二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- 十六頁 彼女が愛した、 ( No.58 )
- 日時: 2011/11/01 19:54
- 名前: 蓮華 (ID: 2zWb1M7c)
- 参照: 生は問いで、死は答えである。
「“ジェミニ”・・・?」
その単語に疑問を持ち僕が前に立った安央衣を見る。
そこには、目を見開き唯クオリを見る少女が座っていた。
「何・・・で、何で、“ソレ”を知ってる・・・?」
「アタシだけじゃないよ、其処にいるアリスと神田に、澪も知ってるわ。そして、今此処にいる皆が知っちゃったわね。」
アハハ、と両手を同じ高さに上げこの場にいる全てを指す様に広げるクオリ。
その両手に、ダン、と乗ったのは月とは相対する太陽のような瞳の少女。フワリと浮く金髪はその軽さを表していた。
一瞬の、止まったように見えたその出来事は。少女がその目を僕に向けた事によって動き出した。
「見つけた、“ジェミニ”。」
「あァもうっ「原罪」は私達の!邪魔しないでよ!」
ブン、と腕を真上に上げてクオリは僕との距離を一気に縮めクラウン・クラウンに手をつき僕の顔を蹴った。
いかにも身軽そうなその外見とは裏腹な脚力の凄さに僕は驚く。
リナリー達はまだ彼女の能力で何かに吊り上げられたように両腕をあげたまま。
「“十四番目”、其処退いてくれる?」
「・・・嫌です、安央っ!!?」
「あはは、良い気分ね。“十四番目”でも私に勝てはしないの。」
「やめ、ろよ。」
「大丈夫、“ジェミニ”。貴女はアタシが護るわ。」
「“献華”、白兵の回廊 修羅。」
チッ、と掠れる音。クオリの肩から流れる血。
安央衣を見る、感情の無い目と、浮かぶあの猫の笑み。
瞬間、僕の横を素早く通り過ぎたクオリは安央衣に飛びつく。
「“ジェミニ”、貴女はそんな感情を持ってはいけないのよ?」
「何の・・・っ、ことだ!!」
「貴女は“彼”だけを想ってれば良いの。」
「・・・・・・・・・・!?」
僅かに歪む、彼女の顔。
それはまるで、自分に馬乗りするクオリを恐れているような、何処か別の誰かを思い浮かべているような。
頬まで届くようなおぞましい笑みを更に深めたクオリが微かに見えて、僕は斬りかかった。
確実に当たった様に見えた剣は空を切るだけで、クオリは既に後ろで攻撃準備をしていた。
ソレに構えようとする僕の目に見えたのはその後ろにいるあの少女。
「“ジェミニ”は殺してやるの。」
「っるさいわねェ!!!アンタごときが私達を殺すなんて無理なのよっ!!」
「ッッ!!?」
「自惚れないで欲しいわ、アンタは所詮“裁く”だけ。殺すのは処刑人よ。「原罪」は殺せないの。」
ギリ、とクオリに足踏みされる少女が歯を食いしばる。
名前は知らないが安央衣を殺そうとしている事が分かるその少女を助けるべきか戸惑った。
その静寂を裂いたのは、銃声。
「あ〜もう、「私」を傷つけないでくださいよ。」
「「「!!?」」」
「唯でさえ「ライア」を抑えてる状態だってのに傷入ったら抑えられなくなっちゃうじゃないですか。」
「「原罪」・・・?」
「いかにも、僕は「原罪」。アダムと呼ばれてたりイヴと呼ばれてたりします。」
そう言って「原罪」は安央衣の姿で片手を腹の前まで持っていき俗に言う紳士のお辞儀をした。
口調からして少年のようだが・・・容姿が容姿だから似合ってるなオイ。
此処に来る船の中で見掛けたあの模様が顔を覆いつくすように茨の様な模様を伸ばしている。
少し浮いた足には歯車が足首にはまっていて、小さな歯車と連動してまわり続けていた。
「「原罪」!!」
「やぁクオリ。ごめんねコロコロ移っちゃって。」
「いえ、大丈夫。」
「やっと見つけたから、器。」
元々綺麗な顔で綺麗な笑みを浮かべる「原罪」。
クオリが無邪気に笑っているのでこんな状況・設定でなければ唯の友人のようだ。
「それにしても、“彼”は禁句ですよクオリ。」
彼女が愛した唯一の人を使うなんて。