二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 第百三十七話 最後の一手 ( No.327 )
日時: 2012/12/22 22:01
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: 9Qe5KE35)

ガタノアは狂ったような咆哮を放ち、あたり一面に黒い光線を撒き散らす。
残っているそびえ立つ柱は次々と崩れ、奥に建つ小さな神殿も破壊されていく。
そして当然、余波はレオたちを目掛けても飛んでくる。
「!? 出て来い、バフォット!」
レオは咄嗟に、レオの手持ちの中で一番堅いバフォットを出し、光線の余波を防ぐ。
だが、そのバフォットでさえ大きく後ろへと押し戻されるほどの威力。
「…チッ」
ザントが舌打ちし、口を開く。
「ここにいる今の戦力でガタノアを鎮めるのはほぼ不可能だ。解決策はただ一つ。ガタノアと対をなす、平和を司るポケモン、ロイツァーを呼び出すしかない」
淡々とザントは話を続ける。
「神話によれば、ロイツァーとガタノアは互いの力を抑制する力を持っているようだ。どちらかが暴走すれば、もう片方はその力を鎮める役割を持っているという。つまり、遅かれ早かれロイツァーはこの場に現れるはずだ」
だが、とさらにザントは続ける。
「いつ現れるか、それだけは俺にも分からんのだ。ロイツァーが現れた時には既に、こちらの戦力が尽き、俺達が重傷を負っている可能性だってある。最悪、石化される可能性もな」
悔しいが、もはや打つ手はほとんどない。
今出来ることは、少しでも時間を稼ぎ、ロイツァーを待つこと。ザントはそう告げる。
しかし。
レオには、一つの考えがあった。
ガタノアのすぐ横で石化し、立ち尽くしているマター。そして、その横に投げ捨てられている、『ゲート』。
そして、レオの手には、ロイツァーを呼び出すカギとなる宝石、ピースジュエル。
レオは迷わなかった。
「ザントさん、ウェイガさん。僕に考えがあります」
レオの言葉に、二人は振り向く。
「二人は出来る限りガタノアの注意を引き付けておいてください。その間に、僕がこれを使います」
レオはピースジュエルを取り出し、二人に見せる。
「…まさか、お前」
ザントの表情がわずかに引きつるが、レオは気にせず続ける。
「ええ、そのまさかです」
レオは一拍置き、

「二人がガタノアを引き付けてくれている間に、僕が『ゲート』を使い、ロイツァーを呼び出します!」

レオは、マターが『ゲート』を使っているところを見たことがあるので、電源の位置などは把握している。
加えて、マターのことだ。ガタノアを呼び出した後は、その力に酔いしれ、特に『ゲート』をいじったりはしていないだろう。
つまり、レオの考えはこうだった。
『ゲート』にピースジュエルをはめ込み、電源を入れれば、あとはそのままロイツァーを呼び出せる。
「…分かった。やれることはやってみよう。だが、俺の今の戦力はモアドガスだけだぞ。それでどこまで持ちこたえられるか」
「それなら、私にお任せを」
ザントの言葉にウェイガは応え、懐から何かを取り出す。
「これは、私がジョウト地方で買った秘伝の薬。一体だけだが、どんな傷をも治し、体力も完全回復できる薬。この薬を、サザンドラに使いなされ」
「…すまないな」
ザントはサザンドラを出し、薬を与える。
たちどころにサザンドラの腹の傷口は閉じ、体力も戻っていく。
その時、もう一発光線の余波が飛んでくる。
バフォットは素早く反応し、光線を受け、レオたちを守るが、その光線の威力が尋常ではない。
バフォットでも、もう一撃喰らえば持たないだろう。
「もう時間がない。お願いします! 行きますよ!」
その言葉と共に、レオは地を蹴って跳びだす。
ガタノアの意識がレオに行く。ただちにレオを攻撃しようと動くが、
「ガタノア、俺が相手だ! モアドガス、サザンドラ、大文字!」
ザントの指示で、モアドガスとサザンドラは大の字型の炎を放ち、ガタノアを焼いていく。
それでもガタノアの意識はまだレオに向いている。炎に焼かれながらも、黒い光線を放とうとするが、
「させぬ! マカドゥス、ダイヤブラスト!」
素早くマカドゥスが煌めく爆風を放ち、ガタノアの体勢を崩し、ガタノアがレオを攻撃するのを防ぐ。
ようやくガタノアの意識がザントたちに向き直る。ザントたちを邪魔者だと認識したのだ。
「来たぞ! 全力で迎え撃て! モアドガス、危険な毒素! サザンドラ、龍の波動!」
「分かっておる! マカドゥス、十万ボルト!」
それぞれのポケモンが、強力な技を放つが、ガタノアは黒い光線を放ち、容易く技を破壊し、さらに黒い光線を放つ。
「チッ、サザンドラ、クリムゾンエイト!」
対してサザンドラは花弁のような八つの真紅の光線を放ち、黒い光線を相殺。
その間に、レオはガタノアの脇を走り抜け、石化したマターの元まで接近。
遂に、『ゲート』を掴んだレオは、埋め込まれた黒い宝石、テラージュエルを取出し、そこにピースジュエルをはめ込む。
ピースジュエルは、すっぽりとくぼみに填まった。
「よし、あとは電源を…!」
レオは『ゲート』を手にはめ込み、電源ボタンを押す。
だが、その時。
ガタノアが、急にレオの方を振り向いた。
「…ッ! レオ殿!」
ウェイガの叫びに反応し、レオは振り向いたが、既に遅かった。
ガタノアはレオ目掛けて、まさに黒い光線を放つところだった。
「チッ! サザンドラ、レオを!」
サザンドラは、レオを助けるために飛ぶが、間に合わない。
ガタノアの黒い光線が、口から放たれた。
「うわあああっ!」
レオには避ける余裕はなかった。ただ身を屈め、その場に蹲るしかなかった。
しかし。
奇跡というものは、最後まで諦めなかった者に起こるものである。

「ファマイン、鉄壁!」

突然、モンスターボールが飛び、そのモンスターボールの中から、レオの前に、ポケモンが現れた。
両腕を広げ、ガタノアの黒い光線を一心に受け止めている。
そのポケモンは赤い鋼のボディを持ち、頭と肩から炎を噴き出している。
そして、
「レオ、大丈夫?」
後ろの方から、聞きなれた声が響き渡る。
最高のタイミングで、チヅルが駆け付け、レオに駆け寄る
さらに、
「タテボーシ、ヘドロウェーブ!」
キラのエース、タテボーシが現れ、ヘドロの波を放ち、ガタノアにぶつける。
「だらしねえぞ、レオ! しゃきっとしろよ!」
後ろから聞こえるのは、キラの声。
ガタノアは吼えるが、チヅルとファマインはレオの前から動かずにガタノアを見据え、キラとタテボーシはザントたちに加わる。
「皆、ありがとうな! これでいける!」
今度こそ、レオは『ゲート』を起動させる。モニターから、指示が流れる。
あとはこの指示に従いつつ、『ゲート』で空間の裂け目を作り出すのみ。
そして、
「よし、来た!」
レオは『ゲート』を空間にかざし、爪で空間をひっかいていく。
空間に、少しづつ亀裂が入っていく。