二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 第百三十九話 終焉 ( No.329 )
- 日時: 2016/06/28 13:18
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: 6/orvAdG)
- 参照: グロってほどでもないですが、死の描写が苦手な方はお気を付け下さい
ガタノアの暴走は止まった。
マターが敗れ、最後の作戦も破綻したことで、イビルの壊滅は確実となった。
ソルナシティには、既に国際警察が到着している。七将軍、そしてマターも、逮捕されることになるだろう。
「さて、事態も解決したことだし、一件落着だな」
「とりあえずは、ここから降りようぜ。ここの雰囲気は俺には合わねえよ」
レオの言葉に続け、キラも口を開く。
「そうだね。ガタノアはいなくなったけど、私もここは好きじゃないな」
「私もです。何だか重々しい感じがしますね、ここは」
「だね。それに皆、疲れてるだろうし」
チヅル、フウカ、シアンの意見も一致し、最後の戦いの地を立ち去ろうとする五人。
しかし、
「待つのだ」
ウェイガがそれを遮った。
「事態は、もう少しだけ、解決していないようだぞ」
そして、ウェイガは奥を指さす。
その先にいるのは、
「待つのだ、マター!」
「貴様、何をするつもりだ」
グレースとザントの声が響く。
六人がそちらを見据えると、元の体を取り戻したマターが立ち、グレースとザントと対峙していた。
マターの後ろに広がるのは、遠く続いていく空。
つまり、マターは崖っぷちに立っているのだ。
「…消えるのですよ」
落ち着きと嘲りを取り戻し、マターは呟く。
「…何?」
「私は、貴方のような者たちに捕まり、国際警察に送り届けられるつもりはないのですよ」
「待て、早まるな! 今からなら、まだやり直せる。マター、お前の使命は、今までの罪を償い、更生することだ。お前は道を誤っただけだ、お前は十分な才能を持っている。お前は、まだやり直せる」
「チャンピオンよ、貴方は思い違いをしていますね」
グレースの言葉を、マターは一蹴する。
「私は、罪を償うつもりなど全くありません。今までやってきたことに、罪悪感など全くないのですよ」
「…貴様、ふざけるなよ」
マターのその言葉に、ザントは低い声で言い返す。
「貴様がやったことが、どれだけ重いことか分かっているのか。異次元への扉を作り、そこから伝説のポケモンを呼び出すなど、決してしてはいけないことだと、分かっているのか」
グレースと違い、ザントの言葉には、一切の容赦がない。グレースのような優しさが全くない。
そして、そんなザントの言葉を受けても、マターは怯まない。
「そんなことを言われる筋合いはありません。貴方たちにも、あるはずです。自分で正義だと思ってやったことが、誰かを傷つけていることがね」
マターは淡々と続ける。
「そして、それは、『悪』なのではないですかね。例え本人が正しいと思っていようと。人のためにしようと思ってやったことだとしても」
グレースにはともかく、その言葉はザントの心に突き刺さる。
そして、マターはさらにそれを食い込ませていく。
「ソルナのジムリーダー、貴方はかつて、大きな組織を築いていたそうですね。組織の活動の中で、自分の正義のために、他人を傷つけたことはありませんか?」
ザントが小さく舌打ちする。マターの目はグレースに向く。
「チャンピオンよ、貴方はウチセト最強のトレーナーとして、さまざまな活動をしてきたことでしょう。その中で、ウチセト全体をよりよくしていくためと判断し、一部の人間を傷つけたこともあるのでは?」
マターの言葉も、また正論だった。
「人間は、気づかないうちに人を傷つけたり、罪を犯したりもしてしまうのです。ですから、貴方たち、いや、それだけではない、この全世界の住人が罪人なのですよ」
マターの声は止まらない。淡々と、しかしはっきりと、言葉を紡いでいく。
「そう考えてみれば、罪人が罪人を捕まえ、裁くなど、あり得ないことなのです。ですから私は、逮捕されることを拒むのです。自分と同じ罪人に捕まるくらいなら、私は自分の信念を最後まで貫き通し、消えることを選ぶのです」
その時、遺跡全体が大きく揺れた。
ロイツァーとガタノアの力が途絶えたことにより、その役割を終えた遺跡が、消滅しようとしているのだ。
床が割れ、神殿が崩れていく。
「…ッ!レオ君たち、ここは危険だ、先にここを脱出しろ! マター、とにかく、お前も来い! ここにいては死ぬだけだぞ!」
グレースはレオたちに指示し、マターに向き直る。
そして、マターは両手を広げ、天を仰いだ。
「私が消えても、『悪』は決して消えることは無い。それをよく覚えておきなさい」
「チッ、マター、待て!」
ザントが一歩踏み出すが、遅かった。
マターは既に、後ろへと体を傾けていた。
「さらばです」
勝ち誇ったような笑みを浮かべ、マターは背中から崖へと落ちて行った。
「マター!」
ザントがサザンドラを出し、マターを追おうとするが、遺跡がついに限界を超え、崩れ出した。
マターの姿は、瓦礫に遮られ、そして、完全に見えなくなった。
ソルナ上空の大遺跡は消滅した。
その後、国際警察などがソルナシティやその周囲の海で大規模な捜索を行ったが、マターが発見されることは無かった。
そして、イビル七将軍は全員ジムリーダーに捕らえられ、身柄は国際警察に引き渡された。
ザントがソルナシティの住人を全員避難させていたため、重傷を負った人や死人は一人もいなかった。
マターの最後の行動が唯一の心残りだが、イビルは完全に壊滅し、イビルの騒動は、ようやく終わりを告げた。
「さて、皆、お疲れ様」
グレースが全員に言葉をかける。
「マターを捕まえられなかったのが残念だったが、イビル問題はこうして解決した。例を言う」
そして、グレースはレオたちの方を向く。
「さあ、君たちはこれからやるべきことがあるね。ポケモンリーグウチセト大会が、四日後、ついに開催される」
ポケモンリーグは、すべてのジムバッジを集めた者だけが出場できる、ポケモンバトルの最高峰の大会だ。
ポケモントレーナーは、ポケモンリーグに出場し、優勝するために、各地のジムを回るのだ。
「場所はここから少し北。海に浮かぶ島、イツク島だ。全員の健闘を祈っているぞ」
イビルの一連の騒動は解決した。
そして、最後の関門、ポケモンリーグが、遂に開かれる。
さて、イビル編も完結したことですし、あとがきを復活させていきます。イビル壊滅にしては、少々後味が悪い感じもしますが、とりあえずマターの野望は潰れ、ウチセトの平和は守られました。マターの言葉は、あるものを参考に書かせていただきました。そして、次回からは、最終章、ポケモンリーグ編が始まっていきます。場所は海に浮かぶ島、イツク島。モデルはもちろん厳島です。この小説のポケモンリーグは、アニメ形式でいこうと思います。それでは、次回もお楽しみに!