二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

想いがいつしか歪んでしまう、その前に… ( No.980 )
日時: 2011/12/04 15:36
名前: 伊莉寿 (ID: r4kEfg7B)

映像の方で書いた短編です!


+∮+

どうしようもない悲しみ。
どうしようもない悔しさ。
どうしようもないアノ日。

良い事なんて何ひとつ無いと言うのに、この想いの原因である彼女を、俺は今でも…嫌いにはなれない。

会いたい、と……心から思う。

もう一度、君に巡り会う事が出来たら……。




くしゃくしゃに抱きしめた彼女への想い。



———消えた彼女を忘れる事が出来ずにもう何年経っただろう。
相変わらず俺はサッカー馬鹿とサッカーをしているが、彼女には[相変わらず]が無い生活があるのだろう。身内とは離れ離れで弟は意識が無いのだから。

…俺は彼女を引き留められなかった。腕を精一杯伸ばしても彼女に触れただけで、離れて行くのをゴーグル越しに見る事しか出来なかったんだ。彼女は何がしたかったんだ、と直後に自分に問う。考えたくもなかった。
残された事実————それは彼女が消えたと言う事だけだ。

生きているのかさえ問題視される彼女。
俺は生きていると信じている。ただ、きっと心のどこかではもう会えないのだと囁いている自分が居る。
アノ日から数年がたって、彼女は今何をしているのだろうか。成長しているのか、そしていつかまた会う事は出来るのか。

分からないから…、だから俺は何もできない。
自分の中で渦巻く感情を吐き出す事も難しい。些細なことでも笑わずに聞いてくれた彼女が今では懐かしく、そして大切な存在だったと思い知らされた。

思い出すたびに辛くなるのに、心が少し暖かくなるから…だから抱いた想いを捨てる事が出来ないんだ。儚い微笑みも、喜びに溢れた声も、俺を見据える瞳も、春の木漏れ日の様に温かな視線も…。
……いつか思い出という写真が色あせたら忘れてしまいそうな…全てがシャボン玉の様な彼女の記憶。

会いたいと強く願う。
会いたいと強く祈る。
会いたいと強く思う。……俺は何でもするだろう。

それなのに、全てはセカイの思うままに。




せめて、くしゃくしゃに抱きしめた想いが歪む前に……。


『鬼道さん!』


歓声の中、微笑む瑠璃花に……また、会えたら……。




*fin...*

鬼道×瑠璃花。鬼道の回想。