二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re:      朱と赤と、 。【銀魂】 7/1up! ( No.5 )
日時: 2011/07/04 15:17
名前: 葵 (ID: GSWgO850)

▽ 1話 テンションが上がりすぎると危険です


 ————



 …………死ぬわって豪語してから、何分経ったんだろうねぇ。
 何分、いや何十分、否何時間?
 時間なんて分からないし、そもそも今自分の目の前で何が起こっているのかすら理解不能だ。

 今目の前では、私の亡骸らしき物に泣きつく母親がいた。
 その横では父親が私の亡骸らしき物を見て唇をきつく噛み締めている。



 待ってよ。
 これって、夢?
 今私……何で空中に浮いてんの。
 嫌だ、嫌だ。
 こんなところ、いたくない____。


 私は宙を舞いながら、何処となく死臭の漂うあの病室を後にした。



「私が死んだんだとしたら…………黒哉は……」



 ____どうなってしまったんだろう。
 私達は、ただ……。
 普通に通学していただけなんじゃないの。
 訳が分からない。

 ズキズキと痛む頭を押さえながら、私は宙を彷徨う。


「……おーい、其処のお前」
「…………おーい其処のお前って誰!」


 頭が痛み過ぎて、思わず通行人Aに八つ当たりしてしまう。
 通行人Aは呆然としてから、私を見る。

 ……え?

 私は思わず通行人Aの元に近寄り、目の前で手を振って見せた。
 すると通行人Aはうわっ、止めろよっと叫ぶ。


「……私が、見えてる訳?」
「当たり前だろ」


 今まで通行人には視認されなかった。
 そもそも、ぶつかったって何にも言われない。
 私が、透けてしまうんだから。


「……実はさぁ、怒らずに聞いて貰いたいんだけど————」
「何。話次第では怒るけど」
「……ハァ。俺さ、ちょぉっとした神の遣い的な者なんだけど、間違えてお前等の事殺しちまったみたいな……」


 ……はい?


「だから、俺のミスでお前等殺しちまいそうなんだよ!」


 私はただ無言で、その“神の遣い的な者”に向けて拳骨を振り下ろした。

 間違えて殺した?
 私達、まだ死ぬ時じゃなかったのに殺されかけてる訳?
 ……フザケンナ。


「ふざけんな! なら、今すぐ戻しなよ!」
「そんな事出来るなら、俺だって苦労してねーよ! その作業をするには多少時間がかかんだ。だっから、“神様”からの御伝達だ。お前等、今から好きな世界にワープして楽しんで来れるぞ」
「…それって、二次元もアリ?」
「アリだ。つかテメェオタクかよ」
「黙れ。お前がそもそも私達を殺そうとするからいけないんだろ」


 うざったい“神の遣い的な者”を一喝すると、いじけだした。

 ……どうしよう。
 私、死んじゃった筈なのにすっごい今舞い上がってるよ。
 やばいやばい。
 このテンションの上がり具合は最早口では言い表せないくらい上がってるよ。


「じゃあ、これ以外無いよね! 銀魂の世界へトリップしたい!」
「今の容姿と全く変わりない設定で良いな。あと、お前の行きたがってる世界って戦闘とかある?」
「あ、稀に」
「なら多少身体能力も上げとくから。向こうで死ぬなよ。死んだらお前こっちにすら帰って来れなくなるから。向こうで死んだら、こっちで生きてたっていう事すらも抹消されっかんな」
「分かった分かった。早くしろ」
「お前話聞いてる!? ……ハァ、じゃーなこの馬鹿」


 やっとだ。
 長年願い続けていた、夢小説でしか味わえない“トリップ”という物を私は体験してる訳ですよ。

 有頂天な脳内とは真逆に、目の前が真っ暗になって、私は意識を失った。