二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

十頁 バレル島 —嫉妬— ( No.37 )
日時: 2011/09/09 17:21
名前: 蓮華 (ID: DoyHUJg.)
参照: 男装少女を永遠に愛す!!


「さ、アクマは何処かなぁ」

深く生い茂った霧がかる森を一人でズカズカと進む少女___アリス・クイーン。
仲間と逸れたのだが、アクマ破壊してれば逢えると思い、アクマを探して森を歩いている。



不意に、圧し掛かる重量。

ほんの少し、だけど気になる重さが背中にかかる。
何か、が乗っている重量ではなく、本当に空気のような些細な重さ。
それがアリスにはつっかかり、その場で足を止めた。
辺りを見回しても、アクマらしき影があるわけでもなく、人影がある訳でもない。

「うふふ、上よ、上」

真上___上空からした声にアリスは顔を上げる。
其処には水玉の傘をさした深い蒼色の髪をなびかせる大人びた少女がいた。
小さなティアラを頭の上に乗せ、椅子でも在るかのように悠然と座っている。

「貴女、可愛いのね」
「は?」

笑ったままの少女が、次に言った台詞にアリスは疑問符をはいた。
見下す少女は笑っていた表情を崩し、目を開く。

「名前、何て言うの?私はティアラ・モード」
「...アリス・クイーン」
「アリス?まぁ、素敵!私、本読んでたの」

手を優雅に合わせ、再び笑うティアラ。
見ていればただの幼き少女だが、アリスは油断する気はない。

「夢から抜け出して、普通に過ごしたのよねぇ......」

ティアラの周りの空気が、ほんの僅かに歪む。
エクソシストとしてアクマと戦ってきた経験が、そう、捕らえた。
再び、圧し掛かる重さ。空気のような些細なモノではなく、「人」の重さ。

「許せない、普通に過ごすなんて。私はあんなに辛かったのに」
「......貴女の私情を押し付けないでくれる?」
「うふふ、嫉妬するとね、相手をオトシタクナルノ。地の底、いいえ地獄にかしら」

彼女が一言一言紡ぐたび、合図のように重量が増えていく。
ティアラは再び笑った。さっきとはうって変わった、おぞましい笑みを。

「憎いから、オトシテアゲル」
「......ぐっ......あぁっ..........!!」
「声が出る内は呻きなさい、その内出なくなるから......」

うふふふふふ、と愉しむ様に笑い続ける。
呻き声を聞くのが愉しくて仕方がない笑い声。
地面に倒れてしまったアリスには真上にいるティアラの表情は判らない。
ミシ、と骨の軋む音。重さが何倍にも膨れ上がって、耐え切れなくなっている。
もはや、「人」は「鉄球」へと化していた。

「苦しんで、死んでいって。私にはそれが快感なの」
「こ......のっ.....S......っ......!!」
「なんとでも...っ!!?」

ふと、軽くなった。
驚いたアリスはティアラを見る、すると、か細い手首に刺さった、針。
細い細い、しかし、月光と影で存在を強調する、針。

「やっと見つけた、あれ、ユウ君は?」
「澪、あれ、ユウは?」

アリスは針を飛ばした本人を確認し、澪は探していた少女を確認し、
そしてお互いにまだ確認していない人物の名前を出した。
そんな二人の間の向こう側で、揺れる草。

「このっ......くそアマ!!」
「「は?」」

現れて突然そういうと神田は疑問符を浮かべる二人の間を通り抜け、ティアラに斬りかかった。
ティアラは驚愕を顔に浮かべるも、能力を発動し、神田を地におとした。
その光景は、まさに可笑しな光景で、二人は少し笑ってしまった。

「ま、けるかよ!!」
「わ」

神田はアリスよりは軽いがそれでも重いティアラの能力を振り切り、ティアラに再び斬りかかる。
彼女の腕が、切り口から赤黒い血を出しながら、ポテリ、と落ちた。

「わ、グロい......」
「まだ動いてるよ」

アリスは指をひっくり返したカブトムシの様にバタバタと動かす手に近付き、イノセンスを構えて...

「えいっ」

と掌の真ん中に刺した。
手はブルブルと震え、刺された所から血を出すと、パタリと果てた。
手の最期を見届けると、アリスは視線を神田へ戻す。

「五体満足じゃないと、ダメじゃない」
「お前、アクマじゃねぇのか」
「いいえ、元はアクマよ?でもね私は昔、ダークホースというモノに出会ったの。そうね、表現するなら貴方達がイノセンスに適合する様なものかしら。それで私はアクマの姿にならない体と、強大な力を得たの。あと」

彼女の腕をボコボコと温泉が湧くように肌色の塊が盛りだしてくる。
それはやがて凸凹をつくり、指の形を作り、斬りおとされた腕を元に戻した。

「再生能力も、ね」