二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 第八十九話 最後にして最強のジムリーダー ( No.234 )
- 日時: 2012/11/17 17:52
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: Dj5QpmsJ)
レオは、船に乗っていた。
フローズンシティの港から船に乗り、今はソルナシティに向かっている。
一日前のこと。
「ザントは、七年前に彗星のように現れた、凄腕のポケモントレーナーだ。当時不在だったソルナのジムリーダーに任され、それ以来、挑戦者に圧倒的な力を見せつけており、そのせいでウチセトの関門とも言われている」
グレースが説明しているのは、ソルナシティのジムリーダー、ザントという男。
「奴は人間不信でな。自分より強い者でないと、人の言葉に耳を貸そうとすらしない。だが実力は本物だ」
どのくらい強いかというとだな、とグレースは続け、
「今まで、初挑戦でザントに勝ったものは一人もいない、と言えば、その強さが分かるか?」
「!?」
レオとチヅルは目を見開く。
スミレとシオンも知らなかったようで、顔を見合わせている。
「明日、私はザントに協力を求めに行く。ソルナシティはここの港から船で行くのが一番だ。レオ君たちも、明日にでも行くといい」
という感じで、現在に至る訳だ。因みに、船の中にはチヅルはいない。
レオは窓から外を眺める。フローズンシティ付近の海で見た氷はもうなくなり、雪も完全にやんでおり、太陽さえ昇っている。
「やっぱり、雪が降ってるのはフローズンシティだけなんだな…」
フローズンシティの住民は大変だろう。
海から、額に角を生やした青い大きな魚のようなポケモンが飛び跳ねる。
オールガ、シャチポケモン。水・悪タイプ。
見ていると、オールガは一匹だけではなかった。群れのオールガが飛び跳ねる。
「オールガは別名水中のハンター、か。この船は大丈夫なのか?」
だが、特に心配はなかった。オールガは飛び跳ねて威嚇しているようだったが、襲っては来なかった。
続いて、海に浮かぶ岩場に、人魚のようなポケモンが二、三匹佇む。
人魚ポケモンのセルディー。シャウラが持っているポケモンだが、レオはそのことを知らない。
「海にもいろんなポケモンがいるんだな…」
呟いている間にも、船はどんどん進んでいく。
もうすぐ、ソルナシティに到着である。
ソルナシティ。
『シティ』とあるものの、見た感じはとても街といえるところではない。
いや、町ですらない。ここに合う表現とすれば、『村』が妥当な表現だと言えるだろう。
一応道は整備されている。公孫樹の木が道路脇に生え、静かな村の雰囲気を醸し出している。
家もそう多くない。フィアタウンよりは多いものの、見える家は木造のものばかりで、近代のコンクリートで作られたような家は見えない。
また、公園もある。この村に住んでいるのであろう小さい子供たちが、公園で遊んでいる。
レオはひとまずポケモンセンターに向かう。
ロビーには、何人かトレーナーであろう人たちがいた。
とりあえず、ちょっと休憩し、その後そのトレーナーたちと雑談を始めるレオ。
しばらく雑談し、大体の情報交換も終わったので、
「さて、ジムに向かいますか」
すると、
「ジムに行くのか?」
雑談していたトレーナーの一人が、レオに声をかける。
「ここのジムリーダーには半端な気持ちで挑むなよ。ソルナのジムリーダーは、ウチセトの関門。そう簡単には勝たせてくれないからな。何しろ、俺もまだ勝ってないんだ」
「オッケー。忠告ありがとう」
レオはお礼を言い、ジムに向かう。
ソルナジムは、他の今までのジムに比べるとずいぶん質素だった。
外見こそジムだが、作りは木造で、ジムの大きさも小さい。
ジムトレーナーも居なさそうな雰囲気だ。その時、
「お、レオ君。ザントに挑戦か?」
ジムから、グレースが出て来た。
「グレースさん! 協力は得られましたか?」
「一応な。あいつは強いぞ。覚悟して挑め」
それでは、とグレースは手を振り、行ってしまう。
レオは深呼吸し、
「お願いします!」
ジムの扉を開ける。
ジムの内部も質素だった。コロシアムがあるだけ。奥にあるはずのジムトレーナー室もない。
コロシアムしかないようで、隅にポケモン回復装置がある。
そして、コロシアムの向こう側に佇む男が一人。
その男の右腕は無かった。
その男の左足は義足だった。
青と黒を基調とした、何かの組織の制服のような服を着ている。年齢はカペラより少し若いくらいか。
「お前は、挑戦者か?」
その男が口を開く。
「はい。ジム戦に来ました」
レオはその男から発せられるオーラに圧倒されそうになりながらも、自我を取り戻し、返答する。
「そうか。似てるな…」
「はい?」
「お前の目だ。昔居た、とある男と目がそっくりだ。自分の世界を失った俺を救った、憎たらしい英雄にそっくりだ」
レオは何を言っているのかが分からなかったが、とりあえず話を聞く。
「俺の名はザント。俺は八年前、ある組織の長を務めていた。だが、俺のたった一つの失敗で組織は壊滅、俺は生まれ故郷のこの地に身を引いた」
ザントは淡々と話す。
「その時、俺に手を差し伸べてくれた男の目と、お前の目がそっくりだと言っているのだよ」
そして、
「俺は、初めて戦いに来る挑戦者には一度も負けたことがない。お前の実力、とくと見せてもらうぞ」
ザントは静かにボールを取り出した。
レオも気合を入れ、ボールを構える。
『ソルナシティジム ジムリーダー ザント 誰よりも悪を知る男』
さあ、遂にザントの登場です! しょっぱなからとんでもない強者設定が加えられていますが、これがザントなのです。有無を言わせないその強さは、俺の前作を読んだ人なら誰でも知っているでしょう。とにかく、彼はもの凄く強いのです。さて、次回は、遂にザント戦。それでは、次回もお楽しみに!