二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 95章 本腰 ( No.189 )
日時: 2011/08/29 00:55
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: GSdZuDdd)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/124.html

「英雄さん、あなたはトレーナーの強さとポケモンの強さの関係、俗に相互関係と呼ばれるものをご存知ですか?」
唐突に、エレクトロはそんな事を言い出した。
「相互関係……トレーナーが強ければ、その分ポケモンも強い。ポケモンの力はレベルだけでなく、トレーナーの意志の強さも反映される、ってやつか?」
「ええ、その通りです」
相互関係とは、この世で最も強いであろうトレーナー、チャンピオンの強さを解明すべく発見された事象で、トレーナーの意思の強さに比例して、その強さがポケモンにも反映され、ポケモンが強くなるという考えだ。
しかしこれはまだ科学的には証明されておらず、様々な説がある。一番有力な説は、トレーナーの意思の強さに比例して無意識のうちに体から放出される波動をポケモンがキャッチし、力に変えている、という説だ。
「それを私達プラズマ団は、科学的に証明してみせました。その一番有力な説は正解でしたよ」
「……それが、どうした」
凄い事ではあるが、今それがどのような意味を持つのか、イリスには分からない。
「私達の7Pの強さは、ジムリーダーを倒せる程度です。この強さは前任の7幹部となんら遜色のない強さです。しかし、その程度ではダメなのです」
エレクトロはまたも唐突にそう言い出す。
「はっきりと申し上げましょう。今まで私達が戦ってきた力。それは、自らの力を抑えた状態で戦っていたのです」
「な……!」
つまりそれは、今まで手加減して戦っていたようなもの。7Pは本気ではなかったという事だ。
「私達は既に、氷の龍、キュレムと接触しています。まあしかし、かのポケモンは封印されていて、氷を一つ、摘出する事しかできませんでしたけどね」
そう言いつつ、エレクトロはプラズマ団の紋章が入った手袋を外していく。
「しかしそれで十分なのです。摘出された氷を尖らせ、私達7Pは体の各部位に、刻印を刻みました。それは境界の刻印と呼ばれ、私達の力を抑制するものとなりました」
手袋を全て外し終えたエレクトロは両手の甲をイリスに向ける。
「ではお見せしましょう。今から、私は力を解放します」
そう言うと、エレクトロの両手の甲が、光った。黄色と灰色を混ぜたような色で。
よく見るとその刻印とやらは形がちゃんとあり、エレクトロの両手の甲には手……いや、二本の爪みたいに刻まれている。
「刻印が刻まれる部位は人によって異なります。私の場合は両手の甲、刻まれたのはキュレムの両手です」
光は収まったが、エレクトロの両手に刻まれた刻印は、濁った黄色と、色が付いている。
「では、始めましょうか英雄さん。貴方の力も、そんなものではないでしょう?」
言ってエレクトロはボールを取り出す。そして口調も、少し変わっているような気さえする。
「……分かったよ、やってやるさ。出て来い、デンリュウ!」
イリスは先ほどの戦いで傷ついたフローゼルを戻し、代わりにデンリュウを繰り出す。
「それでは私も。戦の時間です、ハッサム!」
エレクトロが繰り出したのは、赤い体に両手がハサミとなったポケモン、ハッサム。
「デンリュウ、一気に行くぞ!炎のパンチ!」
デンリュウは拳に炎を灯し、ハッサムに殴りかかる。
しかし

「ハッサム、メタルクロー!」

ハッサムは鋼鉄のハサミを閉じた状態でデンリュウの懐に潜り込み、ハサミで殴るようにデンリュウを吹っ飛ばした。
「で、デンリュウ!?」
地面に落下したデンリュウは、目を回して戦闘不能になっていた。
(なんだ今のハッサムのスピードとパワー……あんなの、強いなんてもんじゃないだろ……!)
「お分かり頂けたでしょうか。これが私の本気です。まあ、解放状態に限れば、私の力はプラズマ団で三番目ですけどね」
「え……?」
エレクトロの言葉を疑ってしまうイリス。つまり、解放すればエレクトロよりも強い7Pが、あと二人はいるという事。いやそれ以前に、他の7Pだって解放すれば相当強くなるはずだ、圧倒的な強さがあるはずだ。
そしてここで、イリスはエレクトロが相互関係について話してきた意味を理解した。
つまりエレクトロ達は自らの力を抑制する事で、ポケモン達の力も抑えていたのだ。
「まだ戦いますか? 私としては、もう諦めるべきだと思いますがね。貴方がいくら気張ったところで、今の私には勝てません。貴方のお弟子さんは、頂いていきます」
そう言ってエレクトロが足を踏み出す。その時だった。

「ブーバーン、オーバーヒート!」

上空から爆炎ポケモン、ブーバーンが現れ、辺り一体を焼き尽くすような爆炎を放つ。
「くっ、何者ですか!」
ハッサムが炎に包まれる中、空中より降りてきた、というより落下してきたのは
「ザキさん!?」
「兄さん!?」
PDOセッカ支部統括にして、ミキの実兄、ザキだった。
「おい、そこの執事服着たモヤシ」
「私の事ですか?」
コクリと頷くザキ。
「てめえ、人の妹誘拐してどうするつもりだ? 返答すれば焼くぞ」
何を言っても、焼く事は免れないらしい。
「ふふ、どうやら貴方も、私の邪魔をするようですね。良いでしょう、久しぶりに解放して、私でも少し興奮してしまっていますからね。少しはしゃいでしまいましょう」
炎が消えると、そこに立っていたのはハッサムだった。
「では、プラズマ団の境界を、刻みましょう」



今回はエレクトロが本気になりました、ハッサムはデンリュウを一瞬で倒してしまい、ブーバーンのオーバーヒートを喰らっても倒れません。分かりにくかった人のために、境界の刻印についてざっくりと説明します。境界の刻印はキュレムの氷を氷柱みたいに尖らせて、それで刺青のようにキュレムの体の一部を模した刻印を刻むのです、結構グロいです。そして刻印で封じられた力を解放すれば、超パワーアップします。まあ、こんなとこですかね。分からない所があれば、いついつでもお聞きくださいな。では、次回はザキとエレクトロのバトルになるか、お楽しみに。