二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 292章 誘拐 ( No.338 )
日時: 2011/10/18 00:22
名前: 白黒 ◆KI8qrx8iDI (ID: GSdZuDdd)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

プラズマ団を追跡しているキリハとリオ、そしてミキ。
彼ら三人はなんとかドランのドラードンに接近するまで至ることができた。
「やっと追いついた……さて、それじゃあ水晶を返してもらおうか」
とキリハが意気込んでいる、その時だった。

「おやおや、これはまた威勢がいいですね」
「しょうがないですよ、こっちにとって大事なものは、向こうにとっても大事ですからね」

キリハ達よりさらに上空から二つの影が下降してきた。
片方はヤシの葉の翼を持つ恐竜のようなポケモン、トロピウスに乗る7P、エレクトロ。
もう片方は黒いカラスの姿にボスのような雰囲気を漂わせるポケモン、ドンカラスに掴まる少年、ソンブラ。
「くっ、最悪なタイミングで援軍か」
「そういうことです。……ソンブラ、私はそこのお二人の相手をします。あなたは、英雄のお弟子さんを」
「了解しました」
ソンブラはドンカラスに掴まったままミキのところへ移動、エレクトロはキリハ達が追えないよう進路を阻む。
「あなた方のお相手は私が務めさせて頂きます。まあ、英雄の弟子を捕獲するまでですが」
その口ぶるから察するに、エレクトロ達は懲りずにミキを攫いにきたようだ。
「そんなことさせないわよ。ドラードン、凍える——」
「待て、リオ!」
リオがドラードンに指示を出すのを、キリハが制する。
「こんな所で君のドラードンが凍える風なんて使ったら、ミキちゃんごと吹っ飛ぶぞ!」
それは確かに、その通りだ。
リオのポケモンは通常よりも相当強化されている。なので凍える風も相当な威力なのだが、今回はそれが裏目に出てしまう。
「ペガーン、僕らが行こう」
キリハはペガーンに指示し、ミキの元へ行こうとするが
「お相手は私と言っているでしょう。トロピウス、ダイヤブラスト」
トロピウスは宝石のように輝く白色の光線を発射し、ペガーンの動きを牽制する。
さらに
「コクジャク、エアスラッシュ!」
後方から空気の刃が飛び、リオのドラードンを切り裂いた。
「そっちばっか目いってたら、すぐに撃墜すんぜ」
後ろには、コクジャクを出したフォレスの姿。
この状況、よく考えたらキリハとリオは敵に挟み撃ちされている状態だ。
「……こうなったら」
「やるしかないね」
キリハとリオは、それぞれの敵と向き合う。



「さて、僕としてはそっちから来てくれるのが好ましいんだけどね。少女誘拐犯なんてレッテルは絶対に貼られたくない」
「私だって誘拐されたいなんて思わないよ。だから自分から出向いたりはしない」
ミキはキッパリとそう言い、ソンブラはやや面倒そうに溜息を吐く。
「……エレクトロ様は、三分だけこのポケモンの使用を認めてたな。正直あんまり長引かせたくないし、使っちゃうか。出て来て、フィニクス」
ソンブラが繰り出したポケモンは、一言で言って火の鳥、もしくは不死鳥。
紫色の体に、轟々と燃える炎の翼。その勇ましい姿は、鳥も龍にも見える。
不死鳥ポケモン、フィニクス。炎・ドラゴンタイプで、ゴルドーの進化系だ。
「フィニクス、エアスラッシュ」
フィニクスは翼を羽ばたかせ、空気の刃を無数に飛ばす。
「ゴルドー、避けて!」
ゴルドーはミキに掴まられながらも、必死で襲い来る刃を回避していく。
「ふーん。まあゴルドーにしては速いけど、僕のフィニクスには及ばないかな。火炎放射」
フィニクスは空に火炎を放ったかと思うと、次の瞬間、上空より火の雨が降り注ぐ。
「熱っ……ゴルドー!」
ゴルドーは降り注ぐ火の雨からミキをなるべく守ろうと、直撃を受け、どんどん降下していく。
「そのゴルドーの特性は炎の体だよね。だったら火炎放射も効く。さてフィニクス、彼女を回収してくれ」
フィニクスは今にも墜落しそうなゴルドーをついばみ、ソンブラの元へと持って来る。
「……あー、あの変態サイエンティストの作った薬とか使うの嫌だけど、しょうがないか——」
そう言いながらソンブラは、暴れるミキの首筋に小瓶の中に入った液体を一滴垂らす。すると瞬く間にミキは昏倒し、動かなくなった。
「さて、これで任務達成。あとは報告だけだな」
そしてソンブラはエレクトロの元へ行き、簡単に報告。その後プラズマ団は、よってたかってキリハとリオに集中攻撃。二人もミキを人質に取られ、何も出来ず帰還した。

回想終了。



キリハはその場にいた全員にありのままを告げた。
すると真っ先に動いたのは他でもない、ミキの実兄、ザキだ。
「おいキリハてめえ!何やってやがったんだ!」
ザキはキリハの胸倉を掴み、怒鳴り散らす。いや、激怒している。
「……本当に、すまない」
「それで済むとでも思ってんのか!」
「…………」
キリハは何も言えず黙りこくってしまい、ザキは放るように手を離し、どこかへと歩き出そうとする。
「おいザキ!どこに行く気だ!」
「決まってんだろ!P2ラボだとかいう、奴らの拠点だ!」
「でもそこは、偽のNが流した情報だ!でたらめかもしれないし、罠かもしれないだろ!」
キリハは叫び、ザキを羽交い絞めにする。
「知ったことか!何もしないよりはマシだろうが!」
「少し落ち着け!下手に動いたら、また何が起こることか……」
「てめえは冷静過ぎんだよ!これが落ち着いてられるわけねえだろ!」
と、ますます二人がヒートアップしていくなか、二人の鼻を、何かがくすぐった。
何か、甘い香り。その香りのせいか、二人の炎は、冷めてしまった。
「二人とも熱くなりすぎ。ザキの気持ちも分かるけど、今はがむしゃらに動いても、傷口が広がるだけでしょ。キリハも落ち着けとか言っておきながら、自分がヒートアップしてるし」
二人を静めたのは、リオ。そしてその傍らにいるポケモン、リーフィスだ。
リーフィスは甘い香りを分泌しており、その香りは戦意を喪失させる効果がある。二人が落ち着いたのも、それのお陰だ。
「……悪かったよ」
「いや、僕もだ。……それにしても、リオに説教されるとは、僕も混乱してたんだな」
とりあえず落ち着いた二人。
この後、とりあえずP2ラボが本当に奴らの拠点なのかを調べるべく、リオとキリハがそこへ向かった。
他の者はその情報がガセだった時のためにそれ以外の場所を探す、という事となった。
この時キリハもザキもリオも、誰もがミキが攫われたことに心を痛めていただろう。
だが最も傷ついていたのは……他でもない、実兄でも上司でもない——師であるイリスだった。



今回は回想シーンがほとんどですね。ミキが誘拐される工程が書かれています。ちなみに変態サイエンティストはアシドのことです。後半はキリハとザキがヒートアップしましたが、リオのリーフィスで沈静化。まさかリーフィスにこんな使い道があったとは……霧火さん、なんかすいません。さて次回はイリスが思い悩みます。鬱っちゃいます。お楽しみに……?