二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 第百二十六話 ガタノア ( No.309 )
- 日時: 2012/11/25 00:09
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: Dj5QpmsJ)
ザントはサザンドラから飛び降りた。
「レオ、乗れ。外壁をつたって頂上へ向かうぞ」
「は、はい。でも、さっきの下っ端を——」
そう言ってレオは振り返るが、既に下っ端はネメアを残して去っていってしまった。
「下っ端に構う必要はない。マターのみを潰せば、それでいい」
そして、ザントはモンスターボールを取り出し、ネメアに向かって投げる。
ボールの中にネメアは吸い込まれ、すぐに赤いランプは止まる。
「一時的な保護としての捕獲だ。イビルが壊滅次第、ネメアをどこか安全な場所へ解放する。ネメアの力は、人が使うには危険すぎる」
それはガタノアも同じことだ、とザントは付け加える。
「さあ、行くぞ。チャンピオンが既にマターと接触している可能性もある」
「はい、行きましょう」
まずはレオがサザンドラに飛び乗り、その後ザントが気絶したウェイガを負ぶって飛び乗る。
そしてサザンドラは飛び上がり、頂上を目指して突き進む。
グレースはメタグロスに乗り、頂上へ到達する。
頂上にはいくつもの柱がそびえ立ち、その奥には小さな神殿のようなものが建っている。
その神殿の前に男はいた。
この騒動の全ての元凶。
イビルの総大将。
マター。
マターは振り返り、グレースを認識すると、不気味な笑みを浮かべる。
「これはこれは、チャンピオン様。お一人でご苦労様です」
その右手には機械の爪『ゲート』が、左手には機械『リモコン』が付けられている。
「貴様の野望もここまでだ。ウチセト地方の無敵のトレーナーとして、私は全力を以てお前を止めるのみ」
対するグレースは、表情を崩さず、強い口調で言葉を返す。
「無理ですよ」
対して、マターはせせら笑う。
「貴方は実に惜しかった。あと一分、いや、あと三十秒早く来ていれば、私の計画を止められたというのに」
マターの口調に、だんだんと力がこもっていく。
「たった今、『ゲート』と『リモコン』の最終調整が整いました。テラージュエルも埋め込み済みです」
マターは『ゲート』を掲げてみせる。『ゲート』の手の甲の部分には、ガタノアを呼ぶ鍵となる黒い宝石が填まっていた。
グレースの目が細くなる。
二つのモンスターボールが取り出され、マニューラとラティオスが呼び出される。
メタグロス、マニューラ、そしてラティオス。
この三体を相手にすれば、普通の人間なら震え上がってしまうところだが、しかし、マターは臆さない。少しの動揺すらしない。
「覚悟しなさい。恐怖の神、ガタノアが、蘇ります!」
マターは顔を歪めて叫び、『ゲート』を起動させる。
空間に亀裂が走り、その亀裂がどんどん大きくなり、異次元とのトンネルが出来上がる。
「お前たち、攻撃用意」
グレースの言葉と共に、三匹が攻撃態勢に入る。
そして、その空間の裂け目から、何かが現れる。
紫の三日月形の模様のある、白い骸骨のような頭。ピンク色の背中は山のような形に盛り上がっており、紫の不可思議な模様が入っている。
足は無く、手は幽霊のように垂れている。尻尾も幽霊のように細い。
紫色の目には、怒りと狂気が灯っている。
「おおお……。これが…ガタノア…美しい…」
マターは不気味な笑みを浮かべ、感嘆の声を上げる。
対して、グレースは迷わなかった。
「メタグロス、メタルブラスト! マニューラ、氷柱パンチ、ラティオス、龍の波動!」
メタグロスは強大な鋼エネルギーを放ち、マニューラは拳を振るって大きな氷柱を飛ばし、ラティオスは龍の力を凝縮した波動を放つ。
三匹の必殺技が、ガタノアへ直撃する。
爆音と共に煙が巻き起こるが、両者ともに表情は変化しない。
グレースは目を細めて一点を見据え、マターは相変わらず不気味な笑みを浮かべたままだ。
そして、砂煙が消えると、
ガタノアは、特に体勢を崩すこともなく、その場に浮かんでいた。
「…ッ」
僅かにグレースの顔が引きつる。
「今です!」
すかさず、マターは『リモコン』をガタノアに掲げた。
手慣れた手つきで、ガタノアに洗脳の電波を浴びせていく。
五秒程度で、その操作は終わり、『リモコン』のモニターが点滅する。
それは、ガタノアがマターの手中に渡ったということを意味していた。
「フ」
マターの不気味な笑みから、声が漏れる。
「フフフフ」
マターの笑い声は止まらない。次第に大きくなっていく。
「フフフフフ…ハハハ…ハハハハハハハハ!」
マターは高らかに、狂ったような笑い声を上げる。
「ガタノアは私の者となった! これで私の勝ちだ! この力があれば、私を止められる者など存在しないのだ!」
マターとガタノアを見て、初めてグレースの表情に明確な焦りが見られる。
そして、ガタノアも大きく咆哮を上げる。
「peghebjeghuergn bvpeber epbgouytouibsuiu!!!」
その咆哮は人間が怒鳴っているようにも聞こえるが、意味は全く理解できない。
そして、グレースが動くより先に、マターは動いた。
「ガタノア! この人間を始末しろ!」
ガタノアの目が、赤色に妖しく光る。
グレースは、そのガタノアの目を見据え、
グレースの意識は、そこで途絶えた。