二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 59章 回想 ( No.116 )
- 日時: 2011/08/12 20:49
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: GSdZuDdd)
- 参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html
バトルを終えたイリスとミキは、PDOの三人が潜伏している家屋を訪ねた。
しかし玄関でばったりとザキに出くわしてしまい、ミキは先の魔の手(大袈裟な表現ではないだろう)から逃れるべく、カゴメタウンを疾走している。
なのでイリスは一人で家に入ると
「あれ、N? ここにいたのか」
中にはNがいた。
「イリス、探したよ。今までどこにいたんだい?」
「まあ、ちょっとね……君はここで何をしてるんだ?」
「君がどこにいるのか知らないかと思って、訊いていたんだ」
Nは「丁度良い」と言って、立ちあがる。
「イリス、明日から別行動を取らせて欲しい」
「別行動?」
イリスは怪訝そうに復唱する。
「ああ、ちょっと調べたい事とかがあって……だから、今日で君とはお別れだ。勿論、もう会えなくなる訳じゃないだろうけど」
「……君がそう決めたんなら、僕は反対できないよ。やりたい事があればやればいいし、行きたい所があるなら行けばいい。何するかは君次第だ」
イリスがそう言うと、Nはもう言い残す事はないと言わんばかりに去っていった。
「……で、君は何用かな?」
一部始終を見終えたキリハが、イリスに尋ねる。
「いや、Nがどこにいるのかと思って来たんですが、ここにいたとは……」
まず先に来るべき場所は、ともに同じ場所というわけか。
とその時、イリスの後の扉が開いた。
「なんとか兄さんから逃げ切りました……」
出て来たのは、汗だくで息も荒く、疲労困憊のミキだった。
「あ、ミキちゃん。久しぶり!」
「ふえ?」
リオはフランクにミキに近寄ってきたが、ミキは一年前と変貌したリオが誰だか分からず、疑問符を浮かべている。
「師匠、この人誰ですか? 新しい隊員さんですか?」
イリスはその問にどう答えたものかと思案するが、まあ隠す事でもないのでありのまま言う事にした。
「その人はリオさんだよ」
イリスのその言葉に、ミキは目をパチクリさせている。
「師匠、その冗談は面白くないですよ。あの自由奔放で傍若無人なリオさんが、こんなに女々しいわけないじゃないですか」
サラリと酷い発言をするミキ。悪気があるわけではないのが、逆にタチが悪い。
「……リオ、ライセンス」
キリハがそう言うと、リオはポケットからPDOのライセンスを取り出す。そこにはリオの名前からなにからの詳細と、顔写真がある。
「……嘘でしょう?」
「本当だよ」
小刻みに震えているミキは否定的に問うが、イリスは肯定する。
「……そんな、あのリオさんがお姉ちゃんからお姉さんへと変貌しているなんて……」
「瑣末な差だね」
ミキにとっては大きな差なのだろうが。
「あうぅー……」
ミキは脳が認識を拒んでいるのか、頭を抑えてうずくまり——倒れた。
「ミキちゃん!?」
その後ミキが復活したのは、一時間後の事である。
復活を果たしたミキは無理矢理なんとか自分を納得させ、リオを認識する事ができるようになった。
「それにしても……なんでリオさんはそんな七変化してるんですか?」
ミキは愚痴るように尋ねる。
「ああ、これは——」
「俺が原因だろうな」
リオが口を開こうとすると、扉が開き、ザキが入ってきた。
「ザキさんが原因? ……全く読めないんですが……」
「話せば長くなるが……どうせ暇だし、聞かせてやるよ」
そう言って、ザキ(とキリハ)は語り始める。
時は遡り、一年前。より正確に言うならば、プラズマ団との戦いが一段落着いた数週間後。
「おーっす、邪魔するぞ」
プラズマ団が動きを見せなくなり、暇を持て余していたPDOヒウン支部(他の支部も暇だったりする)に、来客が一人。
「やあザキ。仕事がなくて暇なんだね」
「親友に対する第一声がそれかよ……しかも真理を突いてる所が腹立だしいな……!」
ザキは真面目に書類を整理しているキリハから目線を外し、ポケモンのブラッシングをしているリオに目線を合わせる。
「キリハも変わんないが、リオも相変わらずサバサバしてるというか、猛々しい雰囲気が出てるというか、女々しい所が全くないな」
親しいとはいえ礼儀などとは全く無縁ともとれるザキは、室内のソファにどっかりと座りつつ言う。
「お前ももう少し女らしくしたらどうだ。まあ、どんなに着飾ろうとも俺の妹に遠く及ばないだろうがな」
「アドバイスしてるのかけなしてるのかはっきりしなよ。というか、それは完全に君の主観じゃないか」
その後、小一時間ほどキリハとザキの口論が続き、その傍ら。リオはどこか思いつめるように思案していた。
時は進み、約十ヵ月後。
PDOヒウン支部では長期休暇があり、それが丁度終わったところだ。
そして休暇が終わってから一番早く支部に戻ったのが、キリハだ。というか、休暇が終わる前に戻っている。
「休暇が終わって、隊員達は戻って来るんだよな……また明日から騒がしくなりそうだ」
キリハが不安と期待を織り交ぜて呟くと、支部の中に誰かが入ってきた。
しかしその人物は、キリハが知らない人だった。
背中まである金髪を三つ編みにし、上は白いワイシャツ、下は赤地に黒のチェックが入ったスカートを履いている。
「……誰?」
それが、変貌したリオに対する、キリハの最初の言葉だった。
今回は回想シーンが半分ほどで、バトルがない回でした。やっぱりバトルがないと書く側としても大変です。では、次回も回想シーンで、バトルは入れるつもりです。お楽しみに。