二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

ワガママ。 ( No.984 )
日時: 2011/12/26 12:21
名前: 伊莉寿 (ID: r4kEfg7B)

—波紋。


*久し振りです、この話を読むにあたり注意点があります。今回は作者が初めて作ったオリキャラ視点です。本編に出てくる可能性は低いです。鬼道→瑠璃花で、また駄文です。Are you OK?*


__*♪*__


「久しぶりです、有人さん。」

私がそう声をかけると、ピアノの周りで何か探し物をしていたらしい有人さんが顔を上げて、ぎこちなく挨拶をしました。

「佐久間は?」

「お兄ぃは用があって…今日は私だけです。」

取りあえずそこに座ってくれ、と指定されたソファに座りました。

有人さんは探し物をしている時に散らばってしまった物を片し始めた様で、どんどんピアノの周りが片付いていきます。

「…何を探していたんですか?」

「楽譜だ。」

「…楽譜?ピアノの、ですか?」

ああ、という短い返事。

何を弾きたかったのか私が考えていると、有人さんは俯いて悲しみを滲ませた声で、人の名前を呟きました。


「…瑠璃花に、あげた物なんだ。」





瑠璃花、という人は大事な人だったのかも…いえ、とても大事な人だったのでしょう。

私は、あれほど悲しみに溢れた有人さんの顔を見た事がありませんでした。

長い間近くに居た訳ではないけれど、春奈さん絡みでもあんなに悲しい表情を見た事がありません。

孤児院に居た間は、無かったはずです。

お母さんが私を孤児院に預けて、その後に有人さんと春奈さんがやってきました。

何故仲良くなれたのかは覚えていませんが、遊んでいた間は笑顔で溢れていました。

お母さんが迎えに来て離れたので多くは知りませんが、お兄ぃと一緒に日本代表になっていたのは嬉しかったです。

その時に瑠璃花さんと魁渡さんという姉弟と仲良くなっているのを知りました。

2人は消えたり再び現れたり、でもまた消えて今度は戻って来ませんでした。あれから数年経ちます。

「お兄ぃは、瑠璃花さんの事を良く知らなかった様で…」

「ああ、佐久間と瑠璃花の接点といえば同じイナズマジャパンだったこと位だからな。」

不思議な女の子だった、とお兄ぃは言いました。

けれど、とても強かった、とも。


…瑠璃花さんの事を言うと、有人さんはとても悲しそうな顔をします。

私が、私が有人さんの近くにいたら…何か出来たでしょうか。

ずっと友達だ、と孤児院から去る日に有人さんは言ってくれました、だから友達として何かしたいのです。

悲しい表情をしてほしくないのです。

陰で泣いてるんですよね、彼女の思い出の品を探していた位だから、まだ忘れられないんですよね?

どうしてですか。

忘れて下さい、悲しむくらいなら、忘れてしまって下さい。

泣かないで、明るい笑顔で笑っていて下さい…

あの日、孤児院から去る日に見た黄色いガーベラの様に、笑って下さい…。


「忘れてしまえたら…」

有人さんが、唐突に呟きました。

「何度も思った、だけど…、もう絶対に無理なんだ。」

「…強いですね。」

気付けば、私は返していて。

「有人さんは、すごく強くなりましたね。」


私にはお父さんもお母さんもいました。

同じ孤児院に居て、有人さんの方が断然辛かったはずなのに、有人さんの方がずっとずっと輝いて見えました。

お父さんとの繋がりのサッカーをして、春奈さんを守って、私に光を見せてくれたのです。

だからこそ有人さんは大事です。けれど、瑠璃花さんとの思い出があって今の強い有人さんがいるのだと思えば…。


私はわがままです。

忘れてほしいと思ったその彼女は、確かに有人さんの大事な人で、光を与えていたはずでした。

その裏返しが今の悲しみならば、消してはならない存在。


それでも、やっぱり思ってしまう。


私が隣に居たのなら…、と。