二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 9章 旅仲間 ( No.25 )
- 日時: 2011/07/30 00:37
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: GSdZuDdd)
- 参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html
ビレッジブリッジ。
イッシュ四大大橋の一つで、この橋は川を跨いで造られている。
それだけ聞くと普通の橋だが、この橋はその上に民家が連なっている、名前通り村のような橋だ。
その歴史はかなり古く、二百年前のイッシュ地方開拓時代に造られた、と言い伝えられている。
「で、シザンサスさん……シザンさんとお呼びしてもいいですか?」
言い難いので、とは付けない。
「別に良いわよ。なんだか親しい仲間って感じするし」
とりあえず承諾されたので、イリスはこれからそう呼ぶことにする。
「さっきはありがとうございました。シザンさんが助けてくれて、助かりました」
「別にいいよ、気にしないで。ええと、名前は……」
「あ、イリスです」
イリスはそういえば名乗ってなかったな、と思う。
「イリス……? 確か、イッシュ英雄伝説にもイリスって名前が出てきたような……」
ギクッ
イリスは一年前に、短期間ではあったが有名になってしまった。その時に誰がどこで知ったのか、イリス達とプラズマ団の戦いを書き記した本が出版されてしまったのだ。その時はポケモンリーグの総力を結集して絶版にしたが、それでも数十冊ほどは出版されているため、その名を知る者もいるだろう。
ちなみに何故絶版にしたかというと
曰く
「面倒だからね」
曰く
「騒がれるのは好きじゃないから」
曰く
「俺の妹の情報を漏らすわけにはいかんからな」
という要望があったためだ。
しかし、百冊も出版されていない本を知っているとなると、このシザンサスという少女は、相当な本通なのだろう。
「もしかして……本人?」
イリスは頭をフル回転させて上手く誤魔化す方法を探る。そして
「はい、その通りです……」
結局思いつかず、自白。
「そうなんだ。まさか本人と出会えるとは、夢にも思ってなかったな……」
「あの、僕の事はできればご内密に……」
イリスは頼み込み、この事は秘密という事にした。
「で、話を戻しますが、シザンさんはプラズマ団になにか恨みでも?」
戻しているのか疑問だが、話の腰を折るわけにはいかない。
「んー。あんまり話したくないんだけど……そっちの話が秘密なら、こっちの話も秘密って事でなら、話すけど」
イリスはNと顔を見合わせ、頷き合う。そしてシザンサスにも頷く。
「分かった。……えっとね、アタシの故郷はカントーって地方なの。アタシはその時、両親と一緒に平和に暮らしていた」
そこで、シザンサスの表情が少し曇る。
「でもある時、まだアタシが幼かった時に、カントー地方にプラズマ団が現れた。プラズマ団はアタシの住んでいた街を襲って、その時に母親が殺されたの」
『!?』
イリスとNは驚く。Nも驚いたという事は、Nもこの事を知らなかったのだろう。
「それから父親の反対を押し切って旅に出て、いろいろあって、プラズマ団のトップがゲーチスって奴だという事を突き止めた。そしてアタシは……ゲーチスを殺る。母親の仇討ちにね」
『…………』
イリスもNも声が出なかった。
「……じゃあ、次はNの番だね」
イリスはなんとか喉から声を絞り出す。
「僕は君と別れた後、いろんな地方を回ったよ。さっきシザンさんが言ってたカントー地方にもね。そして、そこでいろんなポケモンやトレーナーを見てきた。僕はポケモンと話せる力を使って、ポケモンの伝えたい事をトレーナーに教えたりしていた。それが、僕にできる唯一の贖罪だったからね」
Nの話は続く。
「そしてある時、直感というか、何かを感じたんだ。嫌な感じがして、僕はゼクロムに乗ってイッシュに向かった。君の元へと向かったんだ、イリス」
「僕?」
「そうだ。僕も君の元へと向かった理由は分からないけど、行けばそこには、危機に瀕した君がいて、今に至るのさ」
Nの話は終了した。
「ちなみに、イリスのライトストーンは今どうなっている?」
「ん? ああ、どうにもね……全く反応がない」
ライトストーンより蘇った真実の龍レシラムは、戦いの後ストーンに戻ってしまい、それ以降反応がない。
「まあ、そのことは後で考えるとして……問題は指針かな」
イリスは正直旅の目標みたいなのが定まっていない。
「ま、旅してればなんとかなるかな」
結論は大雑把に纏まった。
「だったらイリス、僕も連れてってくれ。僕はイッシュ地方を自分の足で歩いた事があまりないんだ」
確かに、Nは基本、城に引きこもりだった。
「うん、構わないよ」
「だったらアタシも一緒に行っていいかな? アタシはサザナミタウンに用があるんだけど、そこまでさ」
サザナミタウン。そこはイッシュ唯一にして最大の観光地にして避暑地。夏には海水浴で賑わう活気ある街だ。
「はい、分かりました。そこまで一緒に行きましょうか」
そんなこんなで、イリスに新しい仲間が増えたのであった。
夜。
どうにも寝付けないイリスは、夜風に当たっていた。
「そういえば黙って出てきたけど、皆、心配してるかな……?」
「心配してるだろうな」と一人呟き、ふと橋の下に視線を下ろす。
するとビレッジブリッジの外れにある草むらに、人影が見えた。
「……誰だろう」
イリスはもしかしたらプラズマ団かもしれないと思いつつ、ボールを確かめる。腰には六つのボールがセットされていて、下っ端程度なら余裕で蹴散らせるメンバーだ。
「行ってみるか」
イリスは橋を渡り、川沿いの草むらを掻き分けて、外れに至る。するとそこには
「小僧……誰だ?」
そこには目付きの悪い、髪の毛を短く刈った黒いスーツ姿の男性が立っていた。
パッと見は普通だが、胸に付いているRのマークが気になると言えば気になる。
「……似てるな」
男は不意に呟く。
「はい?」
「なに、昔俺の野望を打ち砕いた二人のガキがいてな、そいつらの目とよく似ている」
言うと男はモンスターボールを取り出して、こう言った。
「小僧。俺とポケモンで勝負しろ」
イリスはよく分からないうちに、バトルが始まってしまった。
今回はシザンさんの過去、目的、それからNの今までの経緯が分かりましたね。そして謎のスーツの男。勘の良い人なら、見た目から分かるやも知れません。では、次回はこの男とポケモンバトル。お楽しみに。