二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 70章 工作員 ( No.143 )
日時: 2011/08/14 15:13
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: GSdZuDdd)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

ブルジョワール家別荘。
その広大な屋敷の、無駄に長い廊下を進む者がいた。
しかしそれは、PDOでもなければ、旅するトレーナーでもない。
プラズマ団だ。
「まさかこんなに簡単に潜入できるとは。やはり相手は素人、闘いには秀でていても、戦いには弱い」
ボブレイヤーの金髪に、蒼い瞳。肌はそういう人種なのか、普通よりも白い。
ガイアとは異なった軍服にベレー帽、腰には自動式拳銃を吊っている。
彼女の名はサーシャ。7Pことレイの部下で、プラズマ団屈指の工作員だ。
「この調子ならば、目的の金庫まですぐに辿り着け——」
そこで、サーシャは足を止め、言葉を切った。そうぜざるを得なかったのだ。
「やっぱし、こういうネズミが潜りこんで来るよな。警戒しておいて良かったぜ」
サーシャが廊下の角を曲がると、そこにはPDOのザキが立っていた。
「いろいろ考えてたが、お前らの目的は大体読めたぜ。一つはここ、サザナミタウンの占拠。まあたぶん、ここを拠点か何かにするつもりなんだろうな。んで、もう一つがブルジョワルだがブルージョワルだが忘れたが、この屋敷の金庫に保管されているらしい、伝説のポケモンに関する書物だろ?」
「…………」
サーシャは黙っている。しかしその沈黙は、肯定の沈黙と取れる。
サーシャはゆっくりと腰に吊っている拳銃に手を伸ばすが
「!?」
そこには拳銃はなかった。
「お探し物はこれか?」
見れば、その拳銃はザキの手に握られており、次の瞬間にはマガジンが抜かれ、投げ捨てられてしまった。
「よくやった、デルビル」
ザキの横にはいつの間にか狼のようなダークポケモン、デルビルがいた。どうやらこのデルビルが泥棒で拳銃を盗ったようだ。
「こんな危なっかしい物使わねえで、これで決めようぜ」
言ってザキはボールから河童ポケモンのテペトラーを繰り出す。
バトルで決めよう、という事らしい。
「……レイ様は、必要とあらば戦いなさい、と仰っていた。分かりました、お相手いたしましょう」
そしてサーシャもボールを取り出し、ポケモンを繰り出す。



チェレンは今現在、Pベース一階の南側にいる。
何故かは知らないがチェレンの所へだけはやけに下っ端どもがやって来て、それらを処理するのに手間取っていたからである。
「面倒だな……」
チェレンはそう呟きつつ、扉を開く。
そこは大広間のようで、特に何かあるわけではないが、他の部屋と比べると大分広い。
そしてその大広間では、演奏会が開かれていた。
「…………」
ツッコミ所が多いのだが、如何せんここにいるのはチェレンだ。ツッコミの技術など持ち合わせていないので、とりあえずはその光景を冷静に観察する。
演奏しているのは三匹のポケモン。
一匹は妖精のような体躯に、頭の髪の毛のようなものは青色。尻尾でバイオリンを操っている。
一匹は妖精のような身体に、首と耳にはピンク色の毛。背中には身の丈ほどのトランペットがあり、今はそれを吹いている。
一匹は妖精のような相貌に、首と耳には黄色い毛があって、頭にはシカのような角が二本。尻尾がキーボードになっている。
バイオリンはオリバー、トランペットはランペルン、キーボードはキーボン。
いずれも演奏ポケモンと分類されるポケモンだ。
そしてその三匹が演奏している前には、緑色の髪が所々巻き毛になっており、指揮者のような燕尾服で指揮棒を振っている若い男——いや、少年と言っても良いかもしれない——がいる。
「——あ」
とそこで、少年はチェレンの存在に気付いた。
「ようこそ、僕達の演奏会へ」
そして第一声がこれである。
「……君は、プラズマ団かい?」
「はい、その通りです。7Pフレイさん率いる焦炎隊に属しています、シャンソンといいます」
とてもプラズマ団とは思えない反応。顔は笑顔、敵に対して敬語、さらには自分達が不利になるような情報まで漏らしている。
「……で、どうするんだい? 僕はなるべく戦いは避けたいけど、やれと言われればやるよ。一応、君みたいな無害そうな団員も、ターゲットには含まれているからね」
チェレンは至極面倒そうに言う。
「それに関しては何も連絡が入ってないのでなんとも言いがたいのです——」
とそこで、シャンソンの胸ポケットに入っている無線機か何かから、声が聞こえてくる。
『シャンソン、聞こえるー? もし誰か侵入者が来たらー、適当にバトっといてー。あ、この通信はあたしからの一方的なメッセージだから、返事とかいらないよー。そんじゃ、頑張ってねー』
ブチッ
通信が切れた。
「……では、始めましょうか」
「……ああ、うん……」



フレイはシャンソンへの通信が終わると、別の通信機の回線を開く。
『フレイ、首尾はどうですか?』
開かれた回線から聞こえてくるのは、7P、エレクトロの声だ。
「上中下って感じかなー。良くもあれ悪くもあれ普通もあれ。フォレスなんかは雑魚っぽい事してるしー、アシドは仕事放棄してるしー、ガイアとエレクトロの部下は私情で動いているしーで、もうしっちゃかめっちゃかだよー」
『私情に関してはあなたが言える事ではないでしょう。まあ、マオに関しては私がなんとかしましょう。他の者に関しては、各々の判断に任せます。私達はおよそ集団行動が取れない人間の集団ですからね』
「集団なのに集団行動が取れないなんて矛盾してるねー。」
『ではフレイ、今回の作戦の要はあなたです。できる限り時間を稼いでください』
「了解だよー」
そして、回線は切れる。



今回はバトルのない回でしたね。まあ、霧火さんと黒影さんのオリキャラを出したのでよしとしましょう。あ、キャラ崩壊などの不備があればどうぞお申し付けください。では次回ですが、次回はそろそろちゃんとフレイをバトルに出そうと考えております。まあ、五割程度の確率で延期になりそうですがね。では、次回もお楽しみに。