二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 411章 夢現 ( No.551 )
日時: 2012/12/11 23:43
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: 0aJKRWW2)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

 カトレアは倒れたフォリキーをボールに戻す。同時に、技の効果が切れたのか、ワンダールームにより歪んだ空間も、元に戻った。
「では、参ります。愛しき時間を頂戴……ムシャーナ」
 カトレアの三番手は、紫色の胴体、薄桃色の頭を持つ丸まった獏のような姿。夢現ポケモン、ムシャーナ。エスパー単タイプだ。
 ムシャーナは目を閉じ、額からピンク色の煙を放出している。
「ムシャーナ、か。また面倒なのが来たけど、ここは攻めるよ。デスカーン、シャドーボール!」
 フォリキーとのバトルでパワーシェアを行っているため、今のデスカーンは特攻が高い。その状態のまま、黒い球を四発放つ。
 しかし、

「ムシャーナ、トリックルーム」

 突如、ムシャーナの姿が消えた。
「え……?」
 そして気付いた時には、ムシャーナはデスカーンの正面に浮いている。シャドーボールは、掠りもしていない。
「催眠術」
 突然目の前に現れたムシャーナに驚いているデスカーンは、ムシャーナが放つ催眠効果のある念波を受けてしまう。するとデスカーンは、腕を引っ込め、棺桶を閉じ、地面に落ちてしまった。
「な……っ!? デスカーン!」
 これはデスカーンの待機形態だ。催眠術を受けて、デスカーンは眠ってしまった。
「ムシャーナ、夢喰い」
 ムシャーナが眠っているデスカーンに念波を浴びせると、デスカーンの体から黒い煙が放出される。ムシャーナはその煙を、吸い込むようにして食べ始めた。
「夢喰いは、文字通り眠っているポケモンの夢を食べる技。故に眠り状態のポケモンにしか効果はありませんが、威力は中々のものです。ムシャーナ、お次はチャージビーム」
 ひとまず一回分の夢を食べ尽くしたムシャーナは、デスカーンと距離を取り、体内で発電した電気を光線として発射する。
「チャージビーム……攻撃と同時に特攻を上げる技か。厄介だな……」
 威力自体は低いとはいえ、今のデスカーンは眠り状態。攻撃し放題だろう。
「デスカーン、起きろ! シャドーボールだ!」
 イリスが叫ぶと、デスカーンは本当に起きた。そして影の球を四発発射するが、
「かわしなさい」
 ムシャーナは残像すら残さず、超高速でそれらの球を全て回避した。
「なに……っ!」
「催眠術」
 イリスが驚愕するも、ムシャーナはそれに取り合うことなく、瞬時にデスカーンの正面に移動、催眠効果のある念波を照射し、デスカーンを眠らせてしまう。
「夢喰いです」
 そして再びデスカーンの夢を喰らっていく。夢喰いは攻撃と同時に体力を回復する効果もあるが、ムシャーナの体力はもとより満タンだ。
 ムシャーナが夢を食べ尽くすと、デスカーンは棺桶から腕を伸ばし、顔を出す。しかしそれは、目を覚ましたからそうしたのではなく、戦闘不能になったからであった。
「くっ、戻れデスカーン」
 イリスはデスカーンをボールに戻す。そして、次のボールを取ろうとするところで、手が止まった。
「トリックルームか……」
 いきなりだったので焦ってしまったが、イリスはトリックルームの効果を知っている。それは素早さが逆転する技だ。素早いポケモンは遅くなり、逆に遅いポケモンは素早くなる。先のフォリキーが使用したワンダールームの素早さ版、とでもいうべきか。
 そして厄介なことに、ムシャーナの種族としての素早さは、壊滅的なほど遅い。大抵のポケモンなら先手を取れるくらいの鈍足だが、しかしトリックルームが発動している今は別。その鈍さは逆転され、そう簡単に追い抜けないほど高速と化している。
「だったら、こいつしかないな。頼んだ、エルレイド!」
 イリスが繰り出すのはエルレイド。素早さの低いメタゲラスでトリックルームを逆に利用することもできるが、生憎メタゲラスは既に戦闘不能。
 なのでイリスは、トリックルームの穴を突くことにした。
「どのようなポケモンが来ようと、今のムシャーナには追いつけません。ムシャーナ、催眠術」
「アイスブレード」
 エルレイドはムシャーナの動きを先読みし、正面に移動してきたムシャーナが放つ催眠念波を、凍てつく刃で切り裂いた。
「ならば……チャーシビーム」
 しかしそこは四天王カトレア、素早い切り返しで発電した電気を光線として発射するが、
「エルレイド、影討ち!」
 ムシャーナが光線を発射するよりも速く、エルレイドは動いていた。影を伸ばし、影に入り込み、影を伝って、ムシャーナの背後に回り込み、刃の一撃を叩き込む。
「!」
 ここで初めて、カトレアは驚いたような表情を見せる。
「……トリックルームで鈍足のムシャーナを補助し、戦いを有利に進める。その作戦は見事ですが、しかしその作戦には穴がある。トリックルームは確かに素早さを逆転させますが、あくまでそれは素早さを入れ替えただけ。一時的な能力上昇のようなものです。だから、先制技はトリックルームの干渉を受けません」
 つまり、イリスがエルレイドを選んだのは、その穴を突くためだった。イリスの手持ちで先制技が使えるのは、エルレイドとディザソルのみ。しかしディザソルの神速より、エルレイドの影討ちの方が弱点も突けるためダメージが多いだろうと見越して、イリスはエルレイドを選んだ。
「……ムシャーナ、チャーシビームです」
「させません。エルレイド、影討ち!」
 ムシャーナは素早く電気を溜めた光線を発射するが、それよりも速くエルレイドがムシャーナの背後に回り、一撃入れる。
「マグナムパンチだ!」
 そしてエルレイドは、大砲のように拳を振り抜き、ムシャーナを吹っ飛ばす。
「サイコバレット!」
 さらに銃弾のように固めた念動力をガトリングのように連射し、ムシャーナを追撃。
「まだまだ! 影討ち!」
 まだエルレイドの連撃は止まらず、ムシャーナが落下してきたところに影を伸ばし、刃で一閃。
「とどめだ! マグナムパンチ!」
 最後にエルレイドは、全身全霊の力を込めた、大砲のような拳を放つ。
 急所を的確に突くその拳はムシャーナの体にめり込み、丸っこいその体躯を大きく吹っ飛ばした。
「……お戻りなさい、ムシャーナ」
 そして、目を回して戦闘不能になったムシャーナは、早くもボールに戻されるのだった。



さて、今回はカトレア戦その六ですが、ムシャーナ弱すぎません? あれでもランクルスより耐久高いのに、相手がエルレイドと言っても威力の低い影討ち三発と、効果いまひとつの格闘、エスパー技数発喰らって戦闘不能って。……まあ、メタグロスとフォリキーが強すぎたっていうのもあるのかもしれませんから、相対的に弱く見えるのかもしれませんね。では次はカトレア戦その七。このバトル、もしかしたらその十くらいまで続くんじゃ……では、次回もお楽しみに。