二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 396章 空手 ( No.525 )
日時: 2012/07/07 01:34
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: QpE/G9Cv)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

「任せたぞ、デンチュラ!」
 リーテイルと入れ替わりに繰り出したのは、蜘蛛のような姿の虫・電気タイプのポケモン、デンチュラ。
 イリスの一年前からのポケモンなのだが、打たれ弱さからどうにも出番が少ない。
「行くぞデンチュラ。まずはシグナルビーム!」
 デンチュラは色彩を束ねたようなカラフルな光線を発射する。なかなかの速度でナゲキに向かっていくが、レンブは動じない。
「どう来るかと思えば、拍子抜けだな。ナゲキ、岩石封じ!」
 ナゲキは地面を隆起させ、岩石の壁でシグナルビームを防いだ。
「忘れたのか? 我がナゲキの岩石封じは、如何なる遠距離攻撃をも防ぐ、絶対の壁。その程度の攻撃など効かん」
「ええ知ってますよ。でもその技、確かにどんな攻撃でも防げるっぽいですけど、大きな穴があるんですよね」
 余裕綽々といった感じでイリスは言う。
「その穴は相手が相手なら本当に致命的で、大敗の可能性もある欠陥です」
「……何が言いたい」
 訝しげにそう返すレンブ。そしてその時、隆起した岩石が地面へと吸い込まれるように戻っていき——

 ——ナゲキの目と鼻の先に、デンチュラが鎮座していた。

「なっ!」
 流石のレンブも、これには驚く。なにせ、巨大な蜘蛛がすぐ目の前に接近していたのだ。無理もない。
 しかもデンチュラは、体に電気を帯びている。帯電で攻撃力を高めたようだ。
「その岩石封じは、どんな攻撃も防ぐ。けれど、代わりに視界が塞がれてしまうのが欠点です。デンチュラの低い姿勢なら、完全に岩が沈降しないと目視できませんからね」
「くぅ、だがそれだけだ。それだけではナゲキは倒せんぞ。山嵐!」
 ナゲキは腕を伸ばしてデンチュラにつかみかかろうとするが、デンチュラはスッとその腕をかわす。
「ぬぅ、冷凍パンチ!」
 次は凍てつく拳を連続で繰り出すが、どれもデンチュラのつかみどころのない動きで回避されてしまう。
「格闘家っていうのは、相手の動きを先読みして攻撃を繰り出すらしいですけど、このデンチュラの動きは読めないでしょう。デンチュラ、シグナルビーム!」
 ナゲキの拳を紙一重でかわしたデンチュラは、すぐにカラフルな光線を発射し、ナゲキを押し返す。
「追撃だ、エナジーボール!」
「くぅ、岩石封じ!」
 自然の力を込めた球を発射するデンチュラ。対するナゲキは岩石の壁を作り出し、防御態勢を取る。
 視界が塞がれるのが弱点なら、すぐに壁を戻せばいい。そう考えての指示だったが、
「それから、岩石封じのもう一つの欠点を挙げるなら」
 イリスはまた、そんな言葉を投げかける。
「それはポケモンから放たれる攻撃しか防げないこと。全く関係ない、全然違うところから攻撃が飛んできたら、避けられないことです」
 そして、デンチュラに指示を出す。

「デンチュラ、雷!」

 雷鳴が轟き、刹那、激しい雷電がナゲキを襲った。正面しか守れない岩石封じは全く役に立たず、電撃がナゲキの全身を駆け抜ける。
「ナゲキ!」
 ナゲキはばたりと倒れこむと、それっきり動かなくなる。戦闘不能だ。
「戻れ、ナゲキ」
 倒れたナゲキをボールに戻すと、また迷いなく次なるボールをつかむレンブ。
「そのデンチュラの力は理解した。成程、柔よく剛を制するナゲキを、変幻自在の動きで逆に制するとは、考えたものだ。ならばこちらは、その幻惑すらも打ち砕くほどの、圧倒的な破壊力で攻めるぞ。ダゲキ、押して参る!」
 レンブが次に繰り出すのは、青い体に道着を纏ったポケモン、ダゲキ。ナゲキとは双璧をなす空手ポケモンだ。
「ダゲキ、ストーンエッジ!」
 ダゲキは周囲に鋭い岩を浮かべると、一斉にそれらを射出する。
「デンチュラ、かわしてシグナルビームだ!」
 襲い来る岩を俊敏な動きで回避し、デンチュラはカラフルな光線を発射する。
「その程度では、我がダゲキは怯まんぞ! 炎のパンチ!」
 次にダゲキは、拳に炎を灯し、デンチュラに殴り掛かる。
「かわしてエナジーボール!」
 後ろに跳んで炎の拳をかわすと、今度は自然の力を凝縮した球を発射。ダゲキに直撃するが、
「効かん! ダブルチョップ!」
 ダゲキは気にせず前進し、強烈な手刀を二撃、デンチュラに叩き込む。
「ぐぅ、シグナルビーム!」
「炎のパンチ!」
 シグナルビームを発射してダゲキを攻撃するデンチュラだが、ダゲキはそんな光線をものともせず、炎が灯った拳を繰り出す。
「しぶといというか、打たれ強すぎる……エナジーボール!」
 繰り出される炎のパンチに対し、デンチュラはダゲキの逞しい腕にエナジーボールを発射する。それによりダゲキの拳の軌道は大きく逸れ、また態勢も崩れる。
「よし、チャンスだ! デンチュラ、雷!」
 デンチュラは超高電圧の雷撃を、天に向けて放つ。すると次の瞬間、雷鳴が響き渡り、激しい稲妻がダゲキを襲う。
「よし、決まった」
 帯電で攻撃能力を高めているデンチュラだ。如何にダゲキといえども、早々耐えられるものではない。そう思った、その時だった。

「ダゲキ、炎のパンチ!」

 轟く雷電の中から、ダゲキが飛び出す。その拳には炎が灯っており、そして、デンチュラを狙っていた。
「! しまった……デンチュラ!」
 いくらデンチュラでも、もう避けられない。ダゲキの拳はデンチュラを確実に捉え、吹っ飛ばしていた。
「くっ……戻れ、デンチュラ。よく戦ってくれた」
 デンチュラを労わりつつボールに戻すイリス。
 正直、このダゲキには驚いた。まさかデンチュラの猛攻をここまで耐えるとは。
 だがそれも、永遠ではない。あと何発か、強力な技を叩き込めれば、きっとダゲキは落ちる。
「だったらお前だ。出て来い、ダイケンキ!」
 ここでイリスが繰り出すのは、耐久力があり、かつ強力な技を多く覚えているダイケンキだ。ダイケンキは大きく吠えると、ダゲキを睨みつける。
「ダイケンキか、威勢がいいな。相手にとって不足なし。行くぞダゲキ、ダブルチョップ!」
「ダイケンキ、シェルブレード!」
 ダゲキは手刀を構えてダイケンキに飛びかかり、ダイケンキもまた、アシガタナを抜いて迎え撃つ。
 ダゲキとダイケンキ、二匹のポケモンの二つの刀が、互いに鎬を削る。



白黒です。なんだか四天王線を早く終わらせたいなーとか思っていたら、キーが乗ってきました。それはさておき、レンブ戦その四です。正直、ダゲキが半端ないです。デンチュラの攻撃をあれだけ喰らっておきながら耐えてるって、相当ですよ。では次回はそのダゲキとダイケンキのバトル。レンブ戦はあと二回くらいですかね。では、次回もお楽しみに。