二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 408章 歪み ( No.548 )
- 日時: 2012/12/09 15:29
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: 0aJKRWW2)
- 参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html
「スプラッシュ」
刹那、メタグロスを包んでいた炎が消し飛んだ。
だがこれは、まだイリスの想定の範囲内。問題はここからどう動くかだ。
「メタグロス、メタルブラスト」
メタグロスは光線状となった大量の鋼を発射する。
「神速だ!」
だがその光線はディザソルには届かない。ディザソルはメタグロスの攻撃に合わせて地面を蹴り、鋼鉄の体に激突した。
「攻めるぞ。連続で辻斬り!」
ディザソルは攻撃の手を休めることなく、メタグロスの鋼鉄のボディを幾度となく切り裂き、切り刻んでゆく。往復しながら、回りながら、飛び跳ねながら、その身体に傷をつけていく。
「よし、スプラッシュだ!」
そして最後に、反撃し難いであろう背後から、水流を纏った尻尾をメタグロスに叩き付ける。大きく飛沫を散らし、メタグロスは前の足を一本折り畳むように倒れ込んだ——ように、イリスは見えた。
しかし、
「メタグロス、回転してスプラッシュ」
メタグロスは右前の足を拳のように固め、右後、左前の足を邪魔にならないよう折り畳み、残る左後の足を軸にして一回転——水流を纏った拳を、ディザソルに叩き込んだ。
「ディザソル!」
予想外の反撃だった。このメタグロスなら真後ろにいる相手への反撃は、よくても地震くらいなものだと思っていた。しかし叩き込まれたのは、スプラッシュ。
このメタグロス、切り返しがやたら速い。攻撃の際は休む間もなく攻め続け、受けても避けても二撃目が飛び、攻撃されても反撃される。このすぐに攻撃に移ることのできる力が、メタグロスの強さの秘訣のようだ。
「追撃なさい、メタルブラスト」
「くっ……怒りの炎!」
メタグロスは追い打ちの鋼エネルギーを発射し、ディザソルは少しでも威力を弱めようと燃え盛る炎を、盾のように前方へ放つ。
しかし結果は見えていた。メタルブラストが難なく炎を突き破り、ディザソルを撃ち抜いたのだ。
「もう一撃。メタルブラスト」
「神速!」
メタグロスが第二射を発射するが、それよりも速く、ディザソルは動き、メタグロスに突撃する。
「一旦引け、ディザソル」
しかしディザソルは追撃せずに、一歩後ろに下がった。すると予想的中というのか、飛沫を散らしながら、文字通りの鉄拳が目の前を通過していった。
「もう一度、神速!」
再びディザソルは突っ込む。至近距離からの突撃を、攻撃が空振ったせいで後ろを向いているメタグロスに喰らわせる。
「メタグロス、もう一回転して引き剥がしなさい」
「ディザソル、跳べ!」
メタグロスは再度回転して水流の拳を叩き込もうとするが、今度は上に逃げられる。そして、
「怒りの炎!」
ディザソルは燃えたぎる業火を放ち、メタグロスを包み込む。メラメラと燃える炎は、確実に鋼鉄の体を焼いていき、炎による傷を負わせる。
「これでとどめだ、スプラッシュ!」
そして最後に、全身全霊で水流を纏った尻尾を叩き込み、炎もろともメタグロスを吹っ飛ばす。
火傷と今までのダメージが蓄積し、限界を迎えたメタグロスは、遂に戦闘不能となった。
「戻りなさい、メタグロス」
カトレアはメタグロスをボールに戻すが、焦りや悔いの感情は見られない。
それもそのはず、メタグロスはこちらの手持ちの一匹を戦闘不能、二匹に決して小さくない手傷を負わせているのだから、十分な働きをしたと言えるだろう。
カトレアは次のボールを手に取る、二番手を繰り出す。
「麗らかな時間を頂戴……フォリキー」
カトレアの二番手は、未来予知ポケモン、フォリキー。ノーマル・エスパータイプで、キリンリキの進化系。尻尾の真っ黒な頭が特徴だ。
「フォリキー、瞑想」
フォリキーは静かに目を閉じ、戦神を研ぎ澄まして特殊能力を上昇させる。能力を上げて、一気に攻め込む気なのだろうか。
「だったらディザソル、神速!」
向こうが大技で来るのなら、こちらは手数で攻めるということで、ディザソルは超高速でフォリキーに突っ込んだが、
「ハイパーボイス」
衝突間近というところで、大音量の声の衝撃波を喰らい、足を止めてしまった。
「くっ、まだだ! 怒りの炎!」
「ハイドロポンプ」
ディザソルは負けじと燃え盛る炎を放つも、薙ぎ払うようにして放たれた水流でその炎は消され、ディザソルも大きく後退する。
「フォリキー、瞑想」
しかしフォリキーは追撃するようなことはせず、瞑想してひたすら精神集中に励む。使用技からして、やはり大技で一気に決めるつもりなのだろう。
「ディザソル、怒りの炎だ!」
ディザソルは大きく吠え、たぎる業火をフォリキーへと放つが、
「ハイドロポンプで迎え撃ちなさい」
薙ぐようにして放たれた超高圧水流によって、またも消化される。
だがしかし、二度も同じ手が通用するほど、イリスも馬鹿ではない。
「神速!」
消火時に発生した煙に紛れ、ディザソルは神がかったスピードでフォリキーに突撃する。そして、
「辻斬りだ!」
煙に身を隠しつつ、漆黒の鎌を振るい、フォリキーを切り裂かんとする。物理技で、効果抜群の攻撃だ。かなりの大ダメージが期待できる——
「フォリキー、ワンダールーム」
その瞬間、空間が歪んだ。
いや、イリスからは煙で視界が悪いから、ただの目の錯覚かもしれなかったが、一瞬だけ、ディザソルとフォリキーの周りの空間が、捻じれるように歪んだ気がしたのだ。
だが、そんなことは後回しだ。今まさに、ディザソルがフォリキーの胴を切り裂いた。瞑想の影響を受けない物理技で、効果抜群。これで急所にでも当たれば儲けもの。倒れなくても、このまま一気に決めよう。そう思っていたのだが、しかし現実はその予想は大きく外れていた。
「フォリキー、ハイパーボイス」
イリスは愕然とした。
突如、フォリキーは大声を上げ、その衝撃波でディザソルを吹っ飛ばす。かなりの威力だ……いやいや、威力が高いのは、瞑想で能力を上げていたのだから当然だ。だからイリスが驚いているのは、そこではない。フォリキーがどこ吹く風で、悠然と立っていることだ。
「そんな、馬鹿な……」
効果抜群の物理技、それも攻撃力の高いディザソルの技を受けて、ほとんどダメージが通っていないように見える。ノーダメージではないようだが、しかし効果は薄い。
「どうなっているんだ……!?」
イリスが愕然と目を見開いているなか、カトレアは、超然とその場に佇んでいた。
さて、四天王カトレア戦その三です。なんていうか、あれですね。メタグロス強すぎですね。確かに強化後のカトレアの切り札ですが、これってもう、フレイのメタグロスより強いんじゃないですか?それはさておき、カトレアの二番手はフォリキー。読者の皆様にはもうからくりが分かってしまったと思いますが、なぜディザソルの攻撃がフォリキーに通じなかったのか。謎解きは次回、カトレア戦その四です。お楽しみに。