二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 413章 自壊 ( No.553 )
日時: 2012/12/15 01:11
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: 0aJKRWW2)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

「出て来い、デンリュウ!」
 イリスが繰り出したのは、弱点こそ突かれないがフォリキー戦で消耗したデンリュウ。心なし、尻尾の球体から放たれる光も弱まっているように見える。
「デンリュウ、ここは是が非でも勝っておきたい、頼んだよ」
 イリスの声に応えるように、デンリュウはバチバチと電気を弾けさせ、球体も強く発光させる。
「パワージェム!」
 デンリュウは額の水晶を強く発光させ、宝石のような無数の光を発射する。
「ランクルス、シャドーボム」
 対するランクルスは、掌に生成した影の爆弾を地面に叩き付け、爆風で襲い来る光を全て消し飛ばしてしまう。
「続いて気合球」
「かわして雷!」
 すぐさま気合球で反撃に出るランクルスだが、デンリュウは跳躍して球体を避け、超高電圧の雷をランクルスに落とす。
 しかし、体を覆うゲルは絶縁体にでもなっているのか、ランクルスへのダメージはさほど大きくない。
「ランクルス、サイコパンチ」
 ランクルスはまたもすぐに反撃に出る。拳に纏った念波を、殴るようにデンリュウへと飛ばす。
「なら、こっちも炎のパンチ!」
 飛来する念波の拳に対し、デンリュウも自身の拳に炎を灯し、その拳を打ち砕く。そしてそのまま、ランクルスへと接近していく。
「炎のパンチ!」
「シャドーボムで払い除けなさい」
 デンリュウの拳が到達する直前、ランクルスの放った影の爆弾が爆発し、デンリュウを吹き飛ばす。もう少しデンリュウの腕が長ければ当たっていたが、阻まれてしまった。
「続けてシャドーボム」
 ランクルスは吹き飛んだデンリュウに向かって二つの影の爆弾を発射。態勢の崩れたデンリュウでは、避けることはできない。
「くぅ……アイアンテール!」
 一か八か、苦肉の策で、デンリュウは鋼鉄のように硬化させた尻尾でシャドーボムを叩き落とそうとするが、一発は弾いたものの、もう一発は暴発し、デンリュウはさらにフィールドを転がることとなった。
「追撃よ、雷」
「っ……こっちも雷!」
 ランクルスとデンリュウ、双方のポケモンが体を発光させて稲妻を呼ぶが、宇宙空間のように果ての見えない遥か頭上で、ゴゴゴゴゴ! と轟音が聞こえただけに終わった。
「気合球」
「パワージェム!」
 ランクルスは気合を凝縮した球体を生成し発射、デンリュウも額から宝石のような光を無数に放ち、気合球を相殺する。
「炎のパンチだ!」
 そして拳に炎を灯し、ランクルスへ突貫するが、
「サイコパンチ」
 ランクルスが撃ち出した念波の拳により、攻撃は中断される。
「強い……!」
 イリスは呻くようにそう呟くしかなかった。
 このランクルスは、高い耐久と特攻を持つが、それ以前に近づけて攻撃させないのが厄介だ。遠距離からの撃ち合いではどう考えてもランクルスに分があり、近づいて来ようものなら多彩な特殊技で動きを止める。たまに接近に成功しても、シャドーボムで吹っ飛ばされる。耐久型ならではの、どっしりと構えて攻撃するスタイルが非常にはまっている。
 やはり四天王のポケモン、なかなかどうして、手強いものばかりだ。
「サイコパンチです」
「炎のパンチ!」
 ランクルスが念波の拳を放ち、それをデンリュウが炎の拳で相殺する。しかし、
「サイコパンチ、二連続」
 続けて放たれる二発のサイコパンチの直撃を喰らい、デンリュウは仰向けに倒れ込んでしまう。
「雷」
 そんなデンリュウに、無慈悲にもランクルスは稲妻を落とし、その身を削っていく。
「くっ、パワージェムだ!」
「シャドーボム」
 起き上がって放った光も、影の爆発で相殺。ランクルスはさらにもう一発放ち、デンリュウを攻撃する。
 シャドーボムは喰らうたびに誘爆する粒子が付着し、ダメージが増す技。何気にこの技が最も厄介だ。デンリュウはまだ二発目しか受けていないが、もう体力が限界に近づいている。
 これ以上デンリュウを戦わせるのは止め、今からでもエルレイドに戻すべきか、と思ったその時、イリスは“それ”に気付いた
「……? 黒い、粉……?」
 小さい上に色が重なって見えにくいが、よく見るとランクルスのゲル状物質の表面に、黒い粉のようなものがいくつも付着している。
(あれは、シャドーボムの誘爆粒子か……?)
 どうやらランクルス自身も、シャドーボムでの防御の際に粒子が付着していたようだ。あれだけ付いていれば、一撃でも大ダメージが期待できるのだが、生憎ながらイリスの手持ちでシャドーボムを覚えているポケモンはいない——

——いない、が、

「……デンリュウ、パワージェムだ!」
 デンリュウは額から宝石のような無数の光を発射。標準は完全にランクルスに向いており、拡散させて放つようなことはしない。故に当たれば大きなダメージが期待できるが、
「無駄です。ランクルス、シャドーボム」
 ランクルスは掌に生成した影の爆弾を地面に押し付け、爆発でパワージェムを全て吹き飛ばしてしまう。
「そろそろ決めましょう、ランクルス。シャドーボム」
 ランクルスは今まで放ったものよりも一回り大きな影の球を生成し、デンリュウへと発射する。どうやら本当にこの一撃で決めるようだ。
「デンリュウ、アイアンテール!」
 対するデンリュウは尻尾を鋼鉄のように硬化させ、構えた。
 下手に尻尾を打ちつけても、爆弾は暴発するだけ。だからデンリュウは、最大限に細心の注意を払い、機械よりも精密な力加減で、影の爆弾を——打ち返した。
 最初は弾いただけだったが、今度は方向づけて、ランクルスへと打ち返すが、ただで反撃を受けてくれるほど、相手も甘くはない。
「ランクルス、シャドーボムで相さ——」
「雷!」
 ランクルスが影の爆弾を生成するより、打ち返したシャドーボムがランクルスに到達するより早く、デンリュウは雷を放ち、稲妻を落とす。攻撃のためではない、ただ、ランクルスの動きが止まればそれでいい。
 そして、影の爆弾が、ランクルスへと到達する。

 刹那、大爆発が起きた。

 いや、流石にその表現は大袈裟だが、しかし、まるで『自爆』でも使ったかのような大きな爆発を引き起こし、ランクルスはその爆発に飲まれていった。
「ランクルス……!」
 爆発の煙が晴れる頃には、ランクルスは目を回して倒れていた。
 カトレアは驚いたように目を見開いている。ほぼ無表情なカトレアの表情を変えられたので、イリスは少し愉快な気分になる。
 しかし愉快になっていてもしょうがないので、今だ困惑気味のカトレアに、さっきの爆発の種明かしをする。
「簡単なことですよ。ランクルスはシャドーボムの爆発、爆風を利用してこっちの遠距離攻撃を防御する。でも、それと同時にシャドーボムの粒子がランクルスに付着してしまいます。だったら話は簡単、何度もシャドーボムで防御しているランクルスに、逆にシャドーボムをぶつければ、粒子が誘爆して威力は膨れ上がり、しかも効果抜群になって大ダメージになる、ってわけですよ」
 説明を終える頃にはカトレアはいつもの半眼のような表情に戻っていたが、どうやら納得したようだ。
「成程、盲点でした。これからは気をつけるとしましょう……戻りなさい、ランクルス」
 カトレアはランクルスをボールに戻す。
 さて、これでカトレアの手持ちも残り一体。もうひと押しだ。
「優雅な時間を頂戴……ゴチルゼル」
 カトレアの最後のポケモンは、天体ポケモンのゴチルゼル。星の位置から未来を読み取ると言われるポケモンだ。
「最後はゴチルゼル、ミキちゃんの言った通りだな。ゴチルゼルは耐久寄りのポケモンだから、一気に決めるよデンリュウ、パワージェム!」
 デンリュウは額から宝石のような無数の光を乱射し、ゴチルゼルを攻撃。
「ゴチルゼル、未来予知」
 対するゴチルゼルは、回避どころか防御もせず、パワージェムを受ける。しかし、ダメージはそこまで多くはない。
「だったら、雷だ!」
 続いてデンリュウは雷鳴と共に稲妻を呼び寄せ、超高電圧の雷をゴチルゼルへと落とす。
「十万ボルト」
 これにはゴチルゼルも反応し、文字通り十万ボルトの電撃を放つが、威力は雷には及ばず、突っ切られてしまう。幸いにも、電撃が盾になってダメージは軽減されたようだが。
「ゴチルゼル、シグナルビーム」
 ゴチルゼルは掌を突き出し、色彩を束ねたようなカラフルな光線を発射する。
「デンリュウ、炎のパンチ!」
 デンリュウは向かい来る光線に合わせて拳を突き出すが、光線の方が威力が高く、突っ切られてしまう。さらに、
「決めましょう、ゴチルゼル。エナジーボール」
 追撃として放たれた緑色の球体がデンリュウを直撃し、吹っ飛ばす。
 元々ダメージが蓄積していたデンリュウは、ここに来て体力が限界を突破し、戦闘不能となる。
「戻れデンリュウ、よくやってくれた」
 イリスはデンリュウをボールに戻し、最後のボールを手に取った。
「……これで最後。頼んだぞ、エルレイド!」
 イリスの最後のポケモンはエルレイド。両肘の刃を構え、ゴチルゼルと相対する。
 泣いても笑ってもおれで最後。イリスと四天王との戦いも、もうすぐ幕を降ろす——



 今回はだいぶ長くなってしまったので、手短に。これでカトレア戦その八は終了、次回のカトレア戦その九で、できれば決着にしたいなと思っています。それでは次回もお楽しみに。