二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 405章 処刑 ( No.541 )
- 日時: 2012/12/01 05:35
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: xy6oYM/9)
- 参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html
「ギャンブルオン、キリキザン」
ドンカラスを戻したギーマの最後のポケモンは、刀刃ポケモン、キリキザン。
赤と黒を基調とした全身スーツの風貌に、プロテクター状のパーツ。胴体、頭部、両腕には、煌めく銀の刃がその姿を晒している。
「さて、私は信条として、どんな不利な状況であろうと、大敗の可能性があろうと、勝負自体を自分から降りることはしないと誓っているが……英雄とやら、君はどうだ?」
「激しく同意しますよ。ディザソル、神速!」
ギーマの話をすぐに打ち切り、ディザソルは超高速でキリキザンに突撃する。
「続けてスプラッシュ!」
神速は鋼タイプのキリキザンには効果いまひとつ。大したダメージにはならない。なのでそのまま、飛沫を上げる水の一撃で追撃。キリキザンを吹っ飛ばした。
「畳み掛けるよ、辻斬り!」
ディザソルの猛攻は止まらず、鋭い鎌を向け、キリキザンに突っ込んでいく。
しかしここで、四天王は動き出した。
「キリキザン、ハサミギロチン」
突如、キリキザンの両腕の刃が巨大化し、断頭台のような禍々しい形状となる。
そしてその刃を交差させるように振り、ディザソルを迎撃する——
「ディザソル、跳べ!」
が、寸でのところでディザソルは、尻尾をばねのようにして空中へと逃げ、その一撃を回避。キリキザンから距離を取った。
「ハサミギロチン……まさか、一撃必殺の技が出るなんて……」
ハサミギロチンは、当たれば一撃で戦闘不能となる技。代わりに命中率が低いものの、残り一体しかポケモンがいないイリスにとって、この技の存在は大きなプレッシャーとなる。これも、ギーマの作戦の一つなのだろうか。
「くっ、でも今は、攻めるしかない。ディザソル、スプラッシュ!」
ディザソルは全身に水流を纏い、水飛沫を上げながらキリキザンに突っ込んでいく。
「鉄壁」
しかしキリキザンは、全身を鋼鉄のように硬化させ、その一撃を受け切る。一撃目は吹っ飛んだが、今回は身じろき一つしない。
「ハサミギロチンだ」
そして二回目のハサミギロチン。処刑人の剣の如き刃が、ディザソルの体毛を掠める。
「っ……距離を取って怒りの炎!」
「そう簡単には逃がさないさ。キリキザン、電磁波」
ディザソルが距離を取ろうとするところに、キリキザンは微弱な電磁波を放ち、麻痺状態にする。そのためディザソルは、そこで動きが止まってしまった。
「ハサミギロチン」
「やばい……避けろディザソル!」
ディザソルは後方に大きく跳び、キリキザンが振るう巨大な刃を回避した。何度避けても、内心穏やかでない行動だ。
ギーマは今までのやり取りを見て、小さく頷いた。
「ふむ……成程な。追い風の補助と電磁波があっても、ディザソルの身のこなしを完全に殺すことはできないか。ならば、キリキザン、辻斬り」
刃を構えてキリキザンは駆け出す。やはりハサミギロチンだけでなく、普通の攻撃技も持っていたようだ。
「受け止めろ、辻斬り!」
しかし普通の打ち合いなら、ディザソルにも分がある。キリキザンの刃を漆黒の鎌で受け止め、激しく競り合う。
が、しかし、
「足もとがお留守だぞ。ハサミギロチン」
キリキザンは空いている方の刃を巨大化させ、ディザソルの足もとを払うように、腕を振る。
当たれば一撃必殺。跳んで避けたいところだが、キリキザンにより上から辻斬りで押さえつけられている状態では、それも叶わない。どうやらディザソルが受け止めることをも見越しての辻斬りだったようだ。
絶体絶命の状況で、イリスがとった指示は——
「っ——怒りの炎!」
刹那、ディザソルの周囲から燃えたぎる炎が出現する。炎は勢いよくキリキザン——そしてディザソルを包み込み、その姿を隠す。
「吹き飛ばせ! スプラッシュ!」
そして次の瞬間、盛大な水飛沫とともに、消化されつつある炎の中からキリキザンが弾き飛ばされた。キリキザンは地面に強く打ちつけられるものの、受け身を取ってなんとか立ち上がる。
「……なかなか、危険な賭けだったな。まさか怒りの炎で自分もろとも炎で包むとは」
「そうでもしなきゃ、逃げられそうになかったものですからね。勝負に無茶はつきものです」
「だが、少し無茶をしすぎたんじゃないのか?」
ギーマはディザソルを見ながらそう言う。
確かに、ディザソルの身体はあちこちが焼け焦げていて、今までの蓄積ダメージも合わせ、かなり疲弊している。対するキリキザンは、こちらも大きなダメージを受けていることには変わりないが、鉄壁のお陰か、体力的にはまだ余裕であるような表情を見せている。
「加えて、そのディザソルは麻痺状態。キリキザンは、追い風の補助が継続中だ。もう既にかなり苦しい状況じゃないのか?」
それはギーマの言うとおりだ。疲労困憊のディザソルを倒すなら、もうハサミギロチンに頼らずとも、辻斬りだけで勝てる。しかしディザソルは、鉄壁を持つキリキザンに有効打を与えいくい。勝機がほとんど見えない危機だ。しかし、
「勝てる要素がないとか、勝ち目がないとか、そんなことが勝負を投げ出す理由にはなりませんよ。ギーマさん、あなたも最初に言っていたじゃないですか。そんなことを」
「……素晴らしい。その姿勢は称賛に値する。では、それに敬意を表して、一撃で決めるとしよう。キリキザン、ハサミギロチン」
キリキザンは死刑執行を宣告するかのように両腕を構え、刃を巨大化させる。そして追い風を受け、一瞬にしてディザソルへと接近し、刃を振るった。
当たれば終わり。避けても、麻痺状態のディザソルだ。二撃目に対応できるかどうか怪しいところ。だからイリスは、回避することを選ばなかった。彼が指示したのは、
「——辻斬り」
だった。
だが、ただの辻斬りではない。まず、キリキザンの腕の間をすり抜けるようにして跳び、頭上でバク宙をするかのように一回転。その回転力を利用して、尻尾の刃で腕を弾いた。
「っ……!」
ここで初めて、ギーマは驚愕の表情を浮かべる。
キリキザンの弾かれた腕は、前方に向けられたもの。刈るような動きの刃は、弾かれ、その切っ先を持ち主へと向けることとなった。
つまり、弾かれたハサミギロチンは、キリキザンを自身を切り裂いたのだ。
一撃必殺の刃によって、キリキザンは地に伏した。
「……congratulation」
最後にギーマは、そう呟いた。
さて、ついにギーマ戦が終了し、残る四天王は一人となりました。最終的にギーマは、自分のハサミギロチンにやられる結果となりましたが、つたわったでしょうか?正直不安です。では次回は最後の四天王、カトレア戦へと移行します。お楽しみに。