り返る。そこに居たのは、2年前まで家に仕えていた元執事だった。

鬼「…何の用だ。」

元執事「申し訳ございません、実は今まで隠しておりました有人様宛のお手紙がございます。」

鬼「隠していた?」

目の前に差し出された白い封筒。あまり良い印象の無い白い封筒だったが、そこに書かれていた字を見て目を見開いた。

黒いボールペンで書かれたと思われる、見覚えのある字だった。見間違える事は無い、瑠璃花の字で「鬼道有人様」と書かれていた。

裏には、小さく「From瑠璃花」とだけ書かれている。

その封筒を掴んで固まっていると、元執事は弁解を始めた。

元執事「この手紙が来ましたのは、瑠璃花様が失踪されて1週間ほど経った頃でございます。私が旦那様に見せると、ほとぼりが冷めるまで隠しておけと言われまして…。」

それで持っていたが腰を壊して働けなくなり、俺にも渡せなくなってしまった。偶然見つけでもして持って来たのだろう。

瑠璃花の字に懐かしさを覚えた。それと同時に、少し胸が痛む。

まだこの手紙を開けることは出来ない、でも……いつか開けるその日に、何か変わっていれば良い。

魁渡と瑠璃花が、笑えていれば良い。

その為に、俺は捜し続ける。魁渡を目覚めさせる方法も、瑠璃花の事も。周りが諦めようとも、絶対に諦めたくない。

———全ては大事な人の笑顔の為に。




胸に抱く想いを消さずに。

表し方の分からない、初めて抱いた想いを。

そして、きっと……否、絶対に。


———I can’t faget her forever.


俺は、永遠に彼女を忘れる事が出来ない…‥‥




*あとがき*

鬼道書きやすっ!!!
…瑠璃花は一体手紙に何て書いたんでしょうね。←
感想等、お待ちしております^^