二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 306章 待機中 ( No.360 )
日時: 2011/11/04 16:15
名前: 白黒 ◆KI8qrx8iDI (ID: GSdZuDdd)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

「…………」
P2ラボに囚われているミキ。イリス達は拷問か何かを受けているとでも思っているのだろうが、その待遇は思いのほかよかったりする。
「あれあれー? さっきから黙りこくってるけど、大丈夫ー?」
フレイがミキの頬をペチペチと叩きながら言う。
ミキは今、やけに綺麗に片付いている部屋にいる。
手には枷がはめられ、モンスターボールも没収されているが、一日三食(これがかなり美味)、風呂もあって、監視が三人つくが、ミキは基本的に不自由ない生活を送っていた。
ちなみに監視役とは、フレイ、レイ、サーシャの三人だ。
全員女性(フレイは少女と言うべきか)を選んでいる辺りも、気遣いを感じてしまう。
「……私を拘束するのは分かるけど、なんでこんなまどろっこしいことを……」
ミキは思わず一人ごちる。
「捕まえたら、すぐにでも人体実験でもされるのかと思って覚悟してたのに……」
「あーそれかー。それはねー……」
フレイが間延びした口調で説明を始める。
「アシドが君——正確には英雄君だけど——の捕縛に失敗した途端、用意してた実験プランとかを詰め込んだデータを全部消しちゃったんだよねー。だから今は、新しく準備が整うまで待機中ー」
とは言っても、データを消した張本人は現在、怒りの心頭でバトルをしているが。
「……まあですが、安心などしないでくださいね。わたくし個人としては、今すぐにでもあなたを地下の拷問部屋に連れて行きたい気分なのですから」
レイは、氷柱のような冷たく鋭い声で言い放った。
「レイ様……」
「レイは前と変わってちょっと怖くなったねー」
フレイが言う。
「英雄は周りに影響を及ぼすって、エレクトロは言ってたけどさ、それってあたし達にも言えることなんだよねー。アシドは最近欲求不満だし、レイは怖くなるし、ドランは故郷がどうのとか言い出すし、エレクトロとガイアは……まあ変わんないけど、フォレスは悟った風な男前になるしで、あたし達も英雄君の影響を受けてるんだねー」
フレイは気が抜けていて、能天気なキャラだと思われがち……というかまるっきりそうなのだが、稀にこういう真理を突く発言をすることがある。
「もしかしたら英雄君って、本当は——」
とそこで、フレイの言葉は中断される。何故なら

バガァン!

と、扉が勢いよく吹っ飛ばされたからだ。
フレイは地面に寝そべったままだが、レイとサーシャは素早く立ち上がり、扉の方を見据える。
そしてそこにいたのは、ザキとシルラだった。



「マンムー、戻って!」
ユキナは今正に気合球を喰らう直前だったマンムーをボールに戻す。
「はぁ? なんだよ、交代かよ。ここに来てビビッたか?」
「べっつにー? ただ、勇敢と無謀は違うってね☆」
そんなことを言いつつ、ユキナは違うボールを取り出す。
「よし、じゃあ次はこのポケモン、バクーダ!」
ユキナが交代で出すポケモンは、噴火ポケモンのバクーダだ。赤く、足が短いラクダのようなポケモンで、背中の二つのコブは火山のようになっている。
「そんじゃ行っくよ♪ バクーダ、日本晴れ!」
バクーダは背中の火山から燃え盛る球体を天空に打ち上げ、辺り一帯の気候を、『日差しが強い』状態にする。
「さて、それじゃあ攻めるよ☆バクーダ、火炎放射!」
バクーダは日本晴れで威力が増大した火炎を放つ。
「オンネット、気合球だ!」
オンネットも気合を凝縮した球を放ち、火炎放射を相殺する。
「サイコバレット!」
そしてすぐさま銃弾のような念動力を無数に放ち、バクーダを攻撃。
「くぅ、バクーダ、噴火!」
バクーダはサイコバレットを耐え切り、背中の火山を、文字通り噴火させる。
それによりオンネットは降り注ぐ溶岩の直撃を受け、大ダメージを受けた。
「チッ、オンネット、シャドークロー!」
「バクーダ、火炎放射!」
オンネットが影の爪を構えて突っ込んでくるのに対し、バクーダは口から火炎を放射して、オンネットを迎撃する。
「もう一度火炎放射!」
そして再度、火炎放射を放つ。
「そんなに何度も喰らうかよ!オンネット、シャドークロー!」
オンネットは両手に影の爪を作り出し、襲い掛かる火炎放射を切り裂く。そしてバクーダに接近し、バクーダを引き裂く。
「おまけだ、気合球!」
さらに気合を凝縮した球を至近距離からバクーダにぶつける。バクーダは数歩後ずさっただけだが、結構なダメージだろう。
「……さあて、そろそろ決めるとするかな。オンネット、シャドークロー!」
オンネットは再度影の爪を作り出し、腕を大きく振りかぶる。
そして

「バクーダ、オーバーヒート!」

バクーダは全身から膨大な炎を放ち、オンネットを包み込む。
「な……オンネット!」
炎が消える頃には、オンネットは黒焦げになって倒れていた。
「くっそ……僕のオンネットがやられるとは……!」
アシドはオンネットをボールに戻し、次のボールを構える——
ピリリリリ
——前に、アシドの白衣のポケットから電子音が鳴った。
「通信か……」
アシドは苛立ちながら白衣から小型の通信機を取り出す。
「何だ、誰だ、何の用だ?」
相手も分からないのに、随分な第一声だった。まあ、その辺はアシドらしいが。
「ん、ガイアか? ……ああ、あれか。今んとこ6割方完成してるけど……ああ? カートリッジ? 英雄のポケモンを使うって? ……しゃーねえ、分かったよ。今はあのブラック野郎が相手してんだろ。だったら次はフォレスにでもやらせる。あと足りないのは、13のタイプだからな……あ? 多すぎだって? うっせえよ!あいつを製造すんのがどんだけ大変か分かってんのか!」
アシドはどうやらガイアと通信しているようだが、最後の方はキレながらの通信で、終わるとブチ切るという表現がよく合う切り方をした。
「おい、僕は所用でもう帰る。今更ながら思うと、お前なんかの相手をして時間を喰う方がよっぽど無駄だ。つーわけだ、じゃあな」
アシドは、ジバコイルに乗ってP2ラボへと帰還していく。
「……んーまあ、多少なりとも楽しめたし、よしとするかな☆」
そしてユキナも、どこかへと去っていく。



今回は前半にミキが登場、フレイ達との会話シーンで、最後にはザキとシルラが突入してきました。後半はアシドとユキナのバトル、決着でした。いや、終結というべきですか、決着は着いてないですからね。ちなみにアシドのガイアとの通信内容は、勘の良い人なら何の事を言っているのか分かるかもしれません。ヒントはカートリッジとP2ラボです。ここまで言えば、分かる人は分かるでしょう。では次回はイリス辺りのバトルにして……いや、他の人のバトルもしないとな。まあともかく、次回もお楽しみに。