二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 第四十一話 謎の男 ( No.129 )
日時: 2012/11/11 17:01
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: a8bifGsH)

ジムを出たレオは、ふと誰かに声をかけられる。
「失礼。ジムから出てきたのだから、まあそうだろうけど、君はポケモントレーナーかい?」
尋ねてきたのは、三十代前半の男性。シナイよりは若く見える。
服はなかなか派手、赤紫色で、黄色の不可思議な模様の入った服を着ており、袖はぶかぶかで羽のような形になっている。
青紫色の長ズボンもベルトはしておるものの、かなりぶかぶかであり、水色の不可思議な模様が入っている。
そして、耳にはスペード型のピアスをつけ、羽のついた帽子を被っている。
「はい、そうですけど…あなたは?」
「そうか。アサツキには勝ったか?」
その男性はレオの質問を完全に無視した。
「はい、ギリギリで勝ちました。ところで、あなたは?」
すると、その男性はやっと自分の名前を答えた。
「うむ。私はグレース。アサツキは私の弟子だ」
男性は自分の名をグレースと名乗り、少し考え込む。
「あの、どうしたんですか?」
レオが訊くと、グレースは、決めた、と呟き、顔を上げ、レオの方を見て言った。
「うむ。ちょっと、君に手伝って欲しい事がある。アサツキに勝つ実力を持っているのなら、信頼できる」
その男性の目は鋭い。何だか逆らえない感じだ。
「…何をですか?」
再びレオが訊くと、その男性は頷き、
「この町のはずれには、破れの洋館と呼ばれる建物がある。無人の屋敷で、外装にはコケが生え、ボロボロの建物だ」
レオは心の館を思い出した。あそこもボロボロな建物だった。
「で、そこがどうしたんですか?」
「実はな、近頃その屋敷で何かの声や物音がするとの噂があってな。そこにはゴーストポケモンが生息しているから、そいつらの仕業と言う者たちが多い。だが、私が何を考えているかは——分かるか?」
レオは心当たりがあった。と言うかその心当たりしかなかった。
「まさか…イビルですか?」
「そのまさかだ。だが、ただイビルだけならいいのだが、今回はそう簡単な話ではないのだよ」
「え、どういうことですか?」
レオが訊くと、グレースは僅かに顔をしかめる。そして、

「この洋館に、イビルのボス格がいるらしい」

レオの顔が驚愕の表情に変わる。
「それって、相当やばいんじゃ…ジムリーダーのアサツキさんに頼んだ方がいいのでは?」
「勿論アサツキにも頼む。だが、イビルのボス格の力を私たちはまだ知らない。君はアサツキに勝った、つまり戦力になってくれる」
その時、ジムの扉が開いた。
中から出てきたのは、アサツキ。
「あれ、師匠!?」
アサツキは驚いた調子でグレースの近くに駆け寄る。
「おおアサツキ。今日は君に話があって来た。このレオ君と、私と、君の三人で、イビルを撃退したい」
そう言って、グレースはアサツキにことの事情を話す。
アサツキも途中で顔色を変えたが、頷き、やがてグレースはアサツキへの話を終える。
そして、三人は歩き出す。


破れの洋館。
蔓が絡みつき、コケに覆われ、壁も所々破れた屋敷だ。
まだ正午くらいなので怖くないが、夜に来たら絶対に入りたくない屋敷だ。
「さて、レオ君、アサツキ、準備はいいな」
「はい、大丈夫です」
「師匠、あたしはいつでも大丈夫ですよ」
レオたちは、破れの洋館に入り込んでいく。
中はタイメイシティの心の館以上にボロボロのガタガタで、床も所々腐っており、足場に注意しなければならない。
天井がところどころ破れているため、暗くは無いのだが。
その時、
「何者だ!」
「何しにここにやってきた!」
次々と現れる黒い服を着た者たち。イビルの下っ端だ。
あっと言う間に、レオたち三人は下っ端軍に囲まれてしまった。
しかし、レオやアサツキの力を持ってすれば、下っ端など恐れるに至らず。
「やるか。出て来い、リーティン!」
「しょうがないね。出ておいで、アルデッパ!」
前にいたレオと後ろにいたアサツキがそれぞれのポケモンを出す。
下っ端はそれを見て、それぞれの手持ちを繰り出す。が、
「リーティン、グラスミキサー!」
「アルデッパ、ハイドロポンプ!」
リーティンやアルデッパの猛攻により、下っ端のポケモンたちは簡単に一掃。
さらに下っ端の何人かはその技に巻き込まれ、気絶。残った下っ端たちは、それに怯え、逃げ去ってしまった。
「油断するな。相手はどこから来るか分からんぞ」
グレースが注意を促す。二人はポケモンを戻さず、身長に進む。
しばらく進むと、階段に着いた。レオたちは顔を見合わせ、頷き、階段を登ろうとする。
その時、上から音がした。
コツッ、コツッ、と、階段を一歩ずつ誰かが下りてくる。その音は、三人にどんどん近づく。
そして…

「…む、懐かしい顔だ。おまけにジムリーダーすら引き連れてきやがって」

手入れをしていないと一目で分かる、ぼさぼさの長い紫色の髪が片目を覆い、服もつぎはぎだらけのぼろぼろ。
「お前は…!」
レオはこの人物に見覚えがある。心の館にもいた女。
イビル七将軍のシャウラ。
「下っ端が逃げ帰ってきたから、何事かと思えば、ふん、私に歯の立たなかった雑魚か。ふ、あの方の手を煩わせるまでも無い」
そう言って、シャウラはボールを取り出す。
「出て来い、チェキラス」
シャウラの出したポケモンは、紫色のネコ型かつ人型の体に、体の半分をピンクの模様で覆ったような姿のポケモン。
チェキラス、デビルポケモン。悪・エスパータイプ。
だが、ここでアサツキが前に出る。
「師匠、レオ君、先に行ってください。ここはあたしが食い止めます」
「で、でも——」
レオが止めようとしたが、グレースがそれを制した。
「分かった。アサツキ、ここは君に任せる。必ず追いついて来い」
アサツキが頷いたのを見て、グレースは微笑を浮かべる。そしてレオと共に階段を登っていく。
「むう、チェキラス、逃がすな!」
チェキラスが動こうとするが、突如大量の水が飛び、チェキラスの動きを止める。
「間違えないで。貴方の相手はあたし。悪いけど、速攻で決めるから」
シャウラは大きく舌打ちし、すぐさまアサツキに向き直た。
「ふふ、いいだろう。まずは貴様を絶望に叩き落す」
シャウラは口を大きく歪め、引き裂くような笑みを作った。



新キャラ登場、アサツキの師匠、グレース。そしてシャウラ再登場です。シャウラはこういうところにばっかり現れますね。さて、本編が長いので、次回予告行きます。次回は破れの館探索&アサツキVSシャウラもするかも。それでは、次回もお楽しみに!