二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 110章 怯み ( No.225 )
日時: 2011/08/31 07:59
名前: 白黒 ◆KI8qrx8iDI (ID: GSdZuDdd)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

「さあ遂にお前の出番だ。出て来い、エルレイド!」
イリスの最後のポケモンは、エスパー・格闘タイプのエルレイド。
シャープでクールな印象を与える人型のポケモンで、両肘は鋭利な刃となっている。
「へえ、エルレイドか。前のキルリアが進化したのか」
ハヤトはエルレイドの姿を見て、感嘆の声をあげる。
「でもエルレイドは目覚め石という特別な進化の石がないと進化しないポケモンのはずだけどな。それも目覚め石は貴重な部類に入る。このイッシュでは、そう簡単に手には入らない」
「ああ、それに関しては簡単な事です。貰ったんですよ。僕の、最高の親友にね」
イリスはいっそ誇らしげに言う。
「ふうん……まあ経緯はどうでもいいけど、エルレイドは格闘タイプだ。飛行タイプ使いの俺にぶつけてくるには、少々不利だな」
「だから何だと言うんです。相性を覆すのは、あなたのスタイルじゃなかったんですか?」
「む……」
お株を取られた、というより、意趣返しと言うべきか。まあ何にせよ、イリスもその、相性を覆すスタイルでぶつかっていくようだ。
「ふん、相性を覆すのはそう簡単な事じゃないぞ。プテリクス、ドリル嘴!」
プテリクスは体ごと嘴を高速回転させてエルレイドに向かって突っ込む。対するエルレイドは、微動だにしない。
「まだだエルレイド、逸るなよ……」
イリスも心を落ち着け、ギリギリまで動かない。
そしてプテリクスの嘴がエルレイドを貫く、その時
エルレイドは動いた。

「エルレイド、アイスブレード!」

エルレイドは腰に構えた刃を一気に引き抜き、プテリクスにを横薙ぎの一閃で切り裂く。
「プテリクス!」
氷の刃で切り裂かれたプテリクスは軌道が大きくずれ、エルレイドの真横の地面に倒れ伏した。
「まさか……俺のプテリクスが、一撃で……!」
「無理もないでしょう。今の一閃は、急所を切り裂いたっぽいですから」
驚愕の表情を浮かべるハヤトに対し、イリスは飄々としていた。
「さて、エースプテリクスは倒した事だし、残る一体も切り裂き倒してやりますよ、ハヤトさん」
それは切り札級のポケモンだと思っているプテリクスを倒しての余裕だろうが、ハヤトからすればその反応は意外なものだった。
「エース? 何を言ってるんだ。プテリクスは俺のエースじゃない。俺の切り札は、こいつだよ」
「え?」
早とはプテリクスを戻しつつ、和服の袖から取り出したボールを、イリスに突きつけるように見せる。
「このポケモンこそが、俺の切り札だ。さあ羽ばたけ、オオペラー!」
ハヤトの最後のポケモンは、お喋りポケモンのオオペラー。
分類こそ強そうではないが、その姿は(というか顔は)キリッとしている。
頭は黒く、後ろの方が崩れた音符のようになっているものの、体は派手だった。
眉毛はピンク色、首周りは水色、腹部は緑色、翼は黄色。とにかく派手なポケモンだ。
「……それが、本当のエースですか」
「本当も何も俺のエースはこいつだけだよ」
「頭に何か乗ってますね」
早との発言を軽くスルーしたイリスは、オオペラーの頭部に着目する。
オオペラーの頭部には、樹木のような色をした、『山』のような形の王冠みたいな物が乗っている。
「これは王者の印。攻撃するたびに相手を怯ませる」
イリスはその言葉を聞き、少々焦る。攻撃のたびに怯ませられればたまったものではないからだ。
「——事がある道具だ」
ガクッと、イリスは肩を落とす。まあ、半分は安心したが。
「じゃあま、お喋りはこの辺にしよう。これから喋るのはオオペラーさ。オオペラー、ハイパーボイス!」
オオペラーは小さな嘴から超高音の衝撃波を放つ。その威力は凄まじく、エルレイドが吹っ飛ばされた。
「くっ……エルレイド、アイスブレード!」
エルレイドは両肘の刃を氷結させ、オオペラーに斬り掛かるが
「オオペラー、高速移動だ」
オオペラーは文字通り名前通り、高速で動いてエルレイドの攻撃を避ける。
高速移動の厄介な所は、移動後もそのスピードが保たれる事だ。使えば使うほど素早くなる。ポケモンバトルにおいて、能力強化は基本であり必要不可欠な存在だ。
「撹乱飛行!」
オオペラーはエルレイドの周囲を不規則に飛行して撹乱し、隙を見つけるとすかさず嘴で攻撃してくる。
「くぅ、エルレイド、リーフブレード!」
エルレイドは緑葉の力を刃に込め、周囲を飛行するオオペラーに斬り掛かるが、避けられてしまう。
「ハイパーボイス!」
オオペラーは突然エルレイドの真正面、それも顔面の真ん前で、強烈な音による衝撃波を放つ。
顔面に衝撃波の直撃を喰らって吹っ飛ばされたエルレイドは反撃しようとしたが、怯んでしまい、体が動かない。
「これぞ王者の印。怯めば攻撃が出来ない。攻撃が出来なければ戦えないに等しい。なにも空中に逃げるだけが飛行タイプじゃないぜ。エアスラッシュだ!」
オオペラーは空気の刃を飛ばしてエルレイドを切り裂く。エルレイドは体をずらして直撃を避けたものの、完全に避ける事は叶わず、しかも王者の印とエアスラッシュの相乗効果でまた怯んでしまう。
「進化したてで悪いが、そのエルレイドには、攻撃させずに勝利するよ」
勝利、勝利。とハヤトの言葉をオオペラーも復唱する。
そしてその姿は、まさに空の王者のようだった。



今回はハヤトの切り札、オオペラーの登場です。分かるかもしれませんが、オオペラーはペラップの進化系です。エスパータイプが付加されました。そしておそらく初めて、イリスは道具を持つ相手とのバトルです。王者の印とエアスラッシュで怯ませて攻撃させない。まあこれは本来、天の恵みの特性を持つトゲキッスがやるような事ですがね。そして遅れましたが、遂にエルレイド登場です。キルリアが進化しました。一応伏線はいくつか張ってあるので、まあ分かる人は分かったでしょう。というかキルリア時代で炎のパンチを使ってましたからね。では次回はイリスとハヤとのリベンジマッチ、決着です。勘の鋭い人はオチが見えているかもしれません。では、次回もお楽しみに!