二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re:最終話 後夜祭 ( No.393 )
- 日時: 2013/02/01 00:06
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: a5DdqbyH)
観客席から、スタジアムが揺れるほどの大声援が巻き起こる。
最高の戦いに見事勝利したシュウヤ、そのシュウヤをもう少しのところまで追い詰めたレオ。
激戦を繰り広げた二人を、観客たちが褒め称える。
シュウヤが、レオの元へと近寄ってくる。
「最後まで勝敗の分からなかった、いいバトルだった。今までのバトルの中で、一番楽しませてもらったぜ」
シュウヤは笑顔で手を差し出す。
「僕の全力を以てしても、シュウヤさんには敵いませんでした。いい経験をさせていただきました。ありがとうございました」
シュウヤのその手を、レオは握る。
「絶対に優勝してくださいね。シュウヤさんなら、出来ますよ」
「勿論だぜ。お前たちの優勝への思い、俺が受け継いだ」
そして、レオは最後にもう一度シュウヤに向かって礼をし、スタジアムを去っていく。
その表情に、悔しさは無かった。あったのは、激戦を終えた爽快感。
そして決勝戦。
予選第二位と予選第一位が激突した、ポケモンリーグウチセト大会最後の試合は、もつれあった末、最後はラグラージのハイドロカノンでシュウヤが勝利を決めた。
『決まったああああああ! ウチセトポケモンリーグ大会、並み居る強者たちを撃破し、見事優勝に輝いたのは、シュウヤ選手だあああああ!』
実況の叫びとともに、観客席のボルテージも最高に達する。
レオは三位。悔しさも無いと言えば嘘になるが、初出場で三位というのは十分な結果だ。
「レオ、この後は表彰式だぜ。行ってこいよ」
「緊張しちゃだめだよ。インタビューとかされても、いつものレオでね」
キラやチヅルに見送られ、レオは観客席を出る。
その途中。
「よう、レオ」
「三位入賞、おめでとう」
レオの前に現れたのは、ザントとグレース。
「このチャンピオン様がしつこく俺を誘ってくるから、わざわざ来たんだ。テレビで見れたのに、面倒くせえ」
「ハハッ、そういうなザント。現地に来たことで、学べることもあるだろう?」
グレースの言葉に、ザントは舌打ちする。なんだかんだで、この二人も仲は良いのだろう。
「でも、三位ですよ。優勝は出来ませ——」
「何言ってんだ、バカタレ」
レオが言葉を言い終わる前に、ザントが告げる。
暴言ではあるが、その言葉は友達に対しての冗談のようなニュアンスだった。
「お前、まだトレーナーを初めて、まだ一年も経ってねえだろうが。あのシュウヤは、十年以上トレーナーやってんだぞ」
珍しく、ザントが冗談を言った。続けて、グレースも口を開く。
「初出場で三位は、とても優秀な成績だ。自信を持って表彰されて来い」
「そうだ。十分威張って帰れるぞ」
ザントがにやりと笑う。ザントがバトル以外で笑ったのを、レオは初めて見た。
その時、
『これより、表彰式を行います。入賞した方は、中央スタジアムまで来てください』
アナウンスが鳴った。
「それじゃ、行ってきます。ありがとうございました!」
レオはザントとグレースに礼を言い、スタジアムへと向かう。
表彰式。
賞賛の音楽が流れ、チャンピオンのグレースから、一人づつに賞状とメダル、一位のシュウヤには勝旗も授与される。
ポケモンリーグ一位になると、ジムリーダーや四天王、チャンピオン公式的に挑戦し、勝利すればその地位に立つことが出来るそうだ。
レオの首にかかったのは、美しく輝く、銅のメダル。
そして、入賞者及び、健闘を見せた選手たちへと、たくさんの花火が上がる。
ポケモンリーグ・ウチセト大会は、たくさんの名勝負を生み出し、全日程を終えた。
「お疲れ様でした」
三人でいたレオとチヅル、キラのところへ、フウカがやってきた。
手には五つのヒウンアイスを抱えている。
「どうぞ、貰ってください」
フウカは三人に、アイスを一つずつ渡していく。
「残りの一つは?」
「シアンさんにあげようと思って。先に貴方たちを見つけたので、渡しに来たんですよ」
キラの言葉に、フウカは微笑む。
「フウカは、この後どうするんだ?」
「まずは、昔に飛び出した屋敷に、久しぶりに帰ってみようかと思います。両親にも元気な姿を見せてあげないと」
レオの言葉に、フウカは笑顔で答える。そして、
「アイスが溶けちゃうので、シアンさんを探してきます。それじゃ、さようなら! また会いましょう!」
フウカは笑顔で手を振り、人ごみの奥へと走り去っていった。
「さて、俺達もそろそろ帰ろうか」
「ミサゴシティ行きの船も、もう少しで出発するみたいだよ」
レオたち三人も、港へと歩き出す。
人で混雑している波止場で、三人はシアンに会った。
右手にはヒウンアイス。フウカは無事シアンにも会えたようだ。
「皆、お疲れ様」
無表情だが、シアンの口調には優しさがこもっていた。
レオたちもシアンへと労いの言葉を掛け、
「シアン、このあとどうするの?」
「ポケモンたちは強くなったけど、トレーナーの自分がまだまだ弱いまま。だからまた別の地方で旅を続けるよ」
よく見ると、シアンの持っている船のチケットには、『アサギシティ行き』と書かれていた。
ウチセト地方ではない、別の地方の町の名前なのだろう。
「そろそろ船が出るから行くよ。元気でね」
そして、シアンは三人に手を振り、船へと乗り込んでいった。
また、レオたちも、ミサゴシティ行きの船へと乗り込んでいく。
ここまで来るまで、いろんなことがあった。
自分の家で、初めてのポケモンをもらった。
その次の道路では、初めてモンスターボールを投げ、その手でポケモンをゲットした。
戦ったジムリーダー達は、全員がかなりの強敵だった。
特に五人目のアサツキ、八人目のザントは、あり得ないほどの実力を持っており、一度は敗れたこともあったが、最後には勝利を手にすることができた。
さらに、悪組織『イビル』との戦い。
リゲルを始めとする七将軍と次々と戦ったし、イビルの総大将、マターはザントやグレースにも並ぶ、怪物だった。
恐怖の象徴、ガタノアがこの世界へと呼び出され、もう少しで世界が破滅の危機に晒されたが、レオたちは奮戦し、世界を救った。
さらに、キラやチヅルだけでなく、たくさんの仲間と出会うことができた。
フウカやシアンはよきライバルだったし、ナシカも強かった。ウェイガは知識に富み、困ったときにいつでも頼れる人だった。
そして、ポケモンリーグでは、数々の名勝負を見、みずからも刻むことができた。
シュウヤを始めとする、数々の強者たちと戦った。
この旅を通し、レオは、最高の思い出を手にすることができた。
ミサゴシティ。
ここからもう少し歩けば、故郷ナデシタウンに到着する。
「しっかし、旅っていうのは思ったよりもすごい楽しいものだったな」
「ああ。俺も最高の思い出を作ることができたぜ」
「私のポケモンや、それを支えてくれたお父さんやお母さんたちのおかげだよね」
そして、ついに三人はナデシタウンへと帰ってきた。
「それじゃ、また明日会おうぜ」
「おうよ。今日はゆっくり休むとすっか」
「皆、お疲れ様だね」
三人は、それぞれの家へと帰っていく。
(やっと帰って来たぞ、僕の家!)
家の中からは、夕食のいい匂いが漂ってくる。
心を躍らせながら、レオは扉を開いた。
「ただいま!」
これにて、『ポケットモンスター 平和の光と恐怖の闇』、堂々の完結です。いやー、長かったですね。第一作目で挫折したゲームのような冒険物を最後まで書くことが出来て、僕は満足です。読者のみなさん、ここまで読んで下さり、ありがとうございました。あとはエピローグです。それでは、お疲れ様でした!