二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 第四十八話 チャンピオンの気合と実力 ( No.140 )
日時: 2014/02/25 06:57
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: st6mEGje)

ギラティナが怒りの咆哮を上げる。
「マニューラ、氷柱パンチだ!」
グレースはギラティナに休む暇を与えない。常にマニューラに攻撃を指示し、マニューラも的確に技を命中させている。
氷柱のように尖った氷を手にまとい、マニューラは拳を繰り出す。
同時、ギラティナが波動を凝縮した弾を放った。
「くっ、マニューラ、一旦離れろ! 技を速やかに変更、メタルクローで切り裂け!」
マニューラは咄嗟に波動弾を避ける。
波動弾は必中技ではあるが、一旦避けてからまた襲ってくるまでに時間のラグが生じる。
その時間で、マニューラは氷柱パンチを解き、爪を硬化させて波動弾を迎え撃つ。
しかし、その隙をギラティナが見逃さなかった。
ギラティナは怒りに任せて強烈な炎を撃ち出す。
「何ッ!? しまった、私としたことが、完全に隙を作ってしまったか!」
いくら素早いマニューラといえども、波動弾を破壊し、その後すぐに炎を避ける術は無い。
波動弾は爪で破壊したが、怒りの炎を避けられず、マニューラは炎に包まれ、吹っ飛ばされた。
「…ふっ、決まったな。いくらチャンピオンといえども、神と崇められるギラティナをたかが二体で倒せるはずが無い」
半ば安心したようにマターは呟く。そして、
「さて、ここで起こったことを他の者たちに知られると、イビルとしてはまずいことになる。よって、ここで消えていただきます。チェックメイトです。ギラティナ、こいつらを焼き尽くすがよいぞ!」
ギラティナは吼え、瞳に怒りを灯す。
その怒りに任せ、レオたち三人に向かって炎を放つ——
ことが出来なかった。
なぜなら、

「ああ。確かに、チェックメイトだな」
炎の中から一陣の黒い影が飛び出し、ギラティナを切り裂いたからだ。

ギラティナはその攻撃により、炎を放てなかった。
マターはその黒い影が何か分からなかった。いや、何かは理解できたが、なぜ『それ』が動いたのかが分からなかった。
普通に考えれば、『それ』はマニューラである確率が一番高い。しかし、マターには理解できない事がある。
マニューラは速攻型のポケモンだが、反面、耐久面は脆い。そんなマニューラが、今のギラティナの怒りの炎を耐えられるはずが無い。
だが、
「気合の鉢巻だよ」
グレースの言葉を聞いたマターは、はっと顔を上げた。
「私のマニューラは、気合の鉢巻を持っている。気合の鉢巻が何かは知っているだろう? 結社のボスを務めるほどの者ならな」
気合の鉢巻は、戦闘不能になるほどのダメージを受けても、体力が僅かに残る事のある道具。
そして、それが今、発動したのだ。
「マニューラ、お前のその気合を、私は決して無駄にはしない。氷柱パンチ!」
マニューラは拳に氷柱のような尖った氷をまとい、ギラティナの腹部に叩き込む。
ギラティナの体勢が崩れる。もうギラティナの体力も残り僅かなのだ。
というか、一番手のメタグロスの重い攻撃+マニューラの猛攻をここまで耐えている時点で凄いのだが。
「マニューラ、メタルクロー!」
間髪入れずにマニューラは鋼鉄のように硬い爪で、ギラティナを切り裂く。
その瞬間、ギラティナは闇に消える。
シャドーダイブだ。効果は今一つだが、マニューラもかなりギリギリで戦っている。次に当たったら終わりだろう。
「マニューラ、全神経を集中させろ。ギラティナが現れたその瞬間が勝負だ」
ふと、空間が少し動いたような気がした。ほんの少し、気のせいかもしれないほどの小さいずれだが——
「マニューラ、辻斬りだ!」
マニューラが動いた。その瞬間、ギラティナが闇から出現、マニューラに襲い掛かる。
しかし、間一髪、マニューラはギラティナの襲撃を回避していた。
そして、ギラティナの腹部に、鋭い爪の一撃を刻んでいた。
必殺の辻斬りを喰らったギラティナは、最後に断末魔のような叫びを上げると、地面に落ち、動かなくなった。
「…ふう。マニューラ、よくやった。流石は私のドラゴンキラーだ」
グレースはマニューラを賞賛し、ボールに戻す。
レオとアサツキは声が出なかった。あまりにも迫力が凄すぎたためだ。
「…ちっ」
マターは舌打ちし、『ゲート』を起動。
破れた世界へ繋がる穴を開き、破れた世界へとギラティナを吸い込んだ。
「さあ、マター、これで終わりだ。観念するんだな」
グレースが一歩詰め寄る。レオとアサツキも駆け寄る。
しかし、マターの顔に焦りや悔しさは無い。むしろマターの表情にあるのは充実感だ。
「何を言っているのです? 最初に言ったはずです、今回の目的は『ゲート』のテストであると。ギラティナなんて、私の計画には必要ないんですよ」
グレースの目が細くなる。
「今回の目的は達成されました。もうここに用は無い。出て来い、リザードン!」
マターはモンスターボールを取り出し、尻尾の先端に炎を灯したオレンジ色の龍のようなポケモン、リザードンを出し、その背に乗る。
「せっかくですから、私たちの計画をお教えしましょう。私たちイビルの野望、それは——」
マターは一泊置き、

「恐怖の神と言われる伝説のポケモン、ガタノアを呼び出し、この世界を征服する事、なのですから」

ガタノア。前にアンタレスの口からその言葉が出たのを、レオは聞いたことがある。
あの時はガタノアが何かを知らなかったが、今分かった。
「それでは、さようなら!」
リザードンは天井をぶち抜き、飛び去っていった。


三人は、ブルムジムの奥で、先程のマターの言葉について話し合っていた。
「グレースさん、ガタノアというのは、どんなポケモンなんですか?」
「ガタノアは恐怖の神とも言われる、伝説のポケモン。周りの者の心を恐怖に陥れ、さらに、目が合ったものを石に変えてしまうとも言われている。まあ、これは真実ではないかもしれんが」
「師匠は、これからどうします?」
「うむ。やはり各地のジムリーダーに連絡を取る必要がある。何だったら、国際警察にも連絡した方がいいかもしれんな…」
だが、とグレースはレオの方を向き、
「この活動は、私とジムリーダーたちで行う。君のようなポケモントレーナーを危険に巻き込みたくないのでな。だから、何か起こらない限りは、この件は私たちに任せて欲しい」
「分かりました。無理しないでくださいね」
レオの言葉に、グレースとアサツキは頷いた。
そして、レオはジムを出、次の町へ向かう。



今回は本編が少々長いです。ギラティナ撃破、そして、イビルの活動目的がはっきりしました。本編が長いので、次回予告。と言ったものの、まだ決めてません。それでは、次回もお楽しみに!