二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 73章 目的 ( No.151 )
- 日時: 2011/08/15 13:12
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: GSdZuDdd)
- 参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html
「出て来なさい、マニューラ!」
マオは戦闘不能のララミンゴをボールに戻さず、そのまま鉤爪ポケモンのマニューラを繰り出す。
キリハはララミンゴをボールに戻さなかったのには何か意図があるのだと思っていたが、そうではなかった。
事実はもっと単純で、残酷だった。
「マニューラ」
マニューラは鉤爪でララミンゴを摘み上げると、バトルに支障をきたさない所へと投げ捨てた。
「!? ……自分のポケモンに、何してるんですか……!」
「別に。弱いポケモン私には相応しくない、だから捨てる。それだけよ」
キリハの表情は厳しくなる。その顔は、怒りを含んでいた。
「ドーブル、キノコ胞子、ロックオン、絶対零度」
ドーブルは虚空に高速でキノコ、カーソル、氷を描き、気付けばマニューラは氷結していた。
「さあ、まだいるんでしょう? あなたの歪んだ根性は、僕が矯正してあげますよ」
キリハの言葉に目を鋭くしたマオは、足でマニューラを蹴り飛ばした。理由はララミンゴと同じだろう。
「出来るものならやってみなさい。私の最後のポケモンは、今までの雑魚とは格が違うわよ」
言ってマオは、ボールを構える。
「さあ出て来なさい、ドレ——」
「そこまでです、マオ」
突如、上空より声がかかり、マオは動きを止めて上を見上げる。
そこにいたのは、トロピウスに乗ったエレクトロだった。
エレクトロはトロピウスから降り、マオのモンスターボールを二つ——ララミンゴとマニューラのボール——素早くかっさらい、戦闘不能の二匹を戻す。
「ポケモンが負けたからといって、捨てるのは頂けないといつも言っているでしょう。敗北に目を背けていては、あなたは未来永劫、弱い人間で、弱いトレーナーです」
エレクトロは窘めるようにマオに言うが
「うるさいわね。私に指図しないで頂戴」
「上司の言う事は、聞くものですよ」
「私は貴方の部下じゃないわ。むしろ貴方が私の部下なの」
どうやらマオは、かなり歪んでいるようだ。
「……まあ、上司部下なんてどうでもよいです。問題は強いか否か」
言って、エレクトロの目が鋭くなる。
「バトルに負けたポケモンを捨てていては、あなたは一生弱いままです。善か悪かと問われれば確実に悪に含まれる私達が言うような事ではありませんが、敗北を通して得るものもあり、敗北して強くなるものです。今一度言います、敗北に目を背けていては、あなたは未来永劫弱いままです。この先一生、あなたは妹に負け続けます」
「…………」
マオは黙り込んでしまう。エレクトロの言っている事は正しい、納得したくはないが、正しいので何も言い返せない。
「ここは撤収です。今のあなたでは彼に勝つことは出来ない」
そしてエレクトロはマオの手を引き、トロピウスに乗り込む。
「このたびは私の部下が大変失礼致しました。部下の不始末は上司の不始末。なのでお詫びに一つ、良い事を教えてあげましょう」
エレクトロは高みから、キリハに向かって言う。
「私達の目的は、ジャイアントホールという洞穴に眠りし氷の龍、キュレム。一説によれば混濁の使者と呼ばれ、真実と理想が混じり合った存在だとか。私達はそのキュレムの力を使い、世界を制圧、支配します。今回の強襲は、キュレム復活させるための準備の場を整える時間稼ぎに過ぎません」
エレクトロはペラペラと喋るが、その言葉は真実味を帯びている。たぶん、本当だろう。
「では、私達はこれにて」
最後にそう言い残し、エレクトロとマオは去っていった。
地下植物園。
フォレスが急遽仮設した丸太小屋の中に、少女が一人。
捕縛されてしまったイリスの弟子、ミキだ。
ミキは縄で縛られていたのだが、その縄は切れていて、ミキは普通に立っている。
「なんとか抜け出せたよ……ありがとう、ゴキブロス」
見ればミキの足元には、某イニシャルGによく似た虫ポケモン、増殖ポケモンのゴキブロスがいた。
どうやらこのゴキブロスが、縄を切ったようだ。
「……あの7Pの人達と忍者の格好をした人が言うに、ここは地下の植物園。師匠は私を助けにここに来るはず……でも、ここには無数の罠が仕掛けられている……」
ミキは今まで聞いた情報を元に、現状を整理する。
「早く、この事を師匠に知らせないと——」
「——それはさせぬぞ」
ミキが丸太小屋の扉へと向かうと、どこからか何者かが現れ、ミキの前に立ちはだかる。
それは、忍装束を着た男、ハンゾウ。
「これは一本取られたぞ、狸寝入りの上手い娘だ。拙者が英雄殿を呼びに行っている間にゴキブロスを使って縄を切るとはな」
ミキはイリスに化けたハンゾウに眠らされて植物園まで運ばれたのだが、フォレスがミキを縛る辺りからもう薬は切れていた。
しかしすぐに寝覚めてもまた眠らされるだけなので寝た振りをし、フォレス経ちの情報を聞きつつ、隙あらば逃げ出そうとしていた。
「だがしかし、拙者はこうして舞い戻ってきた。どうする、娘よ。ここから出ようとするならば拙者はそれを止めるが、何もしないのであれば、拙者も動かぬ」
それはつまり、自分は何もしないからおとなしくしろ。何かすればそれなりの対処をする、という意味だろう。
「甘く見ないで。私だってPDO隊員、そして、英雄の弟子。師匠がピンチだというのに、おとなしく指をくわえているわけにはいかない」
ミキがそう言うのとほぼ同時に、ゴキブロスが前に出る。
「……よかろう。このハンゾウ、僭越ながらお相手いたす!」
今回はキリハとマオのバトルがやや強引ながらも終了し、プラズマ団の目的もはっきりしました。そしてミキとハンゾウのバトル。次回はイリスにバトルをさせてあげようと思っております。ちなみに余談ですが、『登場人物紹介等』の欄の敵対sideや他軍勢sideなんかにいろいろと追加しました。では、次回もお楽しみに。