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第１２話

　　「裏切り者」


　林「どうもどうも、裏切り者の蘭桜美紗さん」

美紗が目の前まで行くと、林野は嫌みを混ぜた怪しい微笑みで、美紗のことを睨んだ。
その顔をみた途端、美紗は一歩後ろに下がり、目だけで林野をいかくした。

　美紗「それで、お前がぼくを呼び出した理由を教えて貰おうかな」

少し、挑発したような強気な美紗の言葉。
だが、すぐに林野は「はは」と笑い声をこぼした。

　林「理由もなにも、決まってるじゃないか...裏切り者」

　美紗「裏切り者？なんのことだよ。ぼくは何も裏切っていない。」

　林「本当にそうかな」

一瞬。そう一瞬だけ林野の笑みが止まり、辺りに凍てつき、固まった空間のような静けさが訪れた。
美紗は、無表情な林野に驚いたのか、瞳を丸くし、すぐに考えるように目を細めた。

　林「蘭桜女子サッカー部の契約。部活動は1時間で終了させること。連日で行わないこと。
　　　蘭桜美紗は基本、部活動には意欲的に行わないこと...
　　　今現在、お前は、この契約を破っている。違うか？」

　美紗「証拠はあるのか。」

　林「勿論。ございますよ？美紗さま、こちらの写真なんかどうでしょうか」

林野が、ユニフォームのポケットから取り出したのは、本日サッカー部が行った
パス練習などの光景だった。
なかには、美紗がボールを蹴ろうとする写真なども存在していて、
普段感情を出さない美紗も、こればかりは大変驚き、
瞳をギリギリまで見開き、今にも乾いてしまいそうだった。

　美紗「林野。その写真、どこで手に入れた。」