二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 398章 柱 ( No.527 )
- 日時: 2012/07/10 22:04
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: QpE/G9Cv)
- 参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html
「ローブシン、マッハパンチ!」
ローブシンは拳を構えると、その老いた体からは想像できないようなスピードでリーテイルに殴り掛かってきた。
「っ、かわせ!」
ローブシンが拳を突き出す寸前に、リーテイルは空中へと逃げ、回避する。しかし、ローブシンの狙いは、リーテイルに攻撃することではなかった。
「ローブシン、引き抜け」
ローブシンは先ほど投げつけるで投げ、壁にめり込んでいたコンクリート柱を引き抜く。どうやら、これを回収するためのマッハパンチらしい。
「なんにせよ、あの投げつけるは脅威だな。遠くから攻めるぞ。エアスラッシュ!」
リーテイルは背中の葉っぱを羽ばたかせ、空気の刃を無数に飛ばす。
しかし、
「ローブシン、防御せよ!」
ローブシンは両手に携えた柱を自分の前に置き、壁のようにその後ろに隠れる。そして実際、柱は壁の役割を担ない、エアスラッシュを弾き飛ばした。
「投げつける!」
そしてすぐさま、柱がリーテイルへと投げつけられる。かなりのスピードでその柱は飛んでいき、気付けばリーテイルの目前まで来ている。
「くっ、リーフブレードで弾き返せ!」
リーテイルは尻尾の葉っぱを振るって柱を弾こうとするが、投げつけられた柱の運動エネルギーはかなりのもので、若干速度を落とし、軌道をずらす程度のことしか出来ず、リーテイルは逆にに弾き飛ばされた。
「今が好機だローブシン、毒突き!」
リーテイルが地面に落下したのをいいことに、ローブシンはもう一つの柱を槍のように持ち、リーテイルへと突き出す。しかもその先端は、猛毒を帯びている。
「やばい……リーテイル、ドラゴンビート!」
ギリギリのところでリーテイルは持ち直し、龍の鼓動のような咆哮を放つ。ローブシンは屈強で、それで吹っ飛ばすことはできなかったが、怯んだ隙に空中へと退避できた。
だがリーテイルが咆哮を放ったことで、天井に突き刺さっていた柱が抜け落ち、ローブシンの手中へと収まってしまう。
「くぅ、あの柱が厄介だ。攻撃力は高いし、防御にまで使われる……!」
柱を持つことの利点を最大限に利用したレンブとローブシンに対し、呻くイリス。
付け加えるなら、ローブシンは投げつけるで格闘タイプに欠けている『遠くの敵を攻撃する』ことを解消しているうえ、マッハパンチにより一度投げた柱を回収し、弾切れも起こらないよう工夫している。
ここまでローブシンというポケモンの戦術を十全に生かすトレーナーは、レンブをおいて他にいないだろう。
「ローブシン、投げつける!」
「リーテイル、回避だ!」
リーテイルは空中へと飛び出し、飛来する柱を避け、ローブシンの上を取る。だがローブシンはそれにすぐさま反応し、真上へと柱を連投。しかしこれも、リーテイルは軽々とかわした。
これで、ローブシンは二本の柱を失ったことになる。
「ローブシンが柱を持っていない今がチャンスだ。リーテイル、エアスラッシュ!」
リーテイルは空気の刃を無数に放つ。防御手段を持たないローブシンは、その遠くからの見えない斬撃をなされるがままに喰らった。
「一気に攻め込むぞ! リーフブレード!」
さらに尻尾の葉っぱを構え、ローブシンへと突貫。血管の浮き出た体を切り裂く。
だが、この程度で怯む四天王のエースではない。
「ローブシン、捕まえろ!」
ローブシンはすぐに立ち直ると、リーテイルに手を伸ばす。リーテイルは避けようとしたが、ギリギリのところで捕えられてしまう。逃げようとしても、物凄い力で逃げ出せない。
「だった無理やりにでも脱出するんだ! リーフブレード!」
拘束されながらも、リーテイルは葉っぱの斬撃を繰り出す。地に足を着けていると尻尾は使えないので、背中の葉っぱで幾度となく切り刻む。
だが、ローブシンは怯まなかった。
「ローブシン、地震だ!」
ローブシンはリーテイルを掴んだまま、足を踏み鳴らし、震脚して地震を起こす。
だが、地震は地面タイプの技。飛行タイプを持つリーテイルには当たらない。足が地面に着いていてもだ。
なので、イリスは疑問符を浮かべていた。四天王ならそのくらいのこと、知っていて当然なのに。その無駄な行動の意味が分からなかった。
だがそれも、すぐに分かることとなる。
突然、リーテイルの背中にコンクリートの柱が激突したのだ。
「なっ、リーテイル!?」
一瞬イリスはわけが分からなかったが、すぐに理解する。つまり、さっきローブシンが放った地震は、このためだったのだ。
ローブシンは真上に向かって柱を投げた。そうすれば必然的に、柱は天井にめり込む。それをローブシンは、さっきの地震で“揺り落としたのだ”。
「今だ、マッハパンチ!」
ローブシンはリーテイルが柱の直撃を受けて動きが止まった隙を見逃さず、素早い拳を叩き込む。それにより、リーテイルはローブシンが投げたもう一つの柱がめり込んだ壁まで吹っ飛ばされた。
「もう一度マッハパンチ!」
再度マッハパンチが飛び、リーテイルも柱同様、壁にめり込む。効果はいまひとつだが、ローブシンの攻撃力がかなり高いため、相当なダメージだ。
ローブシンはめり込んだリーテイルをよそに、柱を引き抜く。そして、
「ローブシン、毒突きだ!」
柱を二本使用した毒突きを、リーテイルに炸裂させた。一撃目は払うような攻撃で、壁から引っこ抜き、二撃目で突き飛ばす。
リーテイルは壁に激突し、砂煙をあげる。
マッハパンチでもかなりの威力なのだ。効果抜群のこの技では、立ち上がるのは絶望的である。
実際、この時点でレンブは勝ちを確信していた。勝負は最後まで分からないとはいえ、瀕死のポケモンにまで攻撃することはない。オーバーアタックは原則禁止だ。なので、ローブシンの破壊力に自信を持つレンブからしたら、リーテイルはもう戦闘不能だと踏んでいた。
だがレンブは、知らなかったのだ。
代々受け継がれる、イリスのエースポケモンの、奇跡的なまでの打たれ強さを。
「リーテイル、リーフストーム!」
リーテイルは砂煙から飛び出すと、数多の葉とともに、荒々しく吹き荒れる嵐のような爆風を放った。
「なにっ! まだ立ち上がれるのか!」
レンブとローブシンは、驚愕の表情を浮かべる。
イリスのエースポケモンの耐久力の高さは、当然と言えば当然だ。ダイケンキは激流、リーテイルは深緑と、ピンチになって発動する特性があるのだから、打たれ強くなければいけないのは必然である。
だが、そんな理屈を抜きにしても、イリスのエースポケモンは最もイリスを信頼している。だからこそ、最もイリスの力の影響を受けるのだ。
緑色の嵐はローブシンを軽く呑み込み、その肉体を切り刻む。リーフブレードの比ではないその攻撃に、ローブシンはいとも容易く崩れ落ちた。
今回は本文がやたら長くなってしまったので、急ぎ足です。レンブ戦終了、次回は次の四天王戦へと続きます。では、お楽しみに。