二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 354章 救世主 ( No.440 )
- 日時: 2011/11/03 00:46
- 名前: 白黒 ◆KI8qrx8iDI (ID: GSdZuDdd)
- 参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html
イリスはヤーコンとの再戦を終え、次のジムがある街、フキヨセシティへと向かうべく、6番道路とフキヨセを繋ぐ電気石の洞穴——の少し手前にいた。
というか、歩いていた。
「これで七人だから、ジムリーダーはあと三人か……あれ? でもソウリュウジムのアイリスちゃんは含まれてない? ……父さん知らなかったのかな……?」
とか気楽なことを考えていると
パシャパシャ
どこからか水の音、否、水面を歩く音が聞こえてくる。
たまたま偶然気まぐれを起こしてイリスはその音の方向を向くと、これまた偶然、そこには知り合いの姿。
PDOヒウン支部統括、リオだ。
いつもならヒウン支部にいるはずなのだが、生憎そこは先日のプラズマ団の強襲により倒壊し、今は更地となっている。
そのリオは裸足で、6番道路を流れる川、通称『四季の川』を歩いていた。
「……リオさん」
「わっ!?」
イリスはなんとなく近寄って背後から声を掛けると、リオは驚いて転びそうになる。
「おっと……うおっ!?」
イリスはそんなリオの腕を取ったが、思いの外重力が強く、イリスは強く引っ張られてそのままリオと一緒に
ドッパーン!
と川に落ちた。
「成程、そんなことがあったのか」
場所は変わって電気石の洞穴付近にあるリオ宅。そこには何故はPDOヒウン支部統括補佐、キリハがいた。
曰く
「いや、僕ってPDOに入る時、結構家族に反対されてね。半ば家を飛び出す……家出するようにPDOに入隊したからさ、家に帰りづらいんだよ。だから基本的にヒウン支部で寝泊りして、長期休暇の時なんかは適当にホテルを取ったりするんだけど……ホテルって高いんだよね……」
まあ、そういうことらしい。
イリスはやっと乾いた服を着つつ聞く。
「ところでリオさんは、何故あんなとこを歩いていたんですか?」
イリスは何となくそう聞いてみた。
「ん? ああ、それは……あそこの川って、奥に洞窟があるの、知ってる?」
「いえ、知りません」
イリスが即答すると、だよね、とリオは返す。
「まあ、なんというか、昔何度かちょっとだけその洞窟に行ったことがあるんだけど、うーん……まあ、気まぐれ?」
どうやらそうことらしかった。
「なんか気になるね、それ」
キリハが言う。
「……それじゃあ、行ってみますか?」
イリスは軽い調子でそう返す。
するとその後、思いの外皆ハイになってしまい
イリスの一言が引き金となり、三人は四季の川の先にある洞窟へと向かうこととなった。
「久しぶりに見たけど、やっぱり暗いね」
三人はフキヨセの洞穴と呼ばれるらしい洞穴へと足を踏み入れた。リオは周りをキョロキョロしていたが、やがて普通に歩き出す。
「……暗い。見えない」
突然、キリハがそんなことを言い出す。
「確かに、これ以上奥に行くと何にも見えないですね……」
イリスも便乗する。
「それじゃあ……こうしよっか」
リオはボールを一つ取り出し、宙へと放る。するとボールは開き、中から一体のポケモンが現れる。
出て来たポケモンは、シャンデリアのような姿のポケモン、シャンデラ。
シャンデラは自らの炎で辺りを照らし、真っ暗な洞穴は不気味だが先が見えるくらいには明るくなった。
「炎タイプのポケモンを使うのは良いアイデアだけど、この場合ポケモンのチョイスが悪いよね。これじゃあ肝試しみたいだ……」
「文句言わない」
キリハがぼやくのを、リオはバッサリと切って捨てる。
その後三人は、特に会話もせず黙々と歩き続けた。
洞窟のかなり深い所まで来たイリス達は、こんな場所に一人の老人を発見した。
「む? こんな所に人とは、それも三人……」
老人はリオ、イリス、キリハの順で一瞥すると、こちらに近寄ってきた。
「懐かしや懐かしや、久しき人も。どうじゃ、折角だから、じじいの話に耳を傾けてみては」
老人は意味深な事を言うと、次に唐突に語り始めた。
ちなみに、イリス達は、はい、どころか首を縦に振ってすらいない。
「その昔、この世には戦争があった。人間同士の、くだらない諍いじゃ。その戦乱は長く続いた。それだけならよかったのじゃが、しかし人間が招いた戦乱は、ポケモン達にも害をなすようになってきた。ある時、人間が起こした戦で、ポケモン達が多く棲む森に火がつき、大火災が起きた。ポケモン達は混乱し、慌てて逃げ惑ったが、人間達の争いのせいで森の地形は変わっており、各所は岩で塞がれたりしていて、ポケモン達は逃げられなかった」
イリスはその話を、今初めて聞いた。
「だがそんな折、救世主は現れた。その名もコバルオン、テラキオン、ビリジオンという三体の伝説のポケモンじゃ。ビリジオンはポケモン達を降り掛かる火の粉から守り、テラキオンは怪力で道を塞ぐ岩石を砕いき退路を創り、コバルオン慌てふためくポケモン達を導き救った。三体の救世主はポケモン達を非難させると、戦乱を起こした人間に酷く憤慨し、その戦乱の元凶となった人間に制裁を加えた」
老人は昔を思い出すように語る。
「その頃人間は、ポケモン達を暴力で支配していての、救世主達はそんな時代を生きてきた経緯から人間を信用しなくなり、それぞれ散り散りになってしまった」
老人の語り口から、その悲惨な思いがイリスに伝わってくる。
「だが、その救世主のうちの一体。ポケモン達を導き救ったコバルオンは、このフキヨセの洞穴に潜んでおる」
『!?』
その老人の言葉に、三人は目を見開く。
「しかし先ほど言ったように、かのポケモンは長く人間不信になっておる。その心を開くのは、生半可なことではできまい」
老人は一歩踏み出し、弱々しい指でイリスを指差す。
「しかしお主。お主は何か、力ではない良いトレーナーと見た。お主ならもしや、コバルオンの心を開けるやも知れぬ」
「ぼ、僕が……?」
イリスはいきなりで、上手く頭が回らない。
「そうじゃ。頼む、コバルオンに分からせてくれ。人間は悪い者ばかりではないと。良い人間も、多く存在するのだと」
老人はイリスに懇願する。それは弱々しい体とは逆に、力強い懇願だった。
「そう言われても……」
イリスはチラリとキリハの方を向くと、キリハはフッと微笑んだ。
リオの方を向くと、グッと親指を突き立てられた。
「……分かりました。やりましょう」
かくして、英雄イリスは、救世主と対面する事となった。
今回は本編が長いので、あとがきは短めに。今回は救世主と呼ばれしポケモン、コバルオン達の話が出ました。正直バトルがないとぐっだぐだになる白黒ですので、今回は色々不安です。まあとにかく、次回はイリスとコバルオンが対面し……まあその後は簡単に予想できるでしょう。では次回もお楽しみに。