二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 番外編一話 彷徨える人魂 ( No.253 )
日時: 2012/11/18 16:33
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: Yry.8Fde)

番外編 最強と無敵の紙一重の差


レオがソルナシティに着く、その少し前。
とある男は、ソルナジムを訪れていた。
チャンピオンのグレース。
次第に勢力を拡大しているイビルの討伐の協力を申し出に来たのだ。
「失礼するよ」
グレースがジムの扉を開けると、そこには右腕を無くし、左足を義足にした最強のジムリーダー、ザントがいる。
「…チャンピオンか。俺に何の用だ」
面倒くさそうにザントは言う。
「君に協力してほしいことがあってね。イビル討伐に協力してほしい」
グレースの言葉を聞くと、他のジムリーダーと違ってザントはイビルに関わっていないのかと驚く人もいるかもしれない。
だがそうなのだ。ソルナシティは小さく、何もない町で、ウチセト本土から離れた島であるため、イビルの被害など全く受けていないのだ。
そして、ザントはグレースの言葉を聞くと、
「興味がねえな」
あっさりと切り捨てる。
「この町にイビルなど来ん。仮に来たとしても、俺が全力を以て叩き潰すだけだ」
だが、とザントは続け、
「どうしても協力してほしいと言うのなら、この俺を倒してみろ」
微笑を浮かべ、ザントはモンスターボールを取り出す。
「いいだろう。だが、チャンピオンの私に勝てると思うのか?」
「勿論だ」
最強のジムリーダーと、無敵のチャンピオンとのバトルが始まる。


ルールは四対四の勝ち抜き戦。
「まずは私から。暗闇に仄めく人魂、彷徨える勝利の魂を私へ誘え! 出でよ、ジバクン!」
グレースのポケモンは、奇妙な姿のポケモン。
一頭身の、体は赤紫がベースで、所々紫色と黄色の体。頭からは紫色の触覚が生えている。
ジバクン、人魂ポケモン。ノーマル・ゴーストと、かなり珍しいタイプだ。
そのポケモンを見るなり、ザントは露骨に舌打ちする。
「また面倒くさいポケモンを出して来やがって…出て来い、ヘルガー!」
ザントの一番手は例のヘルガー。
「いくぞ、ヘルガー、放電だ!」
まずはヘルガーが動く。周り全体に電撃を撒き散らす。
だが電撃は、ジバクンの体をあっさりとすり抜けてしまう。
「やはりか」
ザントはもう一度舌打ちする。
「やはり知っているようだね。こいつの特性は不思議な守り。効果抜群の技、つまりは悪タイプの技しか効かん」
そう。
ジバクンはタイプの関係上、弱点は悪タイプのみ。
ザントが悪タイプのエキスパートだったことが幸いだろうか。
「まさかの影踏みかと思ったが、まあ有り得んな」
「そりゃそうだ。では行くとしよう、ジバクン、襲撃!」
ジバクンは一瞬でヘルガーの後ろに回ると、触覚を叩きつけてヘルガーを吹っ飛ばす。
「続けてスプラッシュだ!」
さらにジバクンは触覚に水をまとわせ、ヘルガー目掛けて叩き付ける。
「ヘルガー、来るぞ。回避!」
ヘルガーは咄嗟に横に逸れ、スプラッシュを避ける。
「そこだ、ダークロアー!」
ジバクンの技が尽きた一瞬の隙をザントは見逃さない。
咆哮と共に悪意に満ちた波動を放ち、確実にジバクンにダメージを与える。
しかし。
「それを待っていた」
勝ち誇るようにグレースは言った。
ザントには何を言っているのか理解できないが、何か嫌な予感がする。
そして、ザントが次の指示を出すより速く、グレースはジバクンに指示を出す。

「ジバクン、金縛り!」

ジバクンは赤い瞳でじっとヘルガーを見据える。
たったそれだけ、それも四秒程度の事だったが、
「…ッ!」
歯噛みするザント。それもそのはず、
「まあ知っているわな。金縛りは相手の直前に出した技をしばらく封じる技。これでお前のヘルガーはこちらへのダメージソースはない」
加えて、とグレースは続け、
「ここのジムのルールは交代禁止だったはずだ。これでお前のヘルガーの役割は終了だ」
勝ち誇ったようにグレースは言う。
「さあ、ジバクン、ギガスパーク!」
ジバクンは超電圧の電気の砲弾を作り上げ、ヘルガー目掛けて撃ち放つ。
「くっ、ヘルガー、避けろ!」
ヘルガーは後ろに跳び、電撃弾を避ける。
「だったら金縛りの効果が切れるまで凌げばいい。ジバクンというポケモンは耐久が低い。あと一発撃ち込めば勝てる」
「私のジバクンからは逃げられないさ。ジバクン、襲撃!」
襲撃はヘルガーとの距離を一瞬で詰め、触覚を振るってヘルガーを吹っ飛ばす。
「さらに襲撃!」
吹っ飛ばされたヘルガーより先回りし、再びヘルガーに打撃を喰らわせる。
ヘルガーが地面に叩きつけられる。何とかして起き上がるヘルガーだが、
「とどめだ! ジバクン、スプラッシュ!」
ジバクンは猛スピードでヘルガーに接近、水をまとった触覚を振りかぶる。
しかし。

「引っかかったな。ヘルガー、地獄の炎!」

ヘルガーは顔を上げると、襲い来るジバクン目掛けて、赤黒い地獄の業火を放つ。
悪タイプの技しか効かないはずのジバクンが、地獄の炎に焼かれる。
「ッ!? なぜだ、なぜジバクンがダメージを受けている!?」
たった一瞬で、完全に形勢逆転。
「馬鹿が。地獄の炎は、貰い火や頑丈などの特性を無効化する。不思議な守りも同様。地獄の業火は、すべてを焼き尽くす」
地獄の業火に、小細工など効かない。
炎に焼き尽くされたジバクンは、戦闘不能となって倒れていた。
「よくやったジバクン。休んでいてくれ」
グレースはジバクンをボールに戻し、次のボールを構える。
「これは一本取られたな。ジバクンの特性を過信してはいけないな。勉強になったよ」
グレースの表情に変化は見られない。余裕が浮かんでいる。
「勝負はこれからさ。ここから、私の勝利を見せてやろう」



復かぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁつ!さあお待たせしました、3ヶ月ぶりにパーセンター復活です。3ヶ月も待たせてしまい、読者の皆様、本当に申し訳ない。あ、パーセンターのこと知ってる、って人が居たら、是非コメントくださいね。さて、しばらく番外編。最強と無敵の戦いです。それでは、次回もお楽しみに!