二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- 十九頁 奏でるモノ ( No.74 )
- 日時: 2011/11/22 18:59
- 名前: 蓮華 (ID: vl1Udskn)
- 参照: http://www.kakiko.info/bbs2/index.cgi?mode
「う〜ん、出来れば使いたくはなかったのよねェ、コレ。」
彼女・・・ノアが手をかざすと、音が鳴った。
その手の下で浮いているのは何か機械のようだ。
「今の人は知らないかなァ、これね、「テルミン」って言うの。」
手をかざすだけで綺麗な音を奏でる楽器。
手に入れた経緯はともかく、それが何故“そこにあるのか”と言うことだ。
ノアは手を器用に動かすと、メロディを奏で始めた。
「捧げた華 白い箱
アナタは目を閉じたまま
白い純潔 包む唄
焔は雪が奪い尽くした
雪降る日に白兵は発ち
業火の中へ消え果ててしまった」
アレンの「子守唄」ではなく、それは「鎮魂歌」だった。
バイオリンの様な音にのせて凛とした声で唄い終わり、彼女の前には《ゲート》が現れた。
「じゃあね!」と陽気に手を振り彼女は去って行った。
「「原罪」!!!」
その後をクオリが追い、彼女も《ゲート》が消えたと同時にその中に消え、僕等は呆然としていた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「リナリー達は重傷だ、安央衣君も行方不明だなんて・・・。」
「アイツはノアだ、今はな。」
「「ライア」、「原罪」はそう言ったんだね?」
「はい、そう呼んでました。」
「しかも、方舟も使える。余計厄介だ。」
僕等はあの後方舟を使い途中安央衣も探したのだが見つからず、船に戻り教団へと帰ってきた。
彼女が使った形跡すらも消えてしまっていて、追うのは不可能だった。
その夜、僕は目を覚ました。
呼ばれたような、ただ起きたような・・・曖昧な感じだ。
ふと、聞こえた音。途切れ途切れでよく聞こえなかったが、身を起こし部屋から出ると寒さと共に音が鮮明に聞こえた。
オルゴールのような音。一音一音が同調し繋がってメロディを奏でている。
寝静まる時間帯に音楽を奏でているのは珍しいので音を辿った。
・・・・・・・・・・♪・・・・♪・・・
とある部屋の前で僕は止まる。
音は廊下に出た時よりはっきり聞こえていた。
ドアノブを下げ、開ける。
白の中に、燃える様な紅が居た。
「・・・お前は・・・安央衣の、ゴーレム・・・。」
声を掛けると、ゴーレムはパタリと口を閉じ、音も止んだ。
安央衣と初めて会った時もいたティムそっくりのゴーレム。違ったのは色、だけだろう。
名前は———「ヴァルケノウ」。
先程から、ヴァルケノウはこっちを見ない。
窓の外の星々の浮かぶ夜空を眺めたまま、再び音を鳴らした。
よくよく聴くと、あの時「ライア」が唄っていた「鎮魂歌」で、僕は思わずヴァルケノウを掴んだ。
「キミは、安央衣の居場所を知ってるんでしょう!?」
そう、すっかり忘れてた。
ヴァルケノウやティムの様な契約ゴーレムは主の方を向く。遠く離れていたら大雑把な方向しか分からないが。
僕が起きた時からずっと音を鳴らしていた、遠い遠い所にいる主を想って鳴らしていたはず。
両手の中でジタバタ暴れるヴァルケノウを逃がすまいとしっかり掴み質問を続ける。
「安央衣は、何処ですか!」
「ガァアアアッッ!!」
「いったぁぁぁぁっっ!!」
ガブッ、と噛まれた。左手ならまだしも右手を思いっきり。
涙目になる僕を他所に、ヴァルケノウは窓に再び着地して音楽を奏でた。